新型コロナウイルス関連

神戸市の「500 KOBE ACCELERATOR」が参加17チームを選出--海外応募が過去最多

 神戸市は8月27日、シリコンバレーのシード投資ファンドである500 Startupsと共同で実施するアクセラレーションプログラム「500 KOBE ACCELERATOR」(以下、500 KOBE)の第5期として、17のスタートアップの参加が決まったと発表した。

市長定例会見の中で500 KOBEの取り組みについて説明する神戸市長の久元喜造氏
市長定例会見の中で500 KOBEの取り組みについて説明する神戸市長の久元喜造氏

 応募総数は2018年と同じく最多の237チーム、海外からの応募は過去最多の162チームにのぼる。9月7日から10月30日まで開催されるプログラムはすべてオンラインで実施し、11月12日にデモデイの開催を予定している。

 今回は「COVID-19 Emerging Technology」をテーマに「新型コロナウイルス感染拡大で浮かび上がる社会課題を解決するためのテクノロジー」を用いた、神戸発で世界の未来のためのイノベーション創出を目指すスタートアップを募集した。

 これまでのデジタル全般やデジタルヘルスよりもテーマが絞り込まれることや、全プログラムがオンラインで実施されるため、どれだけ応募が集められるかという懸念があったが、最多だった2018年と同じ237チームから応募があり、国内75チーム、海外からは162チームで過去最多となった。

応募総数は最多だった2018年と並ぶ237チームとなった
応募総数は最多だった2018年と並ぶ237チームとなった

 そこから500 Startupsが書類審査と面談を行い、神戸市との協議を経て、国内6チーム、海外11チームの計17チームが選出された。ヘルステック関連が8社と半分を占め、それ以外はリモートワーク、オンライン教育、ツーリズムテックなど幅広い分野から選ばれた。米国、インド、シンガポール、台湾など、日本も含めると参加地域は9カ国になるが、結果的に環太平洋エリアに集中したことから、大きな時差の影響もなく運営できるのではないかとしている。

 ヘルステック関連では、投薬する処方せんの誤りを特定する機械学習システムを開発するAESOP Technology(台湾)、AIによるデータ解析やロボットアームを活用した手術ナビゲーションシステムを開発するBrain Navi Biotechnology(台湾)、オンライン診療のプラットフォームを提供するHealth Sensei(インド)など、日本でも実用化が進むオンライン診療関連を手掛ける会社が目立つ。

応募分野は半数近くをヘルステック関連が占めるが全体的に多岐に渡る
応募分野は半数近くをヘルステック関連が占めるが全体的に多岐に渡る

 日本からはオンライン教育管理プラットフォームを提供するPocket Passport、カスタムキャンピングカーのオンラインリソースサービスなどを展開するDreamdrive 、飲食店向けの簡易デジタルメニュープラットフォームを開発するZenuらが参加する。いずれもグローバル市場向けにビジネス展開している。

 プログラムはメンタリング、講義、コミュニティ形成支援の3つで構成され、前回に引き続き、神戸市の医療産業都市によるサポートにも力を入れる。スペシャルメンターにiPS細胞を使用する再生医療研究で知られ、スタートアップ「ビジョンケア」の代表取締役社長を務める高橋政代氏を迎えたり、神戸市の魅力をアピールするイベント「KOBE WEEK」と連携するなど、参加者と神戸市のつながりをつなくことにも力を入れる。

スペシャルメンターとしてビジョンケア代表取締役社長を務める高橋政代氏が参加
スペシャルメンターとしてビジョンケア代表取締役社長を務める高橋政代氏が参加

 発表をした神戸市長の久元喜造氏は「社会的に重要な対応を進めるスタートアップが選ばれている。神戸市ではロボットによるPCR検査や遠隔ICUに取り組み、スーパーコンピュータの富岳をCOVID-19関連の研究分析にも活用している実績があり、医療産業都市から世界に向けてビジネスのきっかけを掴んでもらいたい」と述べた。

 500 Startupsのマネージングパートナーを務めるベジ・ヤン氏はビデオでコメント。「多岐に渡る分野から数多く応募があったことから今回のテーマが世界的にも注目され、重要な取り組みであると感じている。世界的な課題解決に挑むソリューションを構築する最前線にいるスタートアップとして成長することを期待し、プログラムに参加することを歓迎する」と述べた。

500 Startupsのマネージングパートナーのベジ・ヤン氏はビデオでコメントを寄せた
500 Startupsのマネージングパートナーのベジ・ヤン氏はビデオでコメントを寄せた

 500 KOBEを担当する神戸市プログラムマネージャーの笠置淳信氏に、今回選ばれたスタートアップについて改めて聞いたところ「全体として、コロナによってDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しようというところと、DXを進めたことで生じた弊害を解決しようという、大きく2つのタイプが集まったのではないかと感じている。いずれも重要なソリューションであり、今までに体験したことがない状況の中で、実用化と成功に向けて神戸市としてできる限り支援したい」と話す。

 運営に関しては状況を判断しながらさまざまな工夫を取り入れるとしている。同プログラムは参加者同士のコミュニケーションを重視しており、時差がある中でも円滑な交流の機会を設けるとしている。たとえば、バーチャルSNSの「cluster(クラスター)」や、同じくバーチャル空間でアバターを使ってコミュニケーションする「VirBELA(ヴァーベラ)」を活用し、メンターや参加者同士のコミュニケーションを支援するといった実験的な取り組みも行う予定だという。

 世界各地でアクセラレーションプログラムを展開している500 Startupsにとっても今回は新しい試みになることは間違いない。どのような結果につながるのか、11月のデモデイが楽しみだ。

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