CVCファンドの成功に必要なこと--NTTドコモ・ベンチャーズが教える戦略 - (page 2)

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NTTドコモ・ベンチャーズの活動

 NTTドコモ・ベンチャーズは2019年、質的深化を掲げ、より質の高いスタートアップを見つけるため、戦略的リターンと財務的リターンの両方で、より厳しい基準を社内で設けた。一方でグローバル展開を拡大し、2019年は米国に13件、その他の国の7件に投資した。国内は10件なので、1年間の投資のうち3分の2は海外企業という結果だ。

 また、NTTグループとの協創については32件が成立した。また、ファンド出資が起点となったパートナーシップは、5つ。ファンド出資は100社以上あり、半分は海外のベンチャー企業だ。

 「(ファンド出資先のスライドを見せながら)これを見ても知らない企業が多いと思う。7~8年前に米国にいたとき、Uberを知らない人は大勢いた。Airbnb、SnapChatも小さな企業だった。いずれこの中の何社かは知っている企業へと成長する」(稲川氏)。

NTTドコモ・ベンチャーズのポートフォリオ
NTTドコモ・ベンチャーズのポートフォリオ

 NTTドコモ・ベンチャーズは、インキュベーションセンター「/HuB」の運営も行っている。社員数5名以下のオフィスがないベンチャー企業を数社入居させ、半年で成果を出すことを目標に活動している。いまはアクセラレータープログラムは一切行わず、ベンチャー企業から相談する仕組みをとっている。

 「法律相談や企業コンサル、財務相談、知財戦略のために弁理士に相談するといった機会は、ベンチャー企業から希望があったら行う。最終発表会もしない。このプル型のアクセラレータープログラムを行ったところ、5社がさまざまなコンテストで賞を取るようになった。半年で入れ替える制度なのだが、この5社があまりにも成果を出したので継続してもらうことになり、3社を足して3月まで行うことになった。4月からの入居に関して応募が来ているため、この8社と応募してきた企業とで選抜を行っているところだ」(稲川氏)。

 稲川氏は/HuBを通じて感じたことがあるという。「ベンチャー企業のためにしっかり取り組みを行うと、オープンイノベーションを起こしやすいと実感した。大企業はオープンイノベーションができていないのに、大企業のストラテジーにベンチャー企業を合わせることが多い。それでは、壊しに来ているベンチャー企業が大企業に寄り添うことになり、大きな変化を起こせない」(稲川氏)。

インキュベーションセンター「/HuB」にいるベンチャー企業
インキュベーションセンター「/HuB」にいるベンチャー企業

CVCの悩み

 ここで稲川氏は、CVCに対してはネガティブな発言が多いと述べた。「なぜCVCをやるのかということに対してモヤモヤしている声を聞く」(稲川氏)。

 しかし、NTTドコモもかつてベンチャー企業だったと稲川氏は述べる。「私が入社した1995年は駆け出しの会社だった。1992年の携帯電話の普及率は1%で、最終損益は赤字だった。しかし、1990年代後半になるとケータイは高額であるにも関わらず売れまくった。インフラをいくら立ててもネットワーク容量が足りなかった。家に帰れず、仕事ぶりに関してもベンチャー企業のようだった」と当時を振り返る。

 「通信速度は25年で16万倍速くなった。これは技術者がロードマップを作って計画的に行ったためだ。通信技術、半導体、バッテリー技術、ディスプレイなど、未来はある程度予測可能だ。ただ、予測できる技術の進歩だけではイノベーションには足りない」と稲川氏は述べ、かつてNTTドコモがリリースしたウェラブルデバイス「WRISTOMO(リストモ)」や、音楽配信サービス「M-stage music」を挙げた。

 「WRISTOMO」は2003年に発売されたウェラブル型PHS電話機で、稲川氏は2015年発売のApple Watchと比較した。また、「M-stage music」は2001年に発売されたPHSを利用した音楽配信サービスで、楽曲を試聴したり、有料ダウンロードで楽曲を購入したりできるサービスだ。これを稲川氏は9カ月後に発売されたiPodと比較した。「予測可能とはいえ、(NTTドコモの製品は)売れなかった。早すぎた。振り返れば技術以外の要素も重要だとわかる」と稲川氏は述べる。

 さらに、NTTドコモが2007年に予測した"「201×年」の姿”のイラストを提示した。これを今のサービスに置き換えると、ほぼ何らかの形で実現されている。

NTTドコモが2007年に予測した"「201×年」の姿”に現在のサービスを記入した図
NTTドコモが2007年に予測した"「201×年」の姿”に現在のサービスを記入した図

 「つまり、技術的にロードマップは作成できるが、ビジネスのサクセスのタイミングは誰も読めていない。言い換えると、イノベーションを起こすという大企業は技術ロードマップがあるのだから、どこのタイミングで何をやるかを考える人がいればいい」と稲川氏は語る。

 こうした予測可能なイノベーションと、もうひとつ重要なことは予測不可能なものにも着目することだと稲川氏は述べる。「ギグエコノミーや無人店舗などが普通に受け入れられるようになったタイミングは思い出せないものだ。ふわっとイノベーションが来て、いつの間にか自分が凌駕されている。予測可能なものと予測不可能なものの混ざり合いが重要だ」(稲川氏)。

 稲川氏は、上司から「イノベーションを起こせ」「新規事業を立ち上げろ」と言われている人達と、世界中でイノベーションを”勝手にやっている”スタートアップがつながっていないことが問題だという。「そこがCVCの一つの役割だと考えている。いちからイノベーションを社内で生み出していても、もはや他社には勝てない」(稲川氏)。

 「テックジャイアンツとVC/CVC、そしてスタートアップにはすでにエコシステムができている。日本企業が急にシリコンバレーに行っても入れない。しかし、このエコシステムは無視できない。実際にスタートアップ企業へのCVC投資件数は増加しているし、投資額も増えている。GoogleやAmazonはうまくやっている」と、稲川氏は現状を説明した。

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