マスクは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの飛沫感染する病気の防止に効果的だが、顔認識アルゴリズムによる人物の特定を困難にしているとの研究結果が明らかになった。
米国立標準技術研究所(NIST)が米国時間7月27日に発表した報告書によると、マスクは非常に高度な顔認識アルゴリズムの人物特定さえも阻止する。アルゴリズムの性能によってエラー率は5~50%に上るという。
COVID-19の世界的流行を受けてマスクを着用する人が増えるなか、目と鼻のみで人物を特定できるアルゴリズムの開発を急ピッチで進めている顔認識技術の業界にとっては由々しき結果だ。
マスクはCOVID-19の感染拡大を抑制するのに不可欠で、米国でも多くの州政府がマスクの着用を義務付けている。しかし、マスクは顔認識ソフトウェアに問題を引き起こしており、テクノロジー企業は対応を迫られている。例えばAppleは、ユーザーがマスクを着用していても「Face ID」搭載端末でロック解除が手早くできるようにアップデートを提供した。
顔認識アルゴリズムは、人物の画像から可能な限り多くのデータポイントを取り込む必要があるが、マスクは人物の特定に重要な情報の多くを見えなくしてしまう。ただでさえアルゴリズムは光の加減や角度が悪いだけで認識がうまくいかない側面があり、マスクはその成功率をさらに下げることを研究は明らかにしている。
マスクをした人物画像では、最も確度の高いアルゴリズムでもエラー率が0.3%から5%に跳ね上がったという。今回の研究では、マスクをした画像を使って89の顔認識アルゴリズムの効果をテストした。
このテストは、アルゴリズムの「1対1」での照合能力を調べるために、ある人物の画像をその人物がマスクをした別の画像と比較する形で行われた。NISTは調査のために600万枚の画像を使用し、さまざまなバリエーションのマスクをデジタル処理で画像に追加したという。
この調査では、マスクで鼻を多く隠すほどアルゴリズムの識別率が低下することも判明した。また、黒いマスクのほうが、水色のマスクよりもアルゴリズムのエラーを引き起こしやすいとの結果が出ている。
NISTによると、今回を皮切りに顔認識とマスクに関する一連のテストを実施する計画で、今夏中には、マスクをした顔を考慮して開発されたアルゴリズムをテストするという。
「パンデミックが到来した今、マスクを着用した顔を顔認識技術がどのように処理するのかを理解する必要がある」と、NISTの研究者で今回の報告書を執筆したMei Ngan氏は述べ、「そこでまず、パンデミック前に開発されたアルゴリズムが、マスクで顔を覆った被験者によってどのような影響を受ける可能性があるのかを調査することから始めた」と続けた。
Ngan氏によると、NISTでは、顔にマスクをつけた人を識別するアルゴリズムの能力は今後向上すると予測している。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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