愛知県 豊田市を拠点に「空飛ぶクルマ」を開発するSkyDrive(スカイドライブ)は8月28日、シリーズBラウンドにおいて、39億円の資金調達を実施したことを発表。また、同日に公開の有人飛行試験を8月25日に成功したことを報告し、有人試験機「SD-03モデル」をお披露目した。
SkyDriveは、次世代エアモビリティ「空飛ぶクルマ」や、重量の大きな物資を搬送できる物流用の「カーゴドローン」を開発するスタートアップだ。トヨタをはじめ、自動車・航空業界などの複数企業の若手エンジニアら約100名が、プロボノで参画する有志団体「CARTIVATOR」(カーティベーター)のメンバーを中心に、2018年に設立された。
CARTIVATORとSkyDriveは、陸上を走行できて空も飛べるクルマを共同開発してきた。「東京五輪が開催される2020年夏の有人デモフライト」を目標に掲げて注目を集めてきたが、今回はついにこの目標を達成したことが明らかになった。2020年秋からは、機体開発はSkyDriveで行うという。
今回、第三者割当増資の引受先となったのは、日本政策投資銀行、伊藤忠商事、ENEOSイノベーションパートナーズ、大林組、日本電気(NEC)、ベリサーブ、三井住友ファイナンス&リース、シリーズAに続く追加出資で伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、環境エネルギー投資、STRIVEの10社。
SkyDriveがこれまでに調達した資金は、累計で59億円に達する。発表会には、世界でも稀なドローン・エアモビリティ特化型ベンチャーキャピタルDRONE FUNDや、ヤフーが設立しモビリティとブロックチェーンに投資するZ CORPORATIONらも応援に駆けつけた。
今回の発表で注目すべきポイントは、事業会社からの出資が今後のパートナーシップにつながるという点だ。日本では、2023年に空飛ぶクルマの事業を開始することが、内閣府の成長戦略に盛り込まれている。今後は、このロードマップに沿って、SkyDriveの空飛ぶクルマを社会実装するために必要な周辺要素の推進が加速する見込みだ。
ENEOSは空飛ぶクルマやドローンの離発着拠点「空のステーション」構築、NECはエアモビリティの管制の構築に意欲を見せた。SkyDrive代表取締役の福澤知浩氏は、「エアモビリティによって、生活、人生の可能性を広げていきたいと考えている。2023年のサービスインに向かって開発を加速したい」と挨拶し、有人飛行試験に成功したSD-03をお披露目した。
今回、有人飛行試験に成功した機体は1人乗りで、電動で垂直離発着が可能なeVTOLだ。パイロットが操縦するが、コンピュータ制御アシストで飛行を安定させたという。大きな特徴は、コンパクトなサイズである。SkyDriveでは、空飛ぶクルマを日常的な移動手段として普及させるために、駐車場2台分に収まる「世界最小モデル」の開発に挑んでいるという。
技術的な特徴は、二重反転ローターだ。機体の四隅にモーター・プロペラをそれぞれ2つずつ配置しプロペラを二重反転させて、万が一、飛行中に異常が発生しても即時墜落しないよう、安全性を考慮した。現段階では、「もともと地上を走るクルマが空を飛ぶ」ということに重点を置いて開発中とのことで、自動車に求められるタイヤやエアバックなどは装備されていない。
また、SkyDriveでは空飛ぶクルマに先行する形で、物流用「カーゴドローン」の販売を開始している。これは、30kg以上の重量が大きい物資の搬送に特化した産業用ドローンで、主に山間部の建築現場や山中にある設備のメンテナンスにおける資材運搬や、農作物の運搬を目的とする。
SkyDriveはこれまで、大林組と20kgの一斗缶や25kgのセメントを運搬する実証実験を行なってきた。また8月には、神戸市六甲山でのドローン配送実証実験に機体を提供するなど、物流ドローンにも積極的に取り組んでいる。
今後の空飛ぶクルマのマイルストーンとしては、2023年に大阪湾の舞州〜大阪駅近くの淀川河川敷間において、サービス開始を予定している。飛行距離は5〜10km程度で、飛行時間は約5分だが、現在の交通手段では約30分かかってしまう不便なエリアだ。
最初は、タクシーのような形でサービスを提供して、安全性の認知拡大や社会的需要性の向上を図りながら、大阪万博を見据えて湾岸エリアでのサービス拡大を目指す。関西空港や神戸空港と観光地を結ぶことで、海外からの来訪客にも認知拡大を図り、将来的には海外にも展開したい構えだ。
発表会では出資企業から「世界に大きなインパクトを与えるスタートアップを日本から輩出したい」というコメントが相次いだ。なお、国内では、たとえば三重県伊勢志摩など、安全性の観点から飛行許可を得やすい海上ルートで、既存の陸上交通と比べて空を飛べばはるかに交通時間を短縮できるエリアも、ターゲットになりそうである。空飛ぶクルマで、日本が再び世界をリードする未来に、いま期待が高まっている。
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