「Makuake=クラウドファンディング」のイメージを変える--中山社長が語る上場への思い - (page 2)

中山氏が振り返る2010年代のIT市場

——2019年12月に上場した企業はマクアケのほかに、ランサーズ、スペースマーケット、freee、メドレーなどがあります。まさに2010年代のIT市場を作り上げてきた企業群だと思うのですが、この業界における10年を振り返ってみていかがですか。またこの4社とのエピソードなどがあれば聞かせてください。

 まずはスマホですよね。2010年からスマホ市場が大きく成長しました。その前はフィーチャーフォンのSNSゲームが流行り、GREEやDeNAが一世を風靡しました。当時は“ユーザー囲い込みファースト”の時代でしたが、ある時にそこではマネタイズできないことに皆気付いたんです。中途半端なユーザー数では何年経ってもマネタイズできず、コミュニティ系アプリは下火になりました。

 その次が僕らのようなプラットフォーム。キャッシュを生むプラットフォームが出てきたと思います。ランサーズさんもキャッシュが動くプラットフォームですよね。2010年代中半以降は2010年代当初の反省点を踏まえつつ、マネタイズを前提としたB2B SaaSが広まりました。

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 VCの観点では多様性を帯び始めたのも2010年頃からですね。ちょうど僕がVCとしてベトナムに渡航したのも2010年でした。新たな手法を身に付けたVCが登場し、米国のPlug and Playなどを参考にしながら取り組むインキュベーターも登場しました。中盤からはCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)も登場し、スタートアップに資金が流れ始めます。2010年以降に設立したスタートアップ企業にとってよい時代でした。

 よくシリコンバレーと比べると生態系や資金量の点で比較されますが、客観的に見れば日本は非常に恵まれています。難易度の高いプラットフォーム事業が2013〜2015年に登場し、いま上場を迎えました。これは日本市場の生態系が整ったからでしょう。メディアさんも同様で、大企業だけではなく、僕らのようなスタートアップ企業を取り上げてくれるようになりました。SNSの生態系も新しい事業が生まれやすい背景の1つでしたね。

 各社との思い出だと、スペースマーケットの重松さん(同社代表取締役CEOの重松大輔氏)とは彼の前職のフォトクリエイト時代に知り合い、秋好さん(ランサーズ代表取締役社長の秋好陽介氏)には開発組織の作り方を、渋谷でとんかつを食べながら教わりましたね。

 僕はいろいろな方に話を伺うタイプで、重松さんの奥様もサイバーエージェント・ベンチャーズ(現サイバーエージェント・キャピタル)時代の同僚です。豊田さん(メドレー代表取締役医師の豊田剛一郎氏)はテレビ番組に出演したときに知り合いました。繰り返しになりますが、生態系としてのイベントも増え、何かあったときに相談し合い、皆で日本市場を押し上げられるのは、よい環境だと思います。

Makuakeは「つなぎ合わせる」プラットホーム

——マクアケは「クラウドファンディング」という考え方やモノづくりの手法を、日本に普及させた代表的な1社と言えますが、創業当時と現在を比べて、何が一番大きく変わったと思いますか。

 “生まれ方”の一言につきます。我々のビジョンである「生まれるべきものが生まれ、広がるべきものが広がり、残るべきものが残る世界の実現」にあるとおり、既存の仕組みでは補えなかった部分をアドオンしてきました。業界をドラスティックにディスラプションするのではなく、いままで積み上げてきたものを残しながら、補完し合えるプラットフォーム企業でありたいと思っています。

 マクアケを立ち上げた当初を振り返ると、本当に誰も何も知らない状態でした。新しい仕組みだからメディアに取り上げていただき、「少しは知られているかな」という気持ちもありました。しかし、いま思い返すと僕らの認知度は現在も小さく、まだまだ伸びしろを感じています。

——マクアケでは近年、新製品開発サポートプログラム「Makuake Incubation Studio(マクアケインキュベーションスタジオ)」や、実店舗「Makuake SHOP」を展開するなどしていますが、事業の横展開に関する戦略を聞かせてください。

 商流を強化することに焦点を当ててきました。Makuake Incubation Studioであれば、消費者の反響を確認した上で量産化の判断を下すことが可能になります。生まれるべきものが生まれ、広がるべきものが広がり、残るべきものが残る世界を実現するためには、今後も徹底的に国内外の必要なものをすべてつなげていこうと考えています。インターネット企業の生態系は2010年から一気に加速し、そこからこぼれ落ちたものが僕らの生態系を通じて強化されてきました。プラットフォーマーとして、しっかりと取り組んでいきます。

——12月16日にAndroid版アプリのリリースを発表しました。とっくにリリース済みだと思っていたのですが、なぜこんなにも遅くリリースしたのでしょう。

 単純に開発リソースが追いついていませんでした。「お待たせしてすみません」という気持ちでいっぱいです。これまで、プロジェクトの審査プロセスやサイトの文言チェックなど、社内業務の効率化に開発リソースを投入し、プロジェクト実行者さんの使いやすさを優先的に高めてきました。

 iOS版アプリは2017年の秋口にリリースしていますが、「プロジェクトを見逃したくない」「気がつくと終わっていた」といったご意見に、プッシュ通知でお応えできたのは大きいと思います。最近は日本でもAndroidユーザーの比率が増えました。まとまった資金調達から開発体制も充実しましたので、今後はより多くの機能を提供していきます。

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——最後に2020年以降の展望を聞かせてください。企業も消費者も誰もが当たり前のようにマクアケを使うようになる世界を、いつまでに実現したいと考えていますか。

 僕らのビジョンと皆が自分の能力を発揮できれば、欲しいものが実現する世界につながります。それこそメディアさんであれば情報周知、町工場さんなら製造能力と、多様な能力を備えていますが、僕らはそれをつなぎ合わせているにすぎません。リアル店舗も集客力という能力を持ち、それらがつながることで新しいものが生まれやすくなります。

 この世界観を今後10年でやりきりたいと思っていますが、どれだけ早く実現できるか。ここが僕らの勝負どころだと考えています。いま何割実現できているかと言えば5%くらいです。これまでは「永遠の1合目」と答えてきました。ただ、ここから先は2合目、3合目と進みます。愚直に前進ですね。頑張ります。

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