ドイツは今週、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策の政府による接触通知アプリを公開した。同国は外出制限を徐々に緩和しているところだ。ドイツ語で「コロナ警告」アプリと名付けられており、公開後わずか1日で既に650万件ダウンロードされた。欧州圏の他国より順調だ。
ドイツのJens Spahn保健相はこのダウンロード件数について、アプリの「力強いスタート」を示しているとツイートし、国民に対し、ウイルス抑制の「チームゲーム」に参加するよう呼び掛けた。
Spahn氏はコロナ警告アプリを発表する記者会見で「このアプリは万能薬ではないが、ウイルス抑制のための重要なツールだ。ウイルスを抑制する最善の道は、多数の人々が参加することだ」と語った。
650万人というユーザー数は、このアプリが24時間でドイツの総人口の約7.8%を獲得したことを意味する。一方、フランスが6月初頭にリリースした「StopCovid」アプリは、これまでに総人口の2%しかダウンロードされていない。イタリアが2週間前にリリースしたアプリ「Immuni」は3.5%を超えたばかりだ。
ドイツのコロナ警告アプリは、国営通信キャリアのDeutsche Telekomとソフトウェア企業SAPの開発者とエンジニアのチームが6週間で開発した。SAPの最高経営責任者(CEO)Christian Klein氏はこの提携の成果を賞賛した。
同氏は「素晴らしいチームによる50日間の類を見ない協力により、コロナ警告アプリは今、公開された。共に協力し、ドイツでの新型コロナウイルス感染症のこれ以上の拡大を阻止しよう」とツイートした。
コロナ警告アプリは、AppleとGoogleが共同開発したBluetoothベースの濃厚接触通知APIを基に構築された。このAPIは処理される個人データの量を制限することで、ユーザーのプライバシーを保護するよう設計されている。
AppleとGoogleは、アプリの濃厚接触通知のフレームワークを提供する。これは、Bluetooth Low Energy(LE)を使ってスマートフォンにランダムな識別子を発信させ、同時に他のスマートフォンの識別子を受信してデバイス内に保存するために定期的にスキャンする仕組みだ。識別子は20分ごとに変化する。
ユーザーが新型コロナウイルス検査で感染していると診断されると、診断と同時にQRコードを受け取る。感染者は、このQRコードを使って過去2週間分の自分の識別子データをサーバーにアップロードする。次に、感染者がアップロードした識別子データとマッチする識別子を持つデバイスに警告が届く。
だが、ドイツの診断センターの中にはQRコード提供に必要な装置がないところもある。その場合は、感染者はホットラインに電話をかけ、検査で陽性だったことを確認するための幾つかの質問に答えなければならない。
理論的には、この手順であれば偽の報告はできず、人々を無駄に隔離または自己隔離させることを避けられる。偽の感染報告が悪意を持って組織的に行われれば、公衆衛生に危険な影響をもたらす可能性がある。
その可能性を理由に、AppleとGoogleによるAPIは、監視されないという性質を批判する専門家から逆効果だと決めつけられた。
実際、ドイツは当初、両社が提示するアプローチを採用せず、独自アプリを開発する計画だった。初期のコロナ警告アプリは、位置情報を生成し、それを保険サービスによる管理・解析のために中央サーバーのデータベースに保存するはずだった。
この最初のコンセプトは、AppleがiPhoneのセキュリティ標準の変更を拒否したことで暗礁に乗り上げた。データをデバイスからデータベースに送るにはセキュリティ標準の変更が必要だった。中央サーバーのアプローチが技術的に実現できなくなったため、ドイツはアプリの最初の計画を断念し、GoogleとAppleのAPIを採用した。
この転換はプライバシー活動家に歓迎された。活動家らは、たとえ匿名化されたとしても国民の移動記録を中央サーバーに集め、政府の手に渡すことに懸念を表明していた。伝統的にプライバシーを重視するドイツでは、中央集権的な方法は受け入れられにくかった。
世論調査によると、分散型を採用していても、このアプリに納得していない人はかなり多い。ドイツ公共放送連盟ARDによる最近の調査では、国民の42%が接触追跡アプリを使うと答えた一方、39%が使わないと答えた。
プライバシー保護を示すため、ドイツ政府はコロナ警告アプリのリリース前に、このアプリのコードをオープンソース化した。SAPは、このアプリはコードのリポジトリを訪れた10万9000人以上の個人の意見も反映して開発したと説明した。「これほど重要なアプリ開発プロジェクトとしては、これ以上透明性を持たせるのは難しい」と同社は述べた。
ドイツ政府のセキュリティ当局BSIもこのアプリのコードにゴーサインを出した。BSIはアプリ公開前に幾つかの重大な問題を指摘したが、SAPはこれらを既に修正したとしている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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