アスクル、ヤフーに提携解消を申し入れるも「協議は不要」と拒否--LOHACO譲渡に関連か

 ヤフーによるアスクル岩田社長の再任阻止に対し、アスクルは7月17日、ヤフーとの業務・資本提携関係の解消に関する協議を申し入れたと発表した。さらに、ヤフーはこの申し入れに対し「業務・資本提携関係の見直しについての協議は不要」とプレスリリースを掲載した。

 これは、アスクルが8月2日に開催を予定している定時株主総会の取締役選任議案において、1997年から代表取締役社長を務めている岩田彰一郎氏の再任に、ヤフーが反対の議決権を行使するとの動きに関連するもの。ヤフーでは、アスクルの営業利益(2018年5月期)が前年度を50%下回る約41億円になったことに加え、2019年5月期は従来の通期業績予想から営業利益を25%下回る約45億円、純利益は89%減の約4億円になるなど業績の低迷が続いていると指摘。

 BtoB事業の売上成長率が鈍化傾向にあり、ヤフーと共同運営するBtoC事業(LOHACO事業)では収益改善が見られず、2019年5月期は約92億円の赤字と損失が拡大しているとし、「現在のEコマース市場の環境下における岩田社長の事業計画の立案力および事業計画の遂行力に疑問を抱くに至りました」とヤフーはコメント。さらに、アスクルの第二株主であるプラスもヤフーの考えに賛同すると発表している。

アスクル「両社でのBtoC事業の成功という目的達成は困難と判断」

 これに対しアスクルでは、提携解消の申し入れにいたる経緯を説明。2012年に両社の協力体制でスタートしたLOHACO事業だが、2019年1月にヤフーからアスクルに対し、LOHACO事業の譲渡に関して検討するよう要請があったという。アスクルでは、2月に独立役員会および取締役会の審議を経て、ヤフーへの譲渡提案を実施しないことを決定し回答していた。その時、ヤフーからは真摯かつ誠実な検討に感謝する旨の返答があり、その後検討依頼はなかったという。

 6月27日に突然、ヤフー代表取締役社長の川邊健太郎氏がアスクルに訪れ、岩田氏への退陣要求と、定時株主総会での岩田氏再任に反対するとの意向表明があったと説明する。アスクルでは、ヤフーとの経営思想の違い、業務・資本提携で合意したイコールパートナーシップ精神の喪失、上場企業としての独立性の侵害が顕著だとの観点から、両社でのBtoC事業の成功という目的達成が困難と判断。提携解消を申し入れたとしている。両社は、2012年4月に業務・資本提携を締結し、ヤフーはアスクルの議決権を保有する筆頭株主(提携時は42.47%、現在45%)となっている。LOHACOは、同業務・資本提携にもとづく事業としてスタートしている。

 なお、ヤフーでは“低迷”と指摘していたアスクルの2020年5月期連結業績は、営業利益88億円(前期比194.7%)の増益を見込んでいるという。2018年12月14日に発表したLOHACO事業戦略(事業再構築)に従い、LOHACO オリジナル商品の開発、メーカーとの協働による独自価値商品の開発強化、配送料無料になる注文金額の値上げなどの戦略シフトにより、2019年5月期の第3四半期から第4四半期にかけてLOHACO事業を含むEC事業の営業利益は順調に拡大していると主張する。

 アスクルでは、「2017年からの物流センター火災、宅配クライシスの影響を完全に克服し、当社のBtoB事業、BtoC事業、ロジスティクス事業の3事業のシナジーを最大化するECの実現に引き続き邁進していきます」と公開情報にてコメントしている。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]