ウェブエンジニアは「自動運転」の開発にどう携われるのか--ティアフォー森本氏が解説

 自動運転やMaaS(Mibility as a Service)が進む中で、ITエンジニアがモビリティ領域にチャレンジするケースが増えている。10月末に開催されたカンファレンス「MOBILITY dev 2019」では、交通やモビリティに携わりたいITエンジニアに向けて、さまざまなセッションが開かれた。

 そのなかの1つである、ティアフォー 技術本部エンジニアの森本潤一氏による講演「Webエンジニアが自動運転企業でやっていること」では、ティアフォーという自動運転ソフトウェア開発の企業で、ウェブエンジニア出身の森本氏が何をしているのか、具体的に説明された。当日の模様を紹介しつつ「モビリティ×エンジニア」の関わりを考えたい。

ティアフォー 技術本部エンジニアの森本潤一氏
ティアフォー 技術本部エンジニアの森本潤一氏

自動運転は「車」のイメージに終始してはいけない

 もともと、バックオフィス向けのサービス開発や運用など、ウェブ分野でエンジニアのキャリアを積んできた森本氏。その彼が現在所属するティアフォーは、自動運転用のソフトウェア「Autoware」の開発をメインに行っている。

 森本氏は入社時を思い出し、モビリティに関わりたいと思いつつ「自分が何をやるか、ここで何ができるか、はっきりイメージできずに入社した」と笑う。そして今、同じような心境で面接に訪れるウェブエンジニアは多いという。

 しかし、モビリティのステージが大きく変わるタイミングだからこそ、自動運転を扱う同社の中でも、ウェブエンジニアとしてやれることはたくさんあると話す。これはセッションの最後に語られた言葉ではあるが、森本氏は自身が働く中で感じたことを、こう表現した。

 「自動運転というと車に関わるイメージが強くなりがちだが、実態は『サービスの集合体』だ。たとえば、車両の現在位置をブラウザに表示すること。ブラウザから車両に発進命令や走行ルートを送ること。加えて、自動運転の周辺ツールを開発する需要もある。さまざまなサービスが集合している」(森本氏)。

 車のスマホ化という言葉も聞かれる近年、「ワードに引っ張られて“車”のイメージに終始するより、それに関連するサービスを自分は作れるのか考えることがエンジニアには求められる」という。その言葉を証明するように、森本氏はこのセッションでティアフォーにおける業務を分解しながら、ウェブエンジニアがどうこの領域に関わっているかを説明した。

ウェブ側からシステム内のやりとりに介入する

 同社の開発するAutowareは、自動運転のOS。国内外200社以上で使われている。車はもちろん、車椅子やゴルフカートにも搭載されており「ラジコンに載せることも可能」と話す。特に有名なのが「Milee(マイリー)」で、運転手が不要な自動運転レベル4に達している。

完全自動運転EV「Milee」
完全自動運転EV「Milee」

 このAutowareで使われているシステムが「ROS(Robot Operation System)」だ。自動運転のさまざまな処理について、各処理を担当するノードがそれぞれ存在。ノード間でメッセージを送受信する仕組みとなっている。

 たとえば、車両に搭載されたカメラの映像をシンプルなイメージ図に変え、各ノードに送信(Publishing)する。すると、そのイメージ図を活用したいノード、たとえば信号を認識するノードや歩行者を見つけるノードが、このメッセージを受け取り各々の処理に生かす。信号認識ノードの場合、赤信号なら「停止」の命令を発信し、またそれを別のノードが受け取っていく。こういったメッセージのやりとりが、ROSで行われている。

 では、ウェブエンジニアがここにどう関わるのか。森本氏は「こういったROSのやりとりにウェブ側からも介入できれば、何かしらのアクションを行える」という。あるいは、逆にROSでのやりとりをウェブ側で吸い上げることができれば、その情報を活用するパターンも出てくる。

 「それを実現するために使われているのがrosbridge。ROSのメッセージを他のプロコトルにブリッジするモジュールで、これによりAutoware内の情報を吸い上げたり、逆にウェブ側からメッセージやトピックを送ったりできる」(森本氏)。

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 ウェブ側が吸い上げる情報としては、車両が今どこにいるかという位置情報や、今どの速度で走っているかといった車両ステータスが挙げられる。一方、車両への発進命令や、走行ルートの決定などをウェブ側からもできるようになる。

自動運転はウェブやアプリのサービスに紐づく

 こういった技術を高めてできたのが「Autoware FMS」だ。Autowareで動く自動運転車両の運行管理システムで、車がどう動いているかのモニタリングやスケジューリング、どこに行くかの経路計画などを、ブラウザ側で行える。Autowareが持つ情報をブラウザとつなげることで、こういったシステムが実現している。

 「システムの大まかな流れとしては、まず車両の位置情報をFMSのクラウドで受け取る。その後、目的地に応じてクラウドでルートを生成し、Autowareに送信。その後、発進命令を出す。これらはアプリなどからの操作が可能」(森本氏)。

 
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 このように、自動運転とは言いながら、実態はウェブやアプリといったサービスに紐づいてくる。この点から、ウェブエンジニアがモビリティで何をすべきか見えてくるかもしれない。

 そのほか、「エンジニアの仕事には、車に搭載されるソフトウェアを作るだけでなく、それを作るための周辺ツールやインフラを開発する作業が非常に多い」と森本氏。そこにも、ウェブエンジニアの力を生かせる場所が多分にあると感じている。

 こういった説明があり、冒頭で紹介した「ウェブエンジニアも自動運転に関してできることはたくさんある」という言葉が語られた。むしろ、“ウェブエンジニアだからこそ”生み出せるサービスを考えることが、モビリティの革新的な進化につながるかもしれない。

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