メルカリは8月8日、2019年6月期通期の決算を発表した。連結の売上高は、516億円8300万円(前年比で44.5%増)、営業損益はマイナス121億4900万円(2018年6月期はマイナス44億2200万円)、当期純利益はマイナス137億6400万円(同70億4100万円)。国内外合わせたGMV(流通総額)は5307億円となり前年比で43.2%の成長を果たした。
主力事業であるフリマアプリのメルカリ事業と中心に同社では、キャッシュレス決済のメルペイ事業、米国のメルカリ事業の3本を柱にビジネスを展開している。同社ではこれまで、シェアサイクル「メルチャリ」など複数の新規事業を手掛けてきたが、2019年6月にはメルチャリ運営のソウゾウを解散したほか、英国のメルカリ事業からも撤退するなど、選択と集中を進めている。
国内メルカリ事業は、売上高が462億円と前年比で38.4%の増加。営業損益も94億円(メルペイに移管した手数料収益を換算した調整後の損益)とこちらも前年比で28.0%の増加を実現している。GMVが4900億円と前年比で41%増加。MAU(月間アクティブユーザー数)は、1350万人と同26%増となった。年代別では、50歳以上のユーザーが前年比で約6割増加したという。なお、クオーターごとで見ると、第4四半期のみ第3四半期から38億円ほどの落ち込みが見られるものの、GWの10連休や流通する商品の多くがファッション系であり、季節性の変動が要因と説明している。
メルペイ事業は、登録ユーザー数が200万人を突破。同社では、メルペイを3つのフェーズに区切っており、先行投資の第1フェース、メルカリとのシナジーを目指す第2フェーズ、収益化を確立する第3フェーズに分けている。同社取締役社長兼COOの小泉文明氏は、「今は第1フェーズと第2フェーズの間。徐々にメルカリとシナジーを起こし、後払いなど金融サイドから行動を変えていきたい」とした。また、他社との差別ポイントとして、“メルカリを持っていること”を強調。「銀行口座の登録はハードルが高いが、私たちは物を売るとウォレットに入金される。後払いサービスも提供し、新しい体験によって独特なポジションを確立するのでは」とした。
加熱するキャッシュレス市場だが、直近では7Payのサービス停止などキャッシュレス決済自体に不安を覚えるユーザーも少なくない。メルカリ代表取締役会長兼CEOの山田進太郎氏は、「セキュリティは非常に重視している。他社より遅れてローンチしたのはセキュリティに力を入れたため」とし、「本人確認も実施しているし、キャッシュレス委員会のガイドラインにも準拠している。さらに、近日中には多要素認証も加える予定」と対策強化を説明した。
米国事業は、年間の流通総額が3億6000万ドル(約382億円)と前年比で70%増を実現。MAUも200万人(前年比34%増)を突破したという。前年同様のマーケティング予算でありながら、高い成長率を実現したとする。今後も、月間GMV1億ドルを目標にプロダクトの改善やテレビCMなどの大規模プロモーションを実施し、認知度向上を狙う。山田氏は、「われわれとしては米国でドラスティックに成長しているが、これから角度を変えて成長したい。メルペイ含めて今年は勝負の年になる」と説明。その後の投資スタンスについては、「上場時から規律のある投資を続けていきたいと説明した。昨年もさまざまな事業を閉じたが、今年も慎重に見極めていきたい」としつつ、「(月間目標GMVを)達成しなければ即撤退というわけではない」と米国事業の継続的な投資を強調した。
2019年も大幅な赤字となった通期業績だが、山田氏は「従前から申し上げているが、短期的な収益性よりも中長期の成長を目指している。米国事業やメルペイが順調に拡大しているので継続していきたい」としつつ、「成長している限りという条件付き。米国事業は100ミリオンを目指す、メルペイも主要KPIを見ながら進めている。成長していないなら投資を弱めるし、成長するなら更に投資することも大事。短期的に赤字を出していることにご指摘もいただくが、上場企業として成長することにも責任があるので成長重視してしばらく経営したい」と理解を求めた。
また、先日発表した鹿島アントラーズの買収だが、その狙いについて小泉氏は、顧客層の拡大、ブランド力の向上、ビジネスの創出を挙げる。メルカリは、20〜30代の女性がメインユーザーだが、より上の年代や男性ユーザーへの認知が可能になるとする。小泉氏は、「テクノロジーとエンタメの掛け算は大きくなる可能性を秘めている。地域経済、ローカル経済にも5Gが浸透すると、新しいビジネスが生まれる。鹿島地域を実証実験の場にしたい」と地域貢献を含めた意気込みを述べた。
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