接触追跡は公衆衛生上の取り組みであり、新型コロナウイルス感染症などの疾病の感染拡大を防ぐためのものだ。しかし今、警察が犯罪捜査のモデルとしてこれに注目しているのではないかと報じられている。そうした別の目的に利用されれば、接触追跡を導入する側にとって深刻な問題となる。この取り組みに協力することを一般市民に納得させることが、ますます難しくなることが懸念されるためだ。
接触追跡は、訪問した場所や接触した相手を人々に報告してもらうことによって疾病の感染拡大を防ごうとするもので、新型コロナウイルスのパンデミック下で非常に重要なツールとなっている。
接触追跡の最大の難関は一般市民の信用を得ることだが、その問題を悪化させかねない出来事があった。米ミネソタ州ミネアポリスでGeorge Floydさんが死亡した事件を受けて抗議活動が勃発した後、同州公安局のJohn Harrington局長は、米国時間5月30日の記者会見で、警察が逮捕したデモ参加者の「接触追跡」を開始したと語った。
Minnesota Public Safety Commissioner John Harrington says they've begun contact tracing arrestees.
— NBC News (@NBCNews) May 30, 2020
"Who are they associated with? What platforms are they advocating for? ... Is this organized crime? ... We are in the process right now of building that information network." pic.twitter.com/U0KNIVHnf6
全米各地で起きた抗議活動は、警察に対する暴動に発展している。抗議活動が勃発したきっかけは、Floydさんの首をミネアポリスの警察官が膝で押さえつける映像が拡散したことだ。警察はこれまでに数百人のデモ参加者を逮捕している。その多くが騒ぎを大きくするために州外からやってきた扇動者だと、ミネアポリス警察署などは主張している。
NCSD(National Coalition of STD Directors)のDavid Harvey理事は、デモ参加者に関する証拠や大きな組織との関わりを調べることが犯罪捜査で重要となる場合があるが、それは接触追跡ではないと述べた。NCSDは、全米規模の接触追跡を取りまとめる米疾病予防管理センター(CDC)の一部門だ。
Harvey氏は、公衆衛生のための追跡手段を警察がデモ隊に適用することについて、大いに憂慮していると語った。パンデミックの中で一般市民の信用を得るのはすでに難しいのに、警察の捜査に紐づけられればますます難しくなるという。
しかし、ミネソタ州公衆衛生当局への取材に基づくrecodeの報道によると、Harrington局長は警察による調査の通常のプロセスについて比喩的に「接触追跡」と表現しただけであり、警察が新型コロナウイルス感染症の接触追跡技術を利用するという意図はなかったという。同氏の広報担当者もrecodeに対し、これを認めた。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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