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上場を節目にするのは「僕ららしくない」--Sun Asterisk小林氏が語ったコロナ禍の舵取り - (page 2)

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2020年09月07日 08時00分
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 日本マイクロソフトさんは、顧客の中心はエンタープライズ企業ですが、Microsoft for Startupsといった取り組みもされていて、スタートアップを支援していくことにも積極的なんですね。日本マイクロソフトさんはスタートアップとのタッチポイントを増やして支援していきたいし、僕らはそれに対して開発などの面からサポートしたいという思いがあり、一緒にやれたらもっと包括的にスタートアップを支援できるのでは、というところから始まったものになります。

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 日本マイクロソフトさんはエンタープライズ企業の内情もよく知ってらっしゃるので、そこのナレッジと僕らのフットワーク軽く新規サービスを生み出せるところを融合できれば、エンタープライズ企業としては安心感があるし、かつ柔軟性のある開発が任せられると思ってもらえるとも考えました。

 大企業が新規事業を立ち上げるにしても、従来のやり方だとスピードでスタートアップには勝てないし、GAFAにも絶対に勝てません。大企業であってもスタートアップ的なアプローチで、いかに早く、スモールにユーザーとの接点を作って、そこからユーザーとの対話を続けながら開発して事業を大きくしていくか。これからはそういう勝負の仕方が求められるからこそ、僕らに相談いただけているのだと思います。

——このほかにも、2019年12月には農林中央金庫、2020年3月にはソニーネットワークコミュニケーションズなどから、それぞれ資金調達を実施しました。上場を間近に控えたタイミングでしたが、この狙いは?

 もちろん人件費などの用途があるから資金調達を実施したんですが、それ以外にも大きな目的がありました。正直なところIPOの前後っていろいろなことがアグレッシブにやりにくくなる時期ではあるんです。IPOするための工数もかなりかかります。それは最初から分かっていて、でもそこで事業を加速できないのは厳しいから、仕込みは事前にしておきたい。なので、あのラウンドで出資していただいた方たちはすべて事業シナジーがあるところ、かつIPO後の成長を支援していただける企業様、と絞った形で組ませていただきました。

 なかでも農林中央金庫さんは中期経営計画でベンチャーに出資していくことを明らかにしていて、僕らはその第1号です。彼らはスタートアップやベンチャーを資金面で支援したいし、僕らはそもそもスタートアップを開発面で支援しているので、2者が組み合わさればファイナンス、テクノロジー、デザイン、ビジネスの面で強みを持てるだろうと。ソニーネットワークコミュニケーションズさんは、所有されているたくさんの要素技術を活用してビジネスを作っていきたいので、僕らがその支援をしていく。そういう組み方になります。

——小林さんは2019年に「3年以内にエンジニアを5000人に」というお話をされていました。現在の状況はいかがですか。

 今はそれほどエンジニアの数は増やしていません。その分、教育プログラムの提供に力を入れています。1年前に提携していた大学はベトナムにある3校でしたが、今はインドネシア、マレーシアも増えて計6校です。受講している学生の数も合わせて1500人ほどになっています。いずれは世界中の大学と提携したいですね。

 エンジニアを5000人にするかしないかは事業の伸び次第のところもありますが、それに合わせていつでも5000人にできる仕込みは順調に進められています。調達した資金の用途は人件費が多いという話をしましたが、人件費は採用コストや人材を抱えるコストだけではありません。僕らは育成型の採用をすることもあって、教育の仕組みに投資することもいわば人件費みたいなものです。教育は僕らが必要とする人材を生み出していくためのエンジンでもあり、そこを強化するのは一番大事なんですよね。

変化を恐れるのではなく、自ら変化を起こしにいく

——コロナ禍はまだまだ続きそうですが、今後の舵取りについても聞かせてください。

 僕らが主力としているCreative & Engineering事業は対前年比で26%伸びています。市場もニーズも大きいので、この水準はしっかり保っていきます。一方でタレントプラットフォームについては、ボラティリティ(価値変動)が大きく、そもそも事業そのもので収益を上げていくというより、僕らにとっては人を育てていくことに本質的な価値があるので、それを考慮して少なくとも20%という成長企業らしい成長率を数年は描いていきたいですね。利益率は15%から20%へ緩やかに高めていければ。

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 教育は、どのチャンスをどのタイミングでつかめるか予想するのが難しいので、タイミングを逸することのないようにしたいですね。規模はもう圧倒的に大きくしたいので、機会を逃さないようにガンガン投資して、チャンスを狙いたいと思っています。

——海外展開についてはいかがでしょうか。

 大学との提携は、最初はベトナムのハノイ工科大学から始まりましたが、もともとこのプロジェクトはJICA(独立行政法人国際協力機構)がODAで進めていたものです。JICAとしてはODAで切り拓いた後、民間の企業や団体に受け継がせていきたい。そういうサステナブルなプロジェクトなんです。

 僕らが今やっている教育プロジェクトは、JICAのときは日本への国費留学という内容でした。僕らが引き継いだときに日本への就職という形に変えましたが、規模が拡大して長く続いているということで、JICAからは非常に高い評価をいただいています。そうした話は世界中に自然と広まっていくもので、英国のビジネス専門誌であるThe Economistにも取り上げられましたし、あちこちの大学からアプローチしてくる状況です。

 なので、ここはうまく関係性を保ちながら、本当にできるタイミングになったら入っていく。国・地域によらず、世界中をフラットに見て成功事例を増やすべく、次のイーロン・マスクや次のビル・ゲイツが隠れているかもしれないところを耕しに行きたいですね。

——とはいえ、世界的にはコロナ禍で先行きが見通しにくい状況ではあります。

 人類がこれまでなぜ生き残ってきたかと言えば、変化に適応してきたからだと思っています。新型コロナウイルスは大変な危機で、このせいで苦しんでいる方もたくさんいらっしゃると思いますが、一方で、そういう変化に適応して困難を乗り越えることで繁栄してきたわけです。すでに今の状況にも、できる人は適応し始めているし、新しいアクションを起こし始めていたりする。

 何かしよう、何かを変えなきゃ、ということに気付くのが大事ですし、変化を恐れるのではなく自ら変化を起こしにいくことが重要です。必要なら周りに助けを求めればいい。ビジネスを金儲けの手段ではなく、サステナビリティ、持続化の手段として使っている人たちもたくさんいるので、そういう人たちに相談して、今の変化の激しい状況に適応できるように動くしかありません。

 ビジネスのあり方が本当に変わってしまって、誰かが作ったマーケットでお金を奪い合うみたいなところから、人類全員がサステナブルに生きていくための手段へと変わってきているようにも思います。僕らがそこでできることは、テクノロジーを活用していろいろな方たちと社会の仕組みをアップデートしていくことだと信じています。

 テクノロジーを使うということは、いろいろな線引きをなくすことでもあります。都心と地方の差はこれからどんどん少なくなっていくでしょうし、国の違いも関係なくなっていく。テクノロジーを世界中にもっと浸透させて、そういう境目のない世界を実現できたら面白いなと思っています。

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