不動産テック事業を手掛けるスタートアップ支援にGAテクノロジーズが乗り出した。9月17日、デジタルベースキャピタルが組成する第1号ファンドへの出資を発表。自らの経験を元に、具体的かつ現実的なサポートを提供する。
デジタルベースキャピタルが組成する第1号ファンドは、不動産と金融領域のシード期のスタートアップを対象にしたもの。最大10億円規模で、出資者として、イタンジの創業者である伊藤嘉盛氏や平和不動産らが名を連ねる。
デジタルベースキャピタル 代表パートナーの桜井駿氏は「リアルとテックの両方を手掛ける不動産ビジネスで、(創業6期目で)すでに201億円の売上実績を持つGAテクノロジーズに出資していただけるのはすごいこと。スタートアップの方たちに大きな学びがあると思う。2018年にはイタンジを買収し、M&Aの経験もある。傘下に入ったイタンジは事業を伸ばし、シナジー効果をきちんと出せたという意味でも、日本では数少ない成功事例。一連の取り組みはスタートアップが最も知りたいことの1つであり、サポートしてほしいと考えているはず」と、GAテクノロジーズが参加する意義を話す。
GAテクノロジーズでは、クロステック領域の知見を生かしたスタートアップ投資事業「GA FUND」を実施しているが、ファンドへのLP出資は今回が初めて。「個々での取り組みはキャッチアップできる範囲が限られる。幅広く情報を持っているデジタルベースキャピタルと組むことで、より多くの情報を得たい」(GAテクノロジーズ 代表取締役社長CEOの樋口龍氏)と期待を寄せる。
出資先の対象範囲は、不動産と金融領域としているが「生活の周辺領域のすべて。例えば、フードデリバリーが普及することで、ゴーストキッチンが必要になるなど、場所の使い方は変わってきている。そうした周辺領域に着目して、盛り上げていくビジネスを応援したい。利用者の暮らしがよくなるテーマであれば、投資していく」(桜井氏)と、広く捉える。
樋口氏も「不動産を起点とした周辺事業は数多い。GAテクノロジーズでも、建設や保険、金融という分野も視野に取り組んでいる。今までの不動産事業はその中だけで閉じられていたが、生活者の観点で捉えるべき」と、不動産業にとどまらない発展を望む。
両氏が強調するのは「PropTech(プロップテック)」という言葉。Property×Technologyの造語で、リーテックや不動産テックなど、さまざまな呼び方のあるこの市場での定着を目指す。樋口氏は「日本では言葉すら固まっていない状況だが、グローバルではプロップテックの呼び名がスタンダード。GAテクノロジーズはこの市場のリーディングカンパニーとしてやってきたという自負もあり、社内外にプロップテックを浸透させていきたい」と意気込む。
プロップテックに特化したファンドとして、GAテクノロジーズをはじめとする不動産業に従事する企業からノウハウを学べるほか、メンタリングを受けられるなど、スタートアップへは手厚いサポートを用意する。「経営全般の立ち上げ時の課題の共有はもちろん、エンジニアの採用や育成にどう取り組んでいくかなど、リアルな悩みを解決できる場を提供したい。将来的には、ノウハウを共有するとともに採用イベントを実施するなど、1社では難しいことにも取り組みたい」(桜井氏)と、今後の展開を見据える。
樋口氏は「不動産会社はテックに弱く、IT企業は不動産のリアルに弱い。不動産テックは両方の事業なので、その2つを掛け合わせることができず成長できていない企業は多い。GAテクノロジーズはリアル、テックの両方にノウハウがあり、その部分でお役に立てるはず」と、自らのノウハウを提供する方針だ。
「スタートアップが新市場を作るのは簡単ではない。私たちも今、まさに戦っているところ。そうした同じ志を持っている人が多ければ多いほど、不動産業界にとってはプラスに働く。一緒に戦う仲間を増やしたい」(樋口氏)とした。
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