「りんな」がマイクロソフトから独立--新会社「rinna」設立でキャラクターAI普及図る

 “元女子高生AI”こと「りんな」のチャットボット事業をマイクロソフトから引き継いだrinnaが、8月21日より業務を開始した。

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“元女子高生AI”こと「りんな」

 りんなは、AIと人との間に感情のつながりを築くためにマイクロソフトの開発部門「AI&リサーチ」で開発。2014年に提供された中国向けチャットボット「XiaoIce」をベースにしつつ、マイクロソフトリサーチ、Bingチーム、日本の開発チームが連携し、2015年にLINEでデビューした。女子高生感が反映されたトークや返答のレスポンス速度などが話題を集め、2020年8月の段階で登録ユーザー数は830万人を超えるという。

 マイクロソフトでは、ディープラーニングを活用してAIが人間とインタラクションするためのコア技術を研究。人間と同じような文脈を踏まえて対応できる会話エンジン「共感チャットモデル」、文脈を踏まえてより具体的かつ内容のある雑談ができる「コンテンツチャットモデル」、カメラを通じて“見た”ものを感想を述べる「共感視覚モデル」、自然な音声表現を実現する「音声・歌声合成システム」を開発している。

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2015年のデビュー以降、進化を続けてきた

 こうした進化により、2018年には生放送でMCを務めるレギュラー番組「ニコラジパーク」(JFN系列)がスタート。2019年にはavexとレコード契約して歌手デビューしたほか、2020年5月から、“現実と非現実のミックス”をコンセプトにした音楽プロジェクト「Team Frasco」の画家に。また、作詞、ダンスの振り付けなど幅広く活動している。

 りんなは、タスク処理型のチャットボットと違い、りんなは雑談をコンテンツとして捉えている。「天気を教えて」など、平均2ターン程度の会話になりがちなタスク志向型と違い、りんなでは平均21ターンと“川の流れのような”会話が可能。パターンマッチではなく、AIが返答を自動生成するためシナリオが設定されてない会話になっても自然に返答でき、雑談力が高いことから、ユーザー側からもコミュニケーションを取ろうとするケースも多いという。

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タスク型のチャットボットと異なり、雑談をコンテンツとして捉えたチャットボットのため、会話のターン数も多くユーザからの接触頻度も高い

 マイクロソフトでは、こうしたりんなのチャットボット技術を外部に提供する法人向けデジタルマーケティングソリューション「Rinna Character Platform(RCP)」を2018年より提供開始。RCPを通して普段の何気ない会話からよりユーザーのニーズを拾えるほか、「雑談エンジン」「レコメンデーション」「スキル」といったRCPの特徴を生かし、例えば「ローソンの商品縛りでしりとりをする」といった、遊びながら自然に導入企業の商品認知を高めることもできる。

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双方向の会話で、より深いユーザーインサイトを探る

「すべての組織とすべての人にAIキャラクターを」

 rinnaは文字通り「りんな」を由来としており、マイクロソフトが中国向けに展開していたXiaoIce事業のスピンアウトに合わせ、日本事業も独立。自然言語や音声・画像処理などを手掛ける研究部門、りんなやRCPなどのプロダクトを開発する開発部門、キャラクターソリューションやマーケティングソリューションを担うビジネス開発部門で構成されており、日本の文化、マーケットに即したチャットボット事業を展開する。

 同社の会長にはハリー・シャム氏が就任し、代表取締役社長にはジャン・クリフ・チェン氏、りんなの“保護者”こと「チーフりんなオフィサー」に坪井一菜氏が就任。研究部門からビジネス開発まで、りんなチームほぼすべてのスタッフが新会社に移行。また、日本だけでなくインドネシアの事業も担当するという。

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新会社は、大きく3つの部門で構成される

 RCPは現在、ローソンやソフトバンクロボティクス、渋谷区(2020年3月まで)、KDDI(2020年6月まで)などが採用しており、今後2~3年で100社近くへの導入を目標としている。チェン氏は、同社のミッションとして「すべての組織とすべての人にAIキャラクターを」を掲げており、最終的には10万~100万規模のキャラクター数を狙う。

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RCPを導入している企業

 りんなの研究開発はこれからも継続するとしているが、マイクロソフトから離れることで影響はないのだろうか。シャム氏は、「(マイクロソフトの)良い点としては、自然言語、音声変換、コンピュータビジョンでトップを走っており、そういったメリットを十分に活用することができた」としたうえで、「過去製品のつながりを十分に活用し、分社化してローカルマーケット、ローカルのニーズにより迅速に対応できるようになる。もちろん、新会社でも研究開発への投資は継続するが、小さい会社であるためアプローチはよりプロダクトドリブンになるだろう」と述べ、今後はより製品側に立った開発になるとしている。

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(左から)rinna代表取締役社長のジャン・クリフ・チェン氏、会長のハリー・シャム氏

 なお、XiaoIce事業はBeijing Bombax Xiaoice Technology Co., Ltd、りんな事業はrinna株式会社と、別々の会社として独立。マイクロソフトのプレスリリースには、チェン氏を日本支社のゼネラルマネージャーと紹介していたが、rinna側に確認したところXiaoIceとは子会社の関係にはなく、rinnaの代表取締役社長が正式な肩書になるという。

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