5年前は9割以上の企業が禁止だった副業。いまでは解禁となった企業も多く、副業に関する様々なイベントが開催され、サービスもリリースされるようになった。そんな中、複業にも第二世代が現れた。それは、パラレルキャリア(複業)で得たものを活かして、イントレプレナー(社内起業家)として活動する人たちのことだ。
大企業の複業第二世代が社内外でどのような取り組みをしてイントレプレナーになったのか。「第1回パラレルプレナージャパン公式イベント~パラレルキャリアを活かした大企業イントレプレナー人材の話を聞いてみよう!~」と題して実施されたオンラインイベントから紹介する。
第1回パラレルプレナージャパン公式イベントは、5月16日にオンラインで開催された。AGCに勤めながら、フリーランスやNPO二枚目の名刺などでも活躍する磯村幸太氏、西日本電信電話(NTT西日本)に勤めながら、総合エンターテイナーや6社の顧問・アドバイザーなどでも活躍する及部一堯氏が登場。モデレーターはHARES CEOであり、複業研究家として活躍する西村創一朗氏が務めた。
今では、「ふくぎょう」という言葉は、副収入を目的に仕事のすきま時間などに行う「副業」と、本業と同レベルで様々なプロジェクトを同時並行でこなし、収入元を複数持つもの「複業」などに分類されるようになった。
今回の登壇者は、パラレルキャリア(複業)で得たものを活かし、イントレプレナー(社内起業家)として本業でも変革を起こしている。こういう人たちのことをパラレルプレナーと名付けた。
磯村氏は現在、「ビジネス」「ソーシャル」「ガーバメント」「アカデミア」という4つのセクターを越境しながら、越境学習を研究している。その目的は、みんなが毎日ワクワクしながら働く社会への変化を促すことだ。
AGCでは、組織開発やオープンイノベーションの社内コンサルやファシリテーターとして活動しながら、副社長直轄の組織開発PJなどにも取り組んでいる。すべて自ら提案して実現したものであり、パラレルキャリアがなければ、実現していないと語る。
パラレルキャリアを実践することで、会社に対するスタンスも変化したという。例えば、以前は自部署の視点でものごとを捉えていたが、会社全体、社会全体からの視点でものごとを捉えるようになり、仕事も与えられるのではなく、自分で創るように変わっていった。
その一番のポイントが、普段自分がいるコミュニティとは別のコミュニティの経験から学ぶ「越境学習」である。普段のコミュニティと別のコミュニティで学び、相互の知識を蓄えることで、知識、人脈、機会、実績を持ち込み合って、時間をかけずにパフォーマンスをあげることが可能となったと説明した。
及部氏は、本業では自ら新規事業を創出する活動と社内の新規事業創出支援を行い、プライベートではマジシャンなどの総合エンターテイナー、有志団体の代表、6法人の顧問やアドバイザーに取り組んでいる。パラレルキャリアによって、“自分”が変わり、自分が変わることで、“世間から見た自分”が変わり、世間から見た自分が変わることで、“社内から見た自分”が変わったと語る。
社内から見た自分が、「人脈」「スキル」「知識」「志」などを持っていると思ってもらえることで、新規事業創出や社内改革をする機会を与えられ、社外の知識・人脈・経験を活かした提案をすることができる。そして、それが会社の方針と合えば、社内の先輩からサポートを得られ、実現することが可能となるという。
このような取り組みが、プライベートでの総合エンターテイナー経験を活かした介護レクサポートサービスのリリースに繋がり、今もなおパラレルキャリアを活かして新規事業をつくっている。パラレルプレナーになるためのKey Pointとしては、会社のために頑張ることはもちろんだが、それよりも“社会”のために頑張る意思を持っていることと、いろんな人から相談される自分になることだと話した。
パラレルキャリアを始めたきっかけについて、磯村氏は「毎日わくわくしながら、働きたい」と思っており、2017年の元旦に「LIFE SHIFT」という本に出会ったことをきかっけに、複業を開始した。なんと本を読んで4日後に開業したという。その時は事業内容も決めておらず、勢いだったと振り返った。
及部氏は、入社した1年目に足を怪我して入院。そのとき、周りにたくさん支えられて生きていたことに気付き、支えてくれた方々への感謝を行動に変え、シンガーソングライターとなったことが、パラレルキャリアのきっかけとなった。
では、パラレルキャリアを実現するためには、どのようなことをすればいいのか。及部氏はイベントの企画と実行がオススメだと話す。イベントはターゲットを考え、プロモーション、当日の段取り、収支計算などもするので、企画力や実行力、経営の視点、マーケティングなど様々なスキルが身につくと説明した。ただし、大きなイベントをする必要はなく、まずは小さくても「とりあえず動く」ことが大事だと語った。
磯村氏は“複業は収入を得るもの”という印象はあるが、収入に関係ない社外活動も含まれていると考えている。それを前提として「プロボノ」(ボランティアなどの社会貢献活動)をオススメするという。新しいことをする際に、いきなり収入を得るのはハードルが高いため、「社会のためになること」を目指すことが大切だと話した。
社外で得たものを社内に還元する際に大事なことについて、及部氏は社内の人を大切にすることと人脈を広げることが大事だと話す。社内で新しいことをするとき、社内の人に応援されなければ何もできないため、応援される人に普段からなっておくことが重要だと説明する。そのために自身も普段から食事に行ったり、自分がやっている活動を伝えるなど社内コミュニケーションをとっていると伝えた。
また、モチベーションの保ち方について、及部氏は単純に楽しいから続けられていると話す。社会人を楽しむためには、「人」「お金」「スキル」「時間」をバランス良く得られることがポイントだと考えており、複業をすることで、それが全部満たされているので、自然と続いていくと語る。
磯村氏はわくわくすることしかしないと決めているので、モチベーションを不安視することはないと話す。では、本業で多忙な中、復業する時間はあるのか。磯村氏は知識労働をすることで、時間の制約をなくすことができる。むしろ、いろいろなところで活動することで、全体の生産性は上がると説明した。
最後にパラレルプレナーを目指す人に対してメッセージが送られた。パラレルキャリアは一つの手段であり、自分がどれだけ社会に役に立てられるかという部分の方が大切なため、手段にとらわれず目的を据えて活動すべきだと磯村氏は語る。
パラレルプレナーは、社内・社外にとらわれずに自由に活躍する人であり、そのはじまりは「行動」しかない。行動してみることで、意識が変わり、成功しても、失敗しても、全てが積み上がって実績となる。どんなことでもいいので行動してみるべきだと及部氏は伝えた。
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