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AIを前に“思考停止”になってはいけない--東大・大澤幸生教授が提唱する「チャンス発見学」

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 AIのビジネス活用を支援するFRONTEOは11月22日、同社初のプライベートイベント「AI Business Innovation Forum 2019」を開催した。

 AIやデータをいかにビジネスで活用していくかをテーマに掲げるなかで、基調講演には東京大学大学院工学系研究科 システム創成学科 教授の大澤幸生氏が登場。「『なぜこの商品は売れるのか』をAIに聞きますか?」と題して、自身の考えを語った。

東京大学大学院工学系研究科
システム創成学科
教授 大澤幸生氏
東京大学大学院 工学系研究科 システム創成学科 教授の大澤幸生氏

 大澤氏は、1995年に東大においてAI領域で工学博士を取得後、データマイニングを研究。その過程で独自の「チャンス発見学」を創り上げ、そのメソッドをイノベーションの支援技術として展開し、現在「データマーケットのデザイン」という研究をしている。

 世の中ではAIブームが加速し、ビジネスをはじめAI活用への期待が高まるなか、大澤氏が訴えかけるのは人間が考えることの重要性だ。AIはどのような存在であって、そのために人は何をしなければならないのか、自らの取り組みと併せて解説した。

 ディープラーニングが注目されて以降、AIの進化には目を見張るものがあるが、AIの進化について大澤氏は「技術の進化そのものよりも、扱えるデータの品質と社会的な要求が進化のモチベーションになっている」と語る。

 まずデータの質の改善、それもビッグデータというトレンドがあるなかで、「量」ではなくあくまで「質」の変化。そしてもう1つ、社会的な期待の変化という要因があり、「AIはAIだけで進化するのではなく、社会的ニーズとデータの間で橋渡しのツールとして進化している」と捉えるのが正解だと話す。

 さらにもう1つ、AIを使いこなすために大切な要素は、人間が育たないといけないということ。「人間が育つためにはeffort(努力)しないといけない。人工知能は単なる計算機。よくシンギュラリティというが、これは人間が止まっているところで計算機が進化して抜かれるというもの。計算機はそのままのパフォーマンスで、人間がどんどん下がっていって抜かれるという可能性もあると思う」と、大澤氏はAIを前に思考停止となりつつある人類に対して警鐘を鳴らす。

スモールデータから回答を見出す「チャンス発見学」

 そのなかで大澤氏が提唱するのが、スモールデータから人工知能だけでなく生身の人間の知能も組み合わせて知見を得る「チャンス発見学」である。

 例えば、ある人がお酒を買うついでに店で1000円のスルメイカを見つけたが、高いので100円のスナック菓子を購入したというケース。ここから導かれる結論は、人が買わないからスルメを商品棚から下げるのは店としては損になるというものだが、機械学習のメソッドではいくらAIが学習しても答えは出てこない。「機械学習という方法では、前から知っていることしかわからない。そこで必要なのはデータの学習ではなくて、『Why』を問うこと」だ。

 チャンス発見学ではまず、データを可視化して図にする。「大事なことは可視化するだけでなく、人が見て考えること。分からないなら分からないなりに皆で一緒に考え、その中のコミュニケーションから何かを発見できれば良い。これがチャンス発見の原理」(大澤氏)としている。

独自のチャンス発見学を開設する大澤教授
独自のチャンス発見学を解説する大澤教授

 AIを活用していくにあたっても、「Why」を問うことが重要となる。Whyを問い、答えを見つけてからHowを考えるということだ。今後の健全なAIの進化については、「事象と事象はどう関係しているかとか、今どうすればいいかを学習させるのでなく、その時なぜそのパターンが見えているかということを考える人間を育てなければならない。人のインテリジェンスを人工物で強くするのがAIの本質であり、必ずしも機械だけで考えるのがAIではない。AIから人が学ぶ。人が努力して成長するための人工知能をどうやって作るか、それが今のグローバルな考え方でもある」と大澤氏は展望する。

足りないWhyのデータはマーケットから取得

 ところが、実際には自分が持つデータだけでは、Whyに相当するものが入っていないことが多い。そこで大澤氏は、これを補うものとして「データマーケット」という形のデータを流通させるプラットフォームを提唱している。一般的にオープンデータが普及しているとはいえ、データを公開する側としては、なかなか企業がビジネスに役立つ自社のデータを無償で提供することは難しい。

 そこでデータマーケットには、「データ・ジャケット」というデータのサマリーを出す。サマリーがあれば、データ同士の関係性が可視化でき、組み合わせれば何ができるかわかる。購入する側はマーケットで交渉し、気に入ればその人のデータやアイデアにお金を払って取得するという仕組みにより、マーケットが成り立っていくというものだ。

 このように、人がなぜそういう要求を出すのかを掘り下げていき、その要求に合うようなデータの連結方法を考え、実際にそのデータを獲得して分析もしくは可視化することによってチャンスを発見できるようになリ、発見したチャンスからイノベーションに至る。実際に大澤氏はこのメソッドでデータからチャンスを発見し、マーケットの変化を検出して説明するAIツールを作り、それを地震発生予知に適用するなどの成果を上げているという。

 AIブームを前にして大澤氏は、「Whyを問い、Whyに答える『人知』こそ人工知能の前に肝心である」と強調する。「ビジネスにおいても、会社ではこれを鍛えるような教育、検証をしっかり行うこと。やらないとAIは無駄になる」(同氏)。

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