電動キックボードのシェアリングサービス「mobby(モビー)」を展開するmobby rideが、自治体では2例目となる体験会を8月9日に神戸市のメリケンパークで開催した。
神戸市では、スタートアップとの協働により社会や行政の課題を解決する、スタートアップ提案型実証実験事業「Urban Innovation KOBE +P(アーバンイノベーション神戸プラスピー)」を2018年10月より実施している(「+P」はプロポーザル<提案>の意味)。mobby rideからの提案は本事業の第3号にあたる。電動キックボードも含めた新たなモビリティサービスや移動手段を整備し、回遊性向上や持続可能な交通網の実現を目指す神戸市の課題解決につなげることが目的だ。
神戸市の中心である三宮から元町のエリアは、電車やバス、地下鉄、さらに電動自転車を利用したシェアライドサービスの神戸コミュニティサイクル「コベリン(こうべリンクル)」が運用され、公共交通は十分なように見える。だが、海側の移動手段が少なく、メリケンパークから隣接するハーバーランドなどへの移動が難しい。電動キックボードであれば自転車より手軽に、短い距離を素早く移動することができる。
体験会は乗車条件として、身長は120〜200cm、体重は25〜100kg、年齢は16歳以上60歳未満を推奨とあったが、無料で事前予約は不要だったこともあり、10時から16時までの間に100人以上が体験した。アクセルとブレーキの使い方、乗り始めにキックして加速する必要があるという説明だけで、誰でも簡単に乗ることができる。ほとんどの人が電動キックボードに乗るのは初めてだったが、乗れなかったという人はおらず、転倒するといったトラブルもなかったという。
筆者も実際に乗ってみたが運転はとても簡単で、小回りもしやすく、ブレーキはじわりとゆっくり効くので止まる時もバランスを保ちやすかった。狭いエリアでの体験だったため最高速度は時速10kmに制限されていたが、思った以上にスピードが出る印象だった。他に乗っていた人たちからは、乗り降りが楽、スカートでも運転しやすい、思ったより安定感がある、といった感想が聞かれた。
mobbyの車体はセグウェイを買収した中国のNinebot製で、最高時速は20km程度出せる。タイヤが小さいため自転車より凹凸を感じやすいが、ハンドルの根元にあるサスペンションが衝撃を吸収してくれるという。ただし、坂道の多い神戸ではやや利用が難しいかもしれないため、運用にはそれらも含めた検証や利用エリアの検討も必要になりそうだ。
電動キックボードのシェアサービスは、国内では4月にベルリンを拠点とするWind Mobilityの「WIND」が埼玉高速鉄道の浦和美園駅で公道サービスを開始している。原動機付自動車扱いのため免許が必要だが、Mobbyでは自転車扱いでの運用を目指している。mobby rideのビジネスを担当する安宅秀一氏は、「電動キックボードで車道を走るのは現実的ではないので、歩道を走れる自転車で許可を取ることが理想。そのためには公道での実証実験が必要になるので、ぜひ神戸で実現したい」と話す。
また「mobbyは東京よりも福岡市や神戸市のように、公共交通はあるけれど街の規模に対する移動がやや不便という地域に向いていると考えている。これから規制を変えるのは難しく、ベンチャーなので出来ることも限られているが、できれば2年後に公道でのサービス実用化を目指したい」としている。自治体から体験会を開催する要望は増えており、次は浜松市での体験会も予定されている。
一方でmobby rideでは電動キックボードに限らず、移動サービス全般を視野に入れた動きをしていくという。その第一歩としてmobbyが街の移動手段として確立されるのか。これからの動きに注目したい。
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