Palmer Luckey氏は、仮想現実(VR)ヘッドセット「Oculus Rift」の開発により、テクノロジー業界で名声を得た。Oculus RiftはVR技術への関心を生み出すことに貢献した製品だ。Luckey氏が創業したAnduril Industriesは米国時間9月10日、それとは異なる種類のテクノロジー製品を発表した。それが軍用ドローン「Ghost 4」だ。
このドローンは全長約2.7mで、持ち運びでき、軍事作戦につきものの砂や泥、海水にも耐えられるよう設計されている。飛行可能時間は100分以上で、自律的に飛行することもリモートで操縦することもできる。カメラや電波妨害システム、標的を照射するレーザーを取り付け可能だ。最大35ポンド(約15kg)の荷物を投下することもできる。
搭載されている人工知能(AI)アルゴリズムは、人やミサイル、戦場にある設備を識別して追跡できるよう調整されている。1台のGhost 4が他の複数のGhost 4と連携してデータ共有網を形成し、情報をAndurilの状況監視システム「Lattice」に送り返すことができる。
Luckey氏は、こうした多機能性は最初から組み込まれたものだとして、Ghost 4を「何でもできるスイス製アーミーナイフ」と呼んでいる。顧客には米国防総省、米国土安全保障省(DHS)、米税関国境警備局(CBP)などが名を連ねており、「Ghost 1」「Ghost 2」「Ghost 3」の設計に改良を加えたことが窺われる。これらのモデルは軍事作戦に使われたが、詳細は一般に公開されていない。こうした取り組みがGhost 4の耐久性や耐候性などの機能強化につながった。
Luckey氏は、現代のハイテク新興企業の破壊的な精神と伝統的な防衛産業を結び付けようとしている。つまり、これまで戦車や戦艦、戦闘機に力を注いできた組織に、AIや自動運転車、ロボット、センサーフュージョンなどの技術をもたらそうとしている、ということだ。
Luckey氏は、米国が軍を近代化しなければ、ロシアや中国など「戦略上の敵国」に後れを取ることになると述べている。
Andurilは、英作家J・R・R・トールキン氏の「指輪物語」(原題「The Lord of the Rings」)3部作に登場するアラゴルンが所有する剣、別名「西方の焔(ほのお)」にちなんで命名された。
Luckey氏はDonald Trump米大統領の著名な支持者だった。だが、同氏が身を置くテクノロジー業界は、移民やトランスジェンダーの権利といったテーマでTrump氏の方針を公然と批判している。Facebookは、2016年の米大統領選挙期間中、反Hillary Clinton氏を掲げる運動でLuckey氏が不正な役割を果たしていた事実が明らかになったことを受けて、同氏を解雇した。Facebookは、同氏の政治的見解は解雇と無関係だとしていた。
Luckey氏とAndurilの顧客には米国の政府機関も含まれており、11月の大統領選の結果次第では優先事項の異なる新政権が登場する可能性もある。しかし、同氏は政権が変わっても意に介さないという。同氏が売り込む相手は国防総省であって、政権ではないからだ。米国境沿いで何が起こっているかの情報に対しては、党派を超えて支持が得られるとLuckey氏はみている。国境こそ、Ghost 4が配備される可能性が高い場所だ。
軍関係の顧客は現在、ノートPCやスマートフォンでLatticeを利用している。さらに長期的には、兵士らも現実世界にLatticeが提供する詳細を重ね合わせる拡張現実(AR)ヘッドセットを装着して、Latticeを利用するようになるとLuckey氏は考えている。
人気の軍事ビデオゲームにちなんで名づけられたARヘッドセット「Call of Dutyゴーグル」という、Oculusに触発されたLuckey氏のアイデアが、いつか実戦で現実のものになるというのが同氏の見解だ。「ファンタジーのように聞こえるだろうが、それこそ私が開発しようとしているものだ」(同氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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