世界の音楽市場はデジタルストリーミングを始めとする急速な変化に直面し、その背景にある「音楽×テック」の重要性は年々高まっている。そして、その未来を予測し、2017年から音楽特化型のアクセレータープログラムをスタートさせたTechstars Musicは、今や業界内において見逃せない存在と言えるだろう。
また、Techstars Music主催で新進気鋭のスタートアップ企業が、投資家や音楽業界関係者たちにプレゼンテーションをするイベントであるDemo Dayは、言わば業界の未来を担うイノベーションを先物買いできる音楽×テックの見本市だ。
Demo Dayは毎年春に、約100名のベンチャー投資家や300名以上の音楽・エンタメ関連のエグゼクティブたちを米・ロサンゼルスのNeuehouse Hollywoodに招待して開催される。しかし、第4回目となる2020年は、新型コロナウイルスの影響によって初のオンライン開催に変更。現地時間5月5日に”Virtual Demo Day”と題して、米・Billboard Proから全世界へ配信された。
さらに今年初の試みとして、世界第2位の音楽市場を持ち、エイベックス、ソニー、レコチョクなどがTechstars Musicのメンバー企業として参加している日本向けに、Virtual Demo Dayの再配信が決定。5月22〜31日までの期間限定で、動画が日本語字幕付きで公開された。
ベンチャーデータベース「Crunchbase」調べによると、Techstars(テックスターズ)は投資量で世界No.1のスタートアップアクセラレーターだ。2006年に米国で設立され、世界各地でアクセラレータープログラムを展開しながら5000名以上のファウンダーをネットワークしている。そのポートフォリオの時価総額は250億米ドル以上とされる。
Techstars Musicは2017年の設立以降、母体となるTechstarsの持つ巨大なネットワークやノウハウを生かして順調に成長。これまでに参加した30社のスタートアップは、海外の有数なベンチャーキャピタル(VC)やGAFA、大手音楽企業など、世界中の投資家から8800万米ドル以上の追加投資(資金調達)を受けることに成功している。
たとえば、2017年度のプログラムに参加し、AI作曲システムの開発で音楽業界からの注目を浴びているスタートアップ「Popgun」は、シリコンバレーのトップVCの1つであるKhosla Venturesから出資を受けており、海外の投資家からの注目も高まっている。
Techstars Musicnoのメンバー企業には、Warner Music Group、Concord Music、Bill Silva Entertainment、Peloton、Royalty Exchange、Q Prime Management、Entertainment One、そして日本からはエイベックス、ソニー、レコチョクなどが名を連ねている。
それらのメンバー企業はTechstars Musicのファンド出資者であり、メンターとして試験的な機会を提供および助言することはもちろん、世界中を飛び回ってスタートアップの発掘にも協力している。
今回のVirtual Demo Dayでは、2021年度のプログラムから「Amazon Music」が新たにメンバー企業として参加することが発表された。AmazonのAlexaファンドは、2018年のプログラム参加スタートアップで、カスタマイズされたヒーリングサウンドを自動生成するアプリを提供するドイツ・ベルリンのスタートアップ「Endel」に対して出資しているという。
Techstars Musicは、毎年10社のスタートアップに対して12万米ドルずつを投資し、各スタートアップは春のDemo Dayに向けて、3カ月間さまざまなプログラムに挑戦する。その間、世界各地の音楽、テクノロジー、ベンチャー業界の300組以上からなるメンターとつながることができ、事業の成長や製品開発に役立てていく。その後は、各社の開発したプロダクトを持って10社各々がベンチャーのエコシステムに参入していく。
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