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要約サイト「フライヤー」が出版業界にもたらした本の新たな入り口 - (page 2)

加納恵 (編集部)2019年09月24日 08時30分
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要約は本を読む入り口、楽しては作れない

――収益は会員からの月額課金が主ですか。

 会員の方から利用料をいただくことで運営しています。会員は無料と有料の2つを用意していて、有料会員は、ひと月5冊まで閲覧できる「シルバープラン」(月額税別:500円)と毎月30冊前後の新たに追加される要約が読み放題とこれまでに掲載した要約をすべて閲覧できる「ゴールドプラン」(同:2000円)があります。加えて法人サービスも開始していて、最近ではこちらの利用が徐々に伸びています。

 フライヤーの開始にあたっては、海外の要約サイト「getAbstract(ゲットアブストラクト)」や「Blinkist(ブリンキスト)」を参考にしたのですが、これらのサービスでも法人向けがあります。長期的に伸びていくのはこちらかなという印象もあり、起業した当初から、法人向けサービスも考えていました。

 法人向けでは、人材開発や育成を進める中で、学びの機会を提供する、新しい考え方に触れることで、想像力を刺激する、といった目的から導入していただくケースが多いです。

――競合も海外サイトとお考えですか。

 国内で現在意識しているところはないですね。近しいコンセプトを持ったサービスはありますが、まとめ方や意図するところは異なります。要約の事前チェックもかなり丁寧に進めさせていただいていますし、許諾も1つずついただいています。新たに同様のサービスを始めようとすると、かなり時間がかかると思います。

――どのような流れで作られているのでしょう。

 毎月約40社を数える出版社の方とミーティングをして、これから発売される本について教えていただきます。また、書店の方にどんな本が注目されているのかを聞いたり、ネット上の売れ筋ランキングなどの情報を統合したりして、話題になっている本のリストを作成します。社内には大学の先生や著者、出版関係者などの方で構成する選書委員会を設けていて、そこで月に2回、現在どんな本が評価されているのかなども見定めます。

 こうした工程を経ることで、会員であるビジネスパーソンにとって価値の高い本の要約を届けられるようになります。この後、紹介した本の出版社の方に相談し、許諾をいただいて要約を作成します。

 要約は、紹介するジャンルに精通したプロのライターが担当しており、出来上がったものを社内の要約ライターが同じ本を読み直して、内容をチェック。その後出版社の方と著者の方の確認を経て公開しています。現在、外部の協力ライターの方50人ほどにお願いしています。

――かなり手の込んだ作りですね。

 先程も申しましたが、要約とはいえ読者の方にとっては貴重な読書体験ですし、本を読む入り口になりますから、楽をしてはいけないところだと思っています。私自身、本は必ず誰かを救い、人生を変える1冊になると思っていて、フライヤーはビジネスパーソンにとって、価値の高い本を紹介しないといけません。そのためには、これだけの工程が必要になります。

――今後の展開を教えて下さい。

 新たな取り組みを3つ考えています。1つは読書会で、オンライン、オフラインを問わず、本について語り合える場所を提供したいと思っています。読書会と聞くとハードルが高そうに思われるかもしれませんが、要約を読んでいれば参加できる、裾野を広く捉えた形にしていきたいと思っています。

 2つ目は、ネットを使って学びあえる環境を作りたいと思っています。「ソーシャルリーディングプラットフォーム」という名前で、友人知人が読んだ本に対してコメントしたり、読んでいる本がわかったり、可視化できたりする仕組みを作りたい。SNS的なプラットフォームですが、承認欲求ではなくて知的好奇心を満たす空間にしたいと考えています。

 3つ目は、国をまたいだ知の流通です。今、日本の本は台湾や中国の書店で翻訳書として人気を得ています。この逆も同様で、海外の本、今はまだあまり翻訳されていない東南アジアの書籍などが日本に入ってくると思っています。この時に要約を手掛けることで、よりスムーズに翻訳書を紹介したい。これはかなり長期プランではありますが、将来的にはフライヤーをグローバルなサービスに育てていきたいと思っています。

 フライヤーを立ち上げて約6年が経ちましたが、想定通りにいったことは一度もありません。考えてもいなかった課題がどんどん出てきて、思っていた以上に大変でした(笑)。ただ、起業してから方向性は変えたことは一度もなく、歩みを進めるほど具体的になってきたように感じます。読者、出版社の方、著者、書店の方、そして自分自身が要約になにを求めるのかを見極め、今後もサービスのブラッシュアップに取り組んでいきたいと思っています。

 

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