Amazonは米国時間7月10日朝、人気の高いソーシャルメディアアプリ「TikTok」をスマートフォンから削除するよう指示するメールを従業員に送付した。同社の広報担当者は数時間後、メールは誤って送信されたと述べたが、それ以上詳しく説明しなかった。
AmazonのITサービス部門が従業員に送付した電子メールには、TikTokに「セキュリティ上のリスク」があると記されていたが、具体的な説明はなかった。従業員は10日、仕事用メールへのモバイルアクセスを維持できるよう、アプリを削除することを指示された。米CNETが確認した「Action required: Mandatory removal of TikTok by 10-Jul」(要対応:7月10日までにTikTokを必ず削除すること)という件名の電子メールによると、ノートPCでブラウザーからTikTokにアクセスすることはこれまでどおり許されるとされていた。
Amazonの広報担当者は10日午後までに、すべてミスだったとする短い声明を出した。「一部の従業員に対する今朝のメールは誤って送信された。TikTokに関する当社のポリシーに現時点で変更はない」
10日午後には、AmazonのITサービス担当ディレクターKellie Green氏より、「Disregard TikTok email」(TikTokに関するメールの破棄)という件名のメールが従業員に送付された。メールには、広報担当者の声明とまったく同じ文言が書かれていた。
AmazonがTikTokを禁止しようとしたかどうかは定かではないが、全く予想できなかったことではない。中国のハイテク企業ByteDanceが運営するTikTokには、中国政府がこのアプリを諜報活動に利用しているのではないかという懸念をめぐり、厳しい監視の目が向けられている。インドは6月末、国家安全保障上の問題を理由にTikTokなど複数の中国製アプリを禁止した。米国とオーストラリアもTikTokの禁止を検討している。中国当局は、諜報活動に関する懸念に反論している。
TikTokはこの件を受け、Amazonがメールの内容を撤回する前に声明を出した。TikTokの広報担当者は10日朝、「ユーザーのセキュリティはTikTokにとって最重要項目だ。われわれはユーザーのプライバシーを尊重することに全力を注いでいる」とし、「メールが送信される前にAmazonから当社への連絡はなく、われわれはAmazonの懸念をいまだ理解していないが、Amazonが問題を抱えているのであれば解決できるよう、またAmazonのチームがわれわれのコミュニティーに参加し続けられるよう、対話を歓迎したい。このパンデミックの最前線で働くAmazonの多くの従業員や契約業者を含め、数多くの米国人が、エンターテインメント、インスピレーション、つながりを求めてTikTokを利用していることを誇りに思う」と説明した。
TikTokをめぐっては、これまでにもセキュリティ上の懸念が取り沙汰されている。
12月には米海軍が、サイバーセキュリティ上の懸念を理由に、政府支給のモバイルデバイスでTikTokを使用することを禁止した。また3月には、米上院議員が政府職員のデバイスすべてでTikTokを禁止する法案を提出した。Bytedanceが中国企業であるとし、諜報活動に関する懸念があると指摘されていた。
法案の共同提出者の1人であるJosh Hawley上院議員(ミズーリ州選出、共和党)は3月の声明で、TikTokは「バックグラウンドでアプリを実行している間に、送信メッセージ、共有画像、キーストローク、位置情報などのユーザーデータを収集していることを認めた」と述べた。
セキュリティ専門家らは、「Facebook」や「Googleマップ」「Instagram」を含め多くのアプリがこのようなことを行っているが、中国企業のアプリでないために同じような監視の目が向けられていないと指摘した。
フランスのセキュリティ研究者Baptiste Robert氏は、TikTokアプリを分析し、TikTokがどれほどのデータを端末から取得しているかという点について、プライバシー上の問題はあるが、アプリのエコシステムで異常なものではないと考えられると述べた。
Robert氏は、「これほどのユーザーベースを擁するこの種のアプリとして、異例ではないと思う」とし、「プライバシーの観点から良くないことは確かだ。しかし、セキュリティの観点から、他のアプリよりも悪いわけではない」と述べた。
モバイルセキュリティ企業Guardianの最高経営責任者(CEO)Will Strafach氏は、チームで5月からTikTokを徹底的に調査していると述べた。同社はまだこのアプリを分析中だが、これまでにTikTokから「すぐに警戒するべき活動」は検出されていないという。
Strafach氏は、「このプロセスは現在進行中だが、彼らは多くのほかのアプリのようにアナリティクスデータを収集しているが、彼らがそれ以上の何か、あるいは特筆すべき何かを吸い上げていることを示す兆候はみられないと現時点でわれわれは評価している」と述べた。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
住環境に求められる「安心、安全、快適」
を可視化するための“ものさし”とは?