ソニーエレクトロニクスの代表取締役副社長兼COOの高木一郎氏は、ソニーエレクトロニクスの業績見通しや、新型コロナウイルスの事業への影響などについて説明した。
同社では、2020年度通期業績見通しとして、売上高は前年比6.1%減の1兆8700億円、営業利益は31.3%減の600億円を見込んでいる。
「2020年度の通期業績見通しは、7月時点での市場環境をもとに、今後は、世界の主要地域では国家的規模でのロックダウンが起きないという前提とし、市場が回復することを想定したものである」とし、その捉え方を、地域別やカテゴリー別に示してみせた。
地域別では、日本、中国、欧米については、前年度実績から大きく落ち込んだ第1四半期に対して、第2四半期以降は前年並に回復しつつあり、第4四半期は前年から改善をすると想定しているという。
「第4四半期の回復は、前年となる2020年1~3月が、中国のロックダウンで生産が大きく影響を受けており、今年度はそのリスクを見ていないためである。一方で、感染拡大が続いている南米、インド、東南アジアの一部では、依然としてリスクが残り、回復には時間がかかると見ている」とした。
また、カテゴリー別では、「テレビ、ホームオーディオ、ビデオは、巣ごもり需要と、新たなエンターテインメントの楽しみ方の提案により、買い増しや買い替え需要が、日本、欧米でポジティブに表れている。とくに北米ではMLB開幕の影響もあり、前年同期比で数10%増という状況が毎週続いており、なかには50%増という週もある。政府から補助金が出ていたことも販売台数の増加に貢献しているが、それが止まってからも高い成長率を維持している。店頭在庫が枯渇している店舗も出ている状況である。余暇時間をいかに過ごすかといったニーズがあり、75型などの大画面テレビが伸びているほか、大画面テレビにあわせてサウンドバーの需要が顕著である」とする。
だが、「カメラやヘッドフォンは、欧米を含めて、外出機会が増えないため、回復にはまだ時間がかかる」とする。
しかしその一方で、「こうした需要が回復途上の分野でも、性能や機能が際立った商品については、評判が高く、期待以上の予約状況や販売状況である。たとえば、Vlog撮影に特化した「VLOGCAM ZV-1」や、高い撮影性能を持ったα7S III、外出時にも、テレワーク時にも便利なヘッドフォンの「WH-1000XM4」などは好調である」とする。
一方で、生産体制については、「2020年1月から5月まで、中国をはじめとした生産拠点でのロックダウン、部品供給リスクがあり、サプライチェーンの分断が顕著だったが、6月以降は、各地のセット生産工場はほぼ正常稼働となり、8月時点での稼働状況は通常稼働になっている」とする。
ソニーのエレクトロニクス事業では、1月時点で、中国のロックダウンの影響が、どの部品に影響するのかを調査し、代替調達できるものについては、日本やそのほかの国からの調達に変更したという。また、量産工場が多いマレーシア、タイ、欧米などでのロックダウンについては、従来からさまざまな工場で同一商品を作れる体制を敷いていたこと、サプライヤーを2社、3社に増やして、サプライチェーンと生産のフレキシビリティを実現したことが功を奏したという。
「代替調達がきかないキーパーツは、3月以降、戦略在庫という形で確保し、リスクヘッジを進めながら、サプライチェーンを維持してきた。また、現時点で需要が落ち込んでいるカテゴリーにおいても、2021年、2022年に需要は戻ると捉えて準備をしている」とした。
しかし、先に触れたように欧米においては、テレビ需要が旺盛であり、「需要が拡大している商品領域では、部品がひっ迫している。市場在庫をしっかりと掌握しながら、プロアクティブな生産計画、部品調達計画を立てて、サプライチェーンを正常に機能させることが、当面の重要な経営課題になる」とする。
さらに、生産立ち上げ時にも、リモートワークを活用している点についても触れた。
「工場で新機種の量産を開始する際に、日本から多くのエンジニアが、量産工場に出向いて、最終調整を行ってきたが、海外出張ができず、従来のやり方ができないことが、量産開始時の課題となっている。いまは、リモートでやるしかない。これをいかにやるか、いかに早く現状に応じて変化させるか、そして、これを自分たちのノウハウとして蓄積し、新たな付加価値につなげていくことが大切である。ここに、新たなチャレンジがある。変化をどう乗り切るかが最大のチャレンジであり、言い換えれば、これがチャンスになる」とする。
新たな時代における開発、調達、生産、販売に乗り出していることを示してみせた。
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