ここからは、2020年のTechstars Musicによる3か月間のアクセラレータープログラムを終え、Virtual Demo Dayでプレゼンテーションを行った新進気鋭のスタートアップの中から注目の4社を紹介する。
音楽を軸に独自のアイデンティティを持つバーチャルアーティストを制作するStrangeloop Studios。「Spirit Bomb」と呼ばれるバーチャルアーティストのレーベルを立ち上げ、さまざまなアーティストたちとのコラボレーションや楽曲制作を進めている。
バーチャルアーティストを活用することによって、わずかなコストで販促用アセットとMVを作成し、ソーシャルメディアでのデビューや音楽配信、ライブイベントなどから収益を創出する。また、コンサートが主流の音楽業界において一夜にして複数の大手市場でライブをすることも可能だろう。
Techstars Musicへ参加する前は、Kendrick Lamar、The Weeknd、Marshmelloなどのトップアーティストのライブビジュアル制作を手掛けており、すでにアーティストとの間に深いつながりを持っていることも同社の強みとなっている。
TribeXRは、DJスキルを学ぶための体験型プラットフォームをVRで提供。このプラットフォームとVRヘッドセットさえあれば、デバイスに関わらずバーチャル空間内の仮装DJデッキを使って練習することができる。またスタジオに講師を呼んでのプライベートレッスンや他のユーザーとのコラボレーションも実現できる。
すでに1万6000人以上のユーザーがこのサービスを使っており、現在もユーザー数が堅調に増加中。今後は楽器演奏やダンス、演技、ファッションデザインといったさまざまな領域でスキルを学びたいユーザー向けに、2024年をめどに15種のスキルへの拡大を目指す。
バーチャルグッズを通じてアーティストとのエンゲージメントを高める仕組みに取り組むFanaply。2019年のコーチェラ・フェスティバルでは公式デジタルコレクティブルパートナーとして、フェス公式アプリを通じて4万個以上のアイテムが収集される結果を残し、2020年のコーチェラにも参加予定。
Fanaplyはバーチャルグッズによってアーティストやセレブリティなど、1人につき5万米ドルから25万米ドルの収益を創出できると推定。また、新型コロナウイルスの影響で延期されたライブイベントとの連携も視野に入れているという。
これまでは別のプラットフォームへの移行や、新しい開発環境でやり直す必要のあったビデオゲーム向けの複雑なサウンドプロダクションを簡素化する技術を提供するElastic Audio。同社のサブスクリプションサービスを活用することで、リアルタイムなサウンド制作・編集が可能となり、さらにあらゆるプラットフォーム、エンジン、ツールでも応用ができる。
サウンドクリエイターやオーディオデザイナーの労力や費用を大幅に削減するとともに、新たな収入源を拡張。将来的には映画やアニメーション、AR/VRなどでのサウンド制作も目指す。
音楽業界団体・IFPIのレポートによると、世界の音楽マーケットは過去5年連続して成長を続けており、2019年は前年対比8.2%の成長、全体の売上高は202億ドルに達した。これは新たな音楽テクノロジーが生み出した、Spotifyなどを筆頭とするサブスクリプション型の音楽ストリーミングの消費マーケットが急速に伸びていることにもけん引されている。
音楽市場の将来的な成長を背景に、日本からTechstars Musicへの応募企業も近年増加している。2019年のプログラムには日系のエンタメAIスタートアップ「Embodyme」がプログラムに参加。同年のプログラムの中でトップクラスの成績を収め、日系VCなどからの出資を受けたことも話題となった。
2020年のDemo Dayが日本で再配信されたことはTechstars Musicが日本の音楽市場に注目していることの現れであり、その期待を受けて日本においても音楽×テックの動きはますます加速していくことだろう。
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