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未払い養育費を“手間なく”回収できる「iCash」--埋もれた権利をスマホでお金に

山川晶之 (編集部) 鈴木光平2019年12月30日 13時40分
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 iCashは12月30日、養育費の未払いをスマートフォン一つで回収できるアプリ「iCash」をリリースした。

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(左から)iCash取締役CTOの齋木保範氏、同社代表取締役社長の齋木拓範氏、同社Co-Founderの伊澤文平氏

 これは、眠っている権利をお金に変えるサービスで、第一弾は今まで回収が難しかった養育費の未払い問題を解決する。アプリから必要事項を記入することでおおよその支払額を提示。のちほど郵送される封筒に書類を入れて送付すれば、あとは回収するまで待つのみというシンプルさが特徴。

 回収すると、システム利用料20%(現在ベータ版のため調整中とのこと)を差し引いた額がアプリのウォレットに蓄積される。一般的な法律相談所で必要となる着手金といった初期コストや面談、裁判は不要だが、別途弁護士費用が発生する(こちらもベータ版につき具体的な金額については調整中としている)。

 iCashはシングルマザーからデータを受け取ると、提携している弁護士などに依頼して元夫を探し出して回収する。これまでは元夫の居場所を特定するのに時間も労力もかかっていたが、民事執行法の改正により裁判所が銀行口座や勤務先を照会してくれるようになった。仮に元夫が支払いを拒否しても給料から差し押さえることもできるため、高い確率で回収できるという。

 同社は、「スマホひとつで権利を行使できる社会に」をコーポレートテーマに据えている。なぜ、サービス第一弾に養育費を選定したのか。その社会背景と今後の展望について同社代表取締役社長の齋木拓範氏、同社取締役CTOの齋木保範氏に聞いた。なお、齋木両氏は実の兄弟(双子)でもある。

日本に眠る約3500億円の未払い養育費

 現在、日本には約120万人ものシングルマザーが存在する。そして、養育費のうち80%が未払いとされ、その総額は約3500億円に上るとも言われている。なぜ、それほどの養育費の未払いが放置されているのか。拓範氏は、回収のために手間と時間がかかるからだと指摘する。信頼できる弁護士を探し、元夫に支払いの交渉をして養育費の支払いが行われるのは早くても3カ月、遅ければ1年の歳月が必要だ。

 加えて弁護士に依頼するには着手金が必要だ。確実に養育費を回収できるか分からないのにも関わらず、少なくとも20万円、多ければ50万円を払わなければいけない。離婚して自分の生活だけでも大変なシングルマザーの多くにとっては大金であり、こうした理由からシングルマザーが養育費の回収を諦めてしまうという。

 iCashのサービスは、着手金無しで簡単に素早く未払いの養育費の回収を可能にする。スマートフォンのアプリでタップするだけなので「弁護士に依頼する」という感覚もなく、アクションを起こす精神的ハードルを下げられるとする。そのため、アプリのUXは「シンプルさ」にこだわったと保範氏は語る。想定しているユーザーは、ITリテラシーが高くないことも考慮し、早ければ1分、長くても5分以内に操作が完了できるように“3ステップ”で設計されている。

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iCash取締役CTOの齋木保範氏

養育費の未払は国が抱える社会的問題

 養育費の未払い問題は社会的にも注目を集めている。先述した民事執行法の改正も、養育費の支払いを念頭においた改正だ。自治体でも、兵庫県明石市がシングルマザーの養育費の建て替えて回収する条例を検討するなど、環境整備が進む。なお、iCashは明石市との連携も含め交渉を進めているという。

 認知やプロモーションについてはSNSを積極的に活用する。これまでどうしても負のイメージがつきまとっていたシングルマザーだが、徐々に払拭されつつあると拓範氏は語る。Instagramなどでは「シングルマザー」のタグで検索すると68万以上の投稿があり、シングルマザーをブランディングに活用したインフルエンサーも出てきている。こうした潜在層にIsntagramの動画広告を流したり、顕在層にはリスティング広告やディスプレイ広告を組み合わせる。また、シングルマザー支援協会などとも連携を相談しており、口コミなども生かしながらオンラインとオフラインの両方で認知を増やすようだ。

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iCash代表取締役社長の齋木拓範氏

泣き寝入りしていたサービス残業や“ノーショー”問題の解決も

 拓範氏は、以前に集団訴訟のプラットフォームサービスをCo-Founderでもあるトップコート国際法律事務所CEOの伊澤氏と共同で手がけていた過去がある(現在はバイアウト済み)。しかし、集団訴訟は原告側の必要な情報が多く、集団訴訟に参加した10人中5人しか集まらずにストップする……といったことも多かったという。そこで、スマートフォンひとつで権利を行使できる社会を実現したいとの思いからiCashの構想に至った。

 なお、伊澤氏はビジネス、法律、ファイナンス面で二人をサポートする立場にあり、iCashと提携する弁護士などは、トップコート国際法律事務所のネットワークを活用している。

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iCash Co-Founder兼トップコート国際法律事務所CEOの伊澤文平氏

 拓範氏によると、今後は養育費以外にも残業代請求、著作権侵害、飲食店やホテルの「ノーショー(予約した人がキャンセルなしに来店しない)」請求なども検討している。というのも、ノーショーでの請求はレビューサイトに報復レビューを書かれるリスクがあるほか、少額のため弁護士を立てづらいことから、泣き寝入りするケースが多いからだ。

 もともと、iCashは買取サービスとしてローンチする予定だったものの、支払額の精度を向上させるため、審査を挟む現在のモデルに至っている。今後は、利用者の事例から予測モデルを磨き上げ、必要事項と必要書類のデータを送った段階で振り込まれる、即時買取サービス「CASH」に似た買取モデルの導入を検討している。

 なお、同社は金銭や時間の制約から権利自体はあっても行使できていないトラブルを解決する“権利のファクタリングサービス”として、「スマホひとつで権利を行使できる社会」の実現を進めるべく、人材も募集中だ。

【12月31日15時45分追記】

記事初出時、システム手数料を15%と表記しておりましたが正しくは20%となります(ベータ版のため最終的な手数料については正式ローンチ時に案内予定)。また、一部表現を修正いたしました。訂正しておわび申し上げます。

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