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資金の代わりにクリエイティブを“投資”する--スタートアップ特化の専門家集団「NEWS」

山川晶之 (編集部)2019年08月13日 12時00分
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 スタートアップならではの特徴はさまざまだが、大企業では実現できないスピード感をもって今までにないサービスを提供し、新しい価値やライフスタイルを世に問いかけるのが側面の一つとしてあるだろう。しかし、そのサービスが最先端であるほど、社会にうまく伝わらないままになってしまうケースは少なくない。

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(左から)NEWS共同創業者であるNEWPEACE代表の高木新平氏、梅田哲矢氏、monopo代表の佐々木芳幸氏

 これを解決するために必要となってくるのが、広告やプロモーション、コーポレート・アイデンティティ(CI)といったクリエイティブやコミュニケーションの力だ。スタートアップが描く構想を、広く伝わるようにビジュアルやコミュニケーションに落とし込むことで、「最先端=未知のもの」としてネガティブに捉えられがちな新技術やサービスを、より身近なものとして感じ取れるようにすることができる。

 しかし、クリエイティブの力をスタートアップが手に入れるには、これまでだとなかなか難しい状況があった。日本でのスタートアップ支援は、ベンチャーキャピタルなどが浸透してきたことで、資金調達やビジネス、テクノロジーに関する相談の環境は手厚くなってきているものの、こと、クリエイティブに関しては、グローバルで活躍するような第一線級のクリエイターに依頼しようとすると、スタートアップのコスト感では頼みづらい現状があった。

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 そこで、梅田哲矢氏、行政や企業のビジョン構築を支援するNEWPEACE代表の高木新平氏、クリエイティブ・エージェンシーmonopoの代表を務める佐々木芳幸氏の3名が共同で立ち上げたのが、「クリエイティブ・キャピタル」ことNEWSだ。同社は、キャシュの代わりにスタートアップの“将来性”を報酬として、PRやブランディング、コミュニケーション、マーケティング、クリエイティブをトータルで支援する。シード期やシリーズAなどのスタートアップに特化しており、クリエイティブ版ベンチャー・キャピタルと考えるとわかりやすいかもしれない。

 メンバーは、コピーライター、編集者、戦略コンサルタント、ビジネスデザイナー、コンテンツプロデューサーなど総勢11名。パートナー企業ごとに最適なメンバーをアサインする。メンバーそれぞれが自立したクリエイターであり、第三者視点を持ちつつストックを持つことで当事者意識を持ちながらの支援が可能になるとする。もちろん、ストックゆえ上場すれば大きな見返りが期待できるものの、無に帰す可能性もある。梅田氏は「だからこそ、まだ誰もできていなかった」と語る。

スタートアップの100万円と大企業の100万円は重みが全く違う

 梅田哲矢氏は、世界的な広告賞を多数受賞するなど、日本を代表するグローバルブランドに携わるクリエイティブディレクターだ。

 そんなクリエイターとして第一線で活躍する梅田氏だが、スタートアップが持つダイナミズムに魅力を感じるという。「スタートアップとの仕事を通して、実際に社会に貢献しているとか、世の中が前に進んだという実感が大きい」。そこで、「やりがいのある仕事ができる集団があれば」と、1年ほど前からNEWS設立の構想を練ってきた。

 一方で、このダイナミズムを社会に対してうまく翻訳することも重要だ。高木氏は、「新しいテクノロジーが浸透しても、それが人から雇用を奪うものになるのか、新しい豊かさになるのかはイメージ次第」とした上で、「過疎地域など公共交通機関としての自動運転の打ち出しが前向きに捉えられている一方で、ドローンの落下事故で規制が強まったり、ライドシェアへの反対など、ビジネスチャンスや産業自体を失うこともある」「テクノロジーの希望の側面を見せることもコミュニケーションの仕事。イメージ一つでマーケットが生まれたり、職業のイメージが変わる」と語る。

 必要性が高まるコミュニケーションやクリエイティブの力だが、起業時からマーケティングやプロモーション、コミュニケーションなどを練り込むことで、ブランディングの向上であったり、海外展開でも有利に働く。こうした相談は、3名ともに日頃から多く舞い込んでいるようで、「クオリティの高いメンターのニーズはひしひしと感じていた」(梅田氏)という。

 しかし、ここで一つ課題となるのが、先述したとおりスタートアップとのコスト感の違いにある。「スタートアップの100万円と大企業の100万円では重みがぜんぜん違う」(梅田氏)。

 そのため、報酬をキャッシュからストックに代えることで、現在の企業価値ではなく将来的な価値からリターンを得る形をとった。各メンバーがプロフェッショナルとして主たる収入源を持っている分散型組織を構築したのは、価値がゼロになってしまうストックのリスクを吸収するためでもあるという。「ストックは揉めるとよく言われるが、最悪紙切れになってもいいという割り切りができる」(梅田氏)。

 また、大手企業などとのクライアントワークにありがちな、「依頼を受けてから数ヶ月練って提案する」スタイルだと、スタートアップでは企画自体がなくなっていることも少なくない。そのため、メッセンジャーなどで連絡を取りつつ、メンタリング含め会社と並走するなど、ベンチャーキャピタルのように長期的な支援を目指す。

 こうした特徴から、シード期やシリーズAなどの“走り始めたばかり”のスタートアップを対象に据える。高木氏によると、NEWSの活動は「エンジェル投資家に近い」という。「(大型調達など)ある程度のフェーズだと、コミュニケーションを外注することもできるが、(シード期などの)スタートアップではその資金がない」「むしろ、コンテンツや広告にお金を使うべきではない。プロダクトに集中した方がいい」(高木氏)と、資金やリソースに余裕がない、成長フェーズに入る手前のスタートアップをフォローする。

 なお、クリエイターは国内だけでなくmonopoに在籍しているフランス人やイギリス人など国外のリソースもアサイン可能。シード期のスタートアップでも、海外目線で効果的な企業名やサービス名など、真のグローバル目線でのクリエイティブを提供できるという。佐々木氏は、「グローバル化は最初から練り込むべき。行動で示すのではなくアイデンティティにしないといけない」と述べており、国内だけでなく海外を目指すスタートアップにとってもありがたい存在だろう。

クリエイターはやりがいを求めている

 なお、梅田氏はNEWSの取り組みの検証も兼ねて、Instagramメディア「古着女子」などを展開するyutoriの社外取締役として、バーチャル・インスタグラマーに特化した事務所「VIM」の立ち上げに関わっている。yutoriは、「コンプレックス」を掘り下げることで、古着女子など次々とファッション業界にアップデートを仕掛けている。バーチャル事業でもこのテーマを継承し、CGと現実の境界を曖昧にすることで、加工しているかどうか、スッピンかどうか、美容整形かどうかなど、人々を縛る価値観をディスラプトするとしている。

 梅田氏は、バーチャルモデル事業のグロース、ファッション業界など梅田氏が持つリレーションも提供するなど、yutori代表の片石貴展氏をサポートしている。

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「NEWS」に参画するメンバー

 NEWSの枠組みは、スタートアップだけでなくクリエイターにとっても関心が高いものだという。

 広告代理店などクリエイターの多くは、クライアントワークに従事している。しかし、担当する商品やサービスのプロモーション立案だけでは、日々の仕事にやりがいや社会的意義を感じにくくなっている人もいると佐々木氏は指摘する。「高木が、NEWPEACEの案件で広告代理店などの若手クリエイターとスタートアップのプロジェクトを行うのを見て、monopoでも試してみたんです。彼らとスタートアップの経営者引き合わせることで、より事業に近い本質的なプロジェクトが生まれ、めちゃくちゃいい仕事になり双方感動していました」「実力はあるのに、構造によってその機会がなかった」(佐々木氏)。

 NEWSによって、クリエイターが持つ熱量をもっと社会変革の挑戦に向ける取り組みになりそうだ。

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