本格的なおひとりさま社会の到来で求められる家と暮らし--LIFULL HOME'S総研

 LIFULLの社内シンクタンクである「LIFULL HOME'S総研」は6月9日、研究報告書として「住宅幸福論 Episode.3 lonely happy liberties ひとり暮らしの時代」 を発表した。「おひとりさま社会」の日本で、今後求められる家や街のあり方について、LIFULL HOME'S総研 所長の島原万丈氏が話した。

「住宅幸福論 Episode.3 lonely happy liberties ひとり暮らしの時代」
「住宅幸福論 Episode.3 lonely happy liberties ひとり暮らしの時代」

 「住宅幸福論」は、2018年からLIFULL HOME'S総研が取り上げているテーマ。2020年で3年目を迎え、Episode.1の「平成の終わりに、昭和に形成された『住宅の幸福観』を解体する」、Episode.2の「幸福の国デンマークとの⽐較で、⽇本⼈の住⽣活の実態を振り返る」に続く、Episode.3になる。

 島原氏は「日本は今、お一人様社会を迎えている。現在、単身世帯数は全体の35.7%にのぼり、ファミリー世帯の1413万世帯(26.1%)を上回っている。この数は2040年に40%まで増える見込み」と、本格的なおひとりさま社会の到来を見越し、「一人暮らし」をテーマに据えたと話す。

 単身比率は、都市圏ほど高い傾向にあり、東京23区や福岡市ではすでに全世帯の半数が単⾝世帯になっているとのこと。2040年には東京都23区で54%、東京都全体でも50%超える見込みだ。

 この背景には、晩婚化、未婚化があり、将来的に、⽇本の15歳以上⼈⼝の半数近くが独⾝者(未婚、離別、死別)になり、島原氏は「従来、住宅分野において一人暮らし用の家は比較的若年層をターゲットにしていたが、すでに全年代に及び、最も多い世帯類型になっている」と指摘する。

 この傾向は海外でも同様に進んでおり、フィンランドやノルウェー、デンマーク、ドイツでは、日本より高い単身化比率を記録。しかし日本特有の調査結果として「⽇本の単⾝世帯の住まいの満⾜度は低い。デンマークの単身世帯や2人以上の世帯に比べ、満足度は大きく見劣りする」傾向にあると島原氏は解説する。

 そこで、「未婚単⾝世帯の住⽣活実態調査」を実施。20〜64歳で⼀都三県に居住する未婚、ひとり暮らしの男⼥3000名を対象にしており、比較対象として20〜64歳の⼀都三県に居住する同居者ありの男⼥1000名にも調査を行った。また幸福度として扱ってきたテーマを深堀りするため、主観的幸福を意味する「ウェルビーイング」の概念で、多角的に調査してみたという。

 調査結果によると、単⾝世帯は、「街」「家」「住⽣活」すべての満⾜度が2⼈以上の世帯に⽐べ低く、両親や兄弟など同居人がいる独⾝者と⽐べても、「家」と「住⽣活(総合評価)」の満⾜度が低いことが見えてきたという。

 この傾向は男性のほうが強く、街、家、住⽣活すべてに対して⼥性のほうが満⾜度が⾼いとのこと。さらに、男性は20〜39歳の若年層で満足度がもっとも高く、加齢によって低下していく傾向が見られた。一方、女性は加齢による変化が少なく、ミドル層では街の満足度が高まっているという。

 島原氏は「男性は若い時をピークにポジティブな気持ちを感じることが少なくなり、女性は年齢を重ねてもポジティブな気持ちが少なくならない傾向にある。男性は年齢を重ねるとちょっと厳しくなってくる」と分析する。

ハードの満足度は頭打ち、気配りや地域との交流が幸福感を高める

 居住環境においては、持ち家の中では、マンションのほうが⼾建てより満⾜度が⾼く、賃貸の中では、アパートの「家」に対する満⾜度の低さが⽬⽴つ結果になった。

 島原氏は「独⾝のひとり暮らしは住まいの幸福度が低く、男性は⼥性よりも住まいの幸福度は低い。さらに、男性は加齢で住まいの幸福度が下がるが、⼥性の変化が⼩さい」とまとめる。

 これを受け、ひとり暮らしの住まいの幸福度を⾼めるために必要なのは、ゆとりのある広さと⽔まわり設備、衛⽣⾯など、住居におけるハード⾯の⾼評価は住⽣活満⾜度の向上につながるほか、建物の清掃や管理、⼤家や管理スタッフの親切さによっても大きな差が出るとのこと。

 また、満⾜度が⾼い層は、⽚付けや掃除、インテリアコーディネートなど、住空間への気配りができており、それが住⽣活満⾜を高めている。ただ、家賃の高さや築年数、広さといったスペックによる満⾜度は、家賃であれば8万円以上、築年数は11~15年、広さでは40平方メートルを境に満足度が頭打ちとなっており、お金によって手に入れられるものは、飽和することが調査結果からわかった。

 一方、⽚付けやインテリアへの配慮や、家に人を招いたり、地域社会との交流頻度が高かったりすることで、住生活への満足度は高くなり、こちらに関しては、ハードのスペックのように頭打ち傾向は見られない。

 島原氏は「家が気持ちいい・⼼地いいという感覚的評価はポジティブな感情を⾼める。⼈との交流があることはポジティブな感情に働きかける。人を招いたり、地域社会とのつながりは、ポジティブな気持ちで暮らせる大きなポイントになる」とコメントした。

 さらにアフターコロナの住まい方についても触れた。「今回のことを機に通勤利便主義が見直されるきっかけになり、家への関心が高まった。ワークスペースづくりのために断捨離をしたり、住空間に働きかけることで、住心地がよくなっている。また人付き合いにおいても、その重要性が実感されたのではないか」とした。

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