昨今のテレワークの普及拡大により、オンラインで社員間のコミュニケーションを図るツールが注目を集めている。話題の中心となっているのは、ビデオ会議の代名詞ともなりつつあるZoomをはじめ、映像を介して多人数でやりとりするツールだ。しかし、それ以外にもテキスト主体のチャットツール、チームの共同作業を効率化するコラボレーションツールなど、それぞれに特徴をもった社内コミュニケーションを円滑にするためのツールが存在感を高めてきている。
今やさまざまなオンラインコミュニケーションツールが乱立している状況だ。ユーザーとしては選択肢の幅が広がるというメリットはあるとはいえ、それと同時にどれを選ぶのが自分たちにとってベストなのか迷ってしまうことも確か。コミュニケーションのオンライン化の波は今後も止まることはないと考えられ、どのツールを採用するかは、長い目で見たときに業績や業務効率の面で極めて重要な意味をもつに違いない。
では、自社のニーズやこれからの情勢を見据えたうえで、最適なツール選ぶには何に注意すべきなのだろうか。ビジネスコラボレーションツール「Avaya Spaces」のほか、数々のクラウドサービスの導入支援、代理販売などを手がけるシネックスジャパンの大塚氏に話を伺い、企業のクラウド型ツールの導入傾向と、ツール選びにおける重要なポイントを探った。
シネックスジャパンはICTにまつわるさまざまなビジネス向けサービスを提供している。PCなどのデバイス(エンドポイント)導入や、データ復旧・消去サービス、各種クラウドサービスの導入コンサルティングなどを行っており、最近では米アバイアのビジネスコラボレーションツール「Avaya Spaces」の取り扱いを日本で初めて開始した。
大塚氏によると、国内で2~3月頃から広がり始めたテレワーク化の動きに合わせて、ウェブ会議などに使えるクラウドサービスを利用する企業が急激に増えており、そのサービスと組み合わせて使うウェブカメラ、スピーカーフォンなどのデバイスの売れ行きも伸びているという。これまでレガシーな電話で連絡を済ませてきたような小売店や工場、倉庫などでの導入も加速しているとのことで、これは「店舗や工場が本社と電話で連絡しようとしても、本社の社員がテレワークで出社しておらず、自宅にいる社員とクラウドサービスで連絡を取る必要が出てきた」(大塚氏)ことが要因だとか。
今までクラウド化が遅々として進まなかった分野で一転して導入が拡大しているわけだが、単純にビデオ会議ツールやテキストベースのチャットツールを単体で使っているところもあれば、それら複数の機能を内包したコラボレーションツールを活用しているところもある。たとえば、ビデオ・音声会議用にZoomを導入していたり、ChatworkやLINE WORKSを使ってテキストでメッセージをやりとりしていたりする。もしくはビデオ会議やテキストチャットなど複数の機能が1つのまとまったコラボレーションツールとしてMicrosoft Teamsもよく使われているようだ。
無料で使えるものから、1ユーザーあたり数百円~数千円に設定されているものまで、ツールによって費用面では幅がある。単機能のツールより複数機能をもつコラボレーションツールの方がどうしても費用感は大きくなりがちだが、そのツールでできることとコストのバランスを考えることが重要だろう。
そんな中でAvaya Spacesは、「最大500人でのビデオ・音声チャットに加えて、テキストチャット、ファイル共有、タスク管理などの機能もあり、誰でもウェブブラウザから安定して利用できるツール」であると大塚氏はその特徴を説明する。「会議用というより共同作業用のツールとして幅広い業種で利用できるので、中規模から大規模の企業、具体的には社員100名以上の企業に向いている」とのことだ。
ビデオ会議ツールやテキストチャットツール、ビジネスコラボレーションツールと、それぞれで用途は異なることから「適材適所で利用するのがいい」と語る大塚氏。しかし、クラウド化したツールの熟成が進んでいくに従って、「機能や使い勝手は、どのツールも次第に似たり寄ったりになってくる」と指摘する。
そこで差別化の鍵になると同氏が考えているのが、セキュリティだ。セキュリティは「製品の土台となっている設計思想が色濃く反映される部分」だとし、今後ますます機能面での均一化が進んでいくだろうクラウド型のコミュニケーションツールにおいて、「お客様がどれを選択するかを決める際の重要なポイントになってくる」と話す。その点で「Avaya Spaces」を選ぶメリットは大きいと同氏は訴える。
上陸したばかりということもあって日本ではまだなじみの薄いAvaya Spacesだが、欧州の特にイタリアでは、新型コロナウイルスによる感染が拡大し始めた初期の頃から導入が一気に進んだとのこと。これは、EUが主導する個人情報保護の枠組み、GDPR(EU一般データ保護規則)への準拠が求められる社会情勢のなかで、Avaya Spacesがしっかり対応していたことが大きいと思われる。
EU圏内で個人情報を取り扱うときはもちろん、EU圏内と圏外とで個人情報をやり取りする際にも適用されるGDPRは、欧州でビジネスを展開する日本の企業にとっても当然無関係ではなく、GDPRの制定時には国内でも大きな話題になった。そういうこともあって、GDPRに準拠していることが、国際的なセキュリティ・プライバシー保護基準に適合していると見なされるシンボル的な意味合いをもつことにもつながっている。
Avaya SpacesはこのGDPRのほか、米国のHIPAAにも準拠する。HIPAAは、米国内における個人の健康・医療情報の管理方法などについて定めたものだ。GDPRもHIPAAも、情報漏洩の防止やプライバシー保護の観点から重要な規則であって、これらに準拠したAvaya Spacesは、個人情報や各種データの厳格な運用が求められるビジネスにも耐えうる高い安全性を確保していることを意味するだろう。
そもそも、Avaya Spacesの開発元であるアバイアは、米国最大手の通信会社であるAT&Tの関連会社からスピンアウトした企業であり、元をたどれば老舗電話会社の血脈をもつ。IP電話の技術を用いた通信システムのほか、ビジネス用電話機や会議用のスピーカーフォン、ウェブカメラ、ヘッドセットといったデバイスも開発する実績豊富なテクノロジー企業であり、他にクラウド型のサービスもいくつか提供している。Avaya Spacesはそうしたバックグラウンドから生まれたツールであり、ビジネスにおけるコミュニケーション、コラボレーションを最適化するノウハウが詰まっていると考えられる。
Avaya Spacesは豊富な機能をもっているが、実際に使ってみると、できることが多いわりにシンプルな画面構成で、ビデオ会議も、チャットも、ファイル交換も、最初から迷うことなく利用できることがわかる。「アバイアは以前からさまざまなコラボレーションツールを開発している。電話から派生した技術を活かしたツールも多い。それらがAvaya Spacesに集約されたわけで、インターフェースや使い勝手についても考え尽くされている」と大塚氏は話す。技術的には実質100年以上の蓄積があるアバイアだけに、ベンチャー企業の「新興ツール」にはない勘所を押さえているようだ。
ほかにもAvaya Spacesには、専用のカメラデバイスなどと連携することで、ビデオ会議を簡単に、素早く始められる仕組みもある。社内外のコラボレーションをアバイアのシステムで統一することによるメリットは大きいに違いない。高いセキュリティによる信頼性だけでなく、大規模環境にも向く仕様になっていることも考えると、特に社員数が多く秘匿性の高い情報が飛び交う大企業にはもってこいのツールと言えるだろう。
ただし、企業によってはデータ漏洩の防止などの観点から社外のインターネットやクラウドサービスへのアクセスを制限している場合もある。中小、大企業にかかわらずクラウド化の流れは今や当たり前になっているものの、どんな企業でもすぐに効率良くクラウドサービスを活用できるわけではない。
Avaya Spacesもインターネット上のクラウドサービスである以上、セキュリティに敏感な企業ではそのままでは利用できないことがある。そこでシネックスジャパンでは、そうした企業でもAvaya Spacesを含め同社が取り扱うクラウドサービスを適切に利用できるようにするネットワーク関連のソリューションも併せて提供している。
大企業の多数のユーザーが一斉にAvaya Spacesなどのクラウドサービスにアクセスすることによる回線混雑の問題も、SD-WANやインターネットブレイクアウトといった技術で解決を図り、セキュリティを確保しつつ、設備コストや負荷を抑えながらスムーズに利用できるようにする方法も提案している。「企業が現在利用しているプラットフォームに合わせた最適な製品、エンドポイントのデバイスも提供できる」とも大塚氏はアピールする。
テレワーク時代のニーズを満たす、さまざまなオンラインコミュニケーションツールが次々と登場している。機能の豊富さや割安な料金などを売りにする製品も少なくないが、「Avaya Spacesが強みをもつセキュリティは、他のツールがまだあまりケアできていない部分」だと大塚氏。「社内の重要なこともオンラインで話すようになり、その内容が外部に漏れる危険性は高まっている」とし、セキュリティの重要性を改めて強調する。自社のビジネスで本格利用するのに適したツールは何なのか、これからはセキュリティという観点からもしっかり見定めて導入するべきではないだろうか。
(取材協力:シネックスジャパン)
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