日本マイクロソフトは8月30日、新規事業創生やビジネス化に向けた出会いを目的としたイベント「Microsoft Innovation Lab 2019」を開催。大企業とスタートアップが一堂に会するなかで、一線で活躍するベンチャーキャピタリストたちによる「新興ファンドが狙う新しいスタートアップ支援の形とは」と題したセッションが開かれた。
国内でのベンチャーに対する資金調達額が増加するなか、投資側にも多様なプレイヤーが増えてきている。各社はどのような特徴を持ち、スタートアップへの支援を展開していくのか、直近に立ち上がった新興ファンドの代表が語った。パネリストは、STRIVE 代表パートナーの堤達生氏、Coral Capital Founding Partnerの澤山陽平氏、XTech Ventures共同創業者/ジェネラルパートナーの西條晋一氏の3名。
モデレータを務めたW ventures 代表パートナーの東明宏氏は、「最近新しいVCが次々と立ち上がっているが、色々な個性が出てきている」とVC界隈の状況を説明。W ventures自身も、新和博氏と共に4月に設立した新興ファンドで、50億円のファンドを組成し、ライフスタイル・エンターテインメント・スポーツ分野を中心とした、シード・アーリー期を中心としたBtoC / BtoBtoC事業のスタートアップに投資を行っている。
西條氏は、伊藤忠商事を経てサイバーエージェント(CA)にて新規事業の立ち上げや担当役員、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の社長などを経て独立。WiL共同創業者ジェネラルパートナーとして、大規模ファンドでレイターステージへの投資やソニーとの合弁会社であるQrioの経営を経験。2018年にXTech Venturesを創業した。
XTech Venturesの特徴は、「ミドル起業家」をターゲットにしていること。「企業で業務経験を5〜10年積んでいる人とか、1回起業してイグジットしているシリアルアントレプレーナーがメインのターゲット」(西條氏)だ。「日本は若手が多いが、起業先進国ではミドル起業家が多い。経験を積んだ人のほうが成功確率は高いはずなのに、日本の場合は35を超えると起業する人があまりいない」という現状に一石を投じている。
澤山氏は、2016年にシリコンバレーのベンチャーキャピタル500 Startupsの日本向けファンドである500 Startups JapanをJames Riney氏と共に立ち上げ、2019年3月にCoral Capitalにリブランディング、新たに60億円のファンドを立ち上げている。「シードでまだ従業員2〜3人とかファウンダーだけ、プロダクトもできているかどうかというタイミングで最初の2000〜3000万円を投資する」(同氏)。独自の取り組みとしては、起業者やスタートアップ転職希望者向けの記事の配信や、投資先の合同企業説明会を実施している。
堤氏は、独立系VCのグローバル・ブレインから一旦実業の世界に身を投じ、西條氏のもとCAで金融新規事業、VC事業の立ち上げを経験。さらにリクルートとグリーでCVCを設立、独立して5月には150億円規模の新ファンド「STRIVE」を立ち上げた。「投資はシリーズAが中心で、数億円投資をするスタイル。リードで入ることを原則にしている」という。
当然VCの役割は投資をするだけではない、支援の形もそれぞれだ。西條氏は、投資先に事業経験者が多いので“任せる”というスタンス。「投資家と起業家というよりは事業家と事業家、同じ経営者として寄り添っているという感じ」と語る。
澤山氏は、基本的に任せることが多いが、特徴なのは「ハンズイフ」という形。支援の形には、べったり寄り添う型の「ハンズオン」と、西條氏のように起業家に任せる「ハンズオフ」とあるが、Coral Capitalは「もし何かあったらしっかりサポートする」というもの。投資した相手とはFacebookのメッセンジャーでグループを作り、ファウンダーと直通のやり取りをしていて、何かサポートが必要な時に手厚く支援をする。さらに社内に採用やPR支援の専門チームがあり、投資先が増えても大丈夫なようにスケーラブルなサポート体制で組織的に対応しているのも大きな特徴だ。
堤氏の場合は「典型的なハンズオン」だ。投資の考え方として、「自分がこうしたいという課題を解決したいというのが先にあって、それを解決したいという起業家を探して投資をしている。だから一緒に事業を作っていくスタイルになる」という。
続いて、それぞれが大切にしていること。西條氏は、自分が最初に起業したときに、知っていれば回避できたり時間が節約できたりすることがあった経験から、「知っておくといいことは事前に伝えることは大事にしている」という。例えば、成長フェーズでは、50人くらいの規模になったら人事の責任者が1人必要であったり、顕在化しない不満がたまることやインセンティブの設定方法など組織づくりで発生する問題を指南する。
澤山氏が大切にするのは、投資先同士のコミュニティづくりだ。「どうしても起業家は投資家にも悩みを話しにくい。なので起業家同士が横で話し合えるところを作る」というもの。具体的には、オフラインのミーティングの場所や、オンラインでの情報共有の場を提供。さらには家族も含めたバーベキューパーティを開催したりもするという。
堤氏は、「常にファーストコールがかかる存在でありたい」と語る。そのために、「ギブ・アンド・ギブ。投資して100日間の間にギブし続ける」という。例えばtoBの場合一緒に営業に行ってお客さんを引っ張ってくるなど寄り添う。そうやって信頼関係を築いていくという。
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