アマゾンジャパンは6月20日、社会や企業が抱える課題をテーマに取り上げ、その解決策について産学官の各視点から話し合うイベント「Amazon Academy」を、中小企業向けに開催した。
第2回となる今回のテーマは「グローバル経済の潮流、世界での成功の鍵となる中小企業のためのビジネスソリューション」というもので、中小企業の海外支援策などが語られたほか、アマゾンの日本における中小企業ビジネスに関する新たなデータが公開された。
その内容は、ECサイト「Amazon.co.jp」に出品している中小企業の数が15万社を超えていることや、中小企業による2018年の流通総額が9000億円におよび、1分あたり約600個の商品が売れていること。また、中小企業の出品事業者が拠点を置く県の中で、最も成長率が高いのは島根県であることなどが明らかにされた。
同日に、アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長に単独インタビューする機会を得た。同氏が考える日本の中小企業の強みや課題、またアマゾンのこれまでの中小企業向けの支援策や今後の展望について聞いた。
——ジャスパーさんは2001年からアマゾンジャパンの社長を務めていますが、グローバルと比べた日本の中小企業の強みと課題はそれぞれどこにあると考えますか。
やはり日本の中小企業は品質に強いこだわりを持っています。それは商品だけでなく、配送や顧客への対応などもそうです。そうした品質については、グローバルと比べてとても優れていると思います。弊社の社員の姿を見ても同様で、勤勉さや働き方については世界基準でも高い水準だと思います。
その一方で、日本の中小企業の生産性については、OECD(経済協力開発機構)の加盟国の中でも平均より10%も低く、悪循環に陥ってしまっています。そこに対してより最先端のテクノロジーを投入して、中小企業の皆さんが、自分たちの強みである商品の開発やマーケティングに集中できる環境を作ることが非常に大切だと思います。
もう1つの課題は、海外マーケットへの展開です。アマゾンでは、なるべく簡単に日本の出品者の皆さんが米国や欧州、中国などでも自分の商品を販売できる仕組みを設けているのですが、日本の中小企業の中で、積極的に使っていただいている企業はまだ少ないです。
例えば米国では、アマゾンの作ったこの仕組みを使って、日本や欧州、中国などに展開している中小企業の事例はたくさんあり、それに比べると日本の中小企業の皆さんは、まだまだ保守的な考え方が強いと思っています。テクノロジーを活用して、グローバル展開できるような戦略や企画をもっと大胆に出していってもいいのではないかと思います。
——グローバルにおける、中小企業を含む販売事業者がアマゾンで販売した商品の流通総額の割合が、過去20年間で3%から58%に増加したそうですが、その要因は何だと考えますか。また、アマゾンはどのような支援をしてきたのでしょう。
一番大切なのは、やはりマーケットプレイスという仕組みだと思います。誰でもすごく簡単に出品できる仕組みを作ることができたことで、販売事業者の皆さんは、店舗などを気にせずに、すぐにオンラインで商品を販売できるようになりました。
それに加えて、数年前からは「フルフィルメント by Amazon」(FBA)など、配送や物流に対して膨大な投資をして、これらをすべて中小企業の皆さんにオープンにしました。これにより、自社の商品をアマゾンの倉庫に預けていただくだけで、注文が入った後の配送やカスタマーサービスなどのアフターケアをすべて我々が担います。つまり中小企業の皆さんは強みである商品開発などに集中できるのです。
そして、大切なのはそこからさらにグローバル展開できるようにすることです。アマゾンの海外配送サービスによって、日本国内だけでなく、67カ国のユーザーの皆さんが、Amazon.co.jpにアクセスして、買い物をすることができます。さらに、自動翻訳などのサービスによって、中小企業の皆さんがすぐに世界市場に展開できるような仕組みを設けています。
——アマゾンがこれだけの数字を公開するのは珍しいと思うのですが、なぜこのタイミングでデータを公開したのでしょう。
特に大きな理由はありません。どうやったらアマゾンにおける中小企業の重要性や支援を具体的に説明できるかと考え、いい材料があればということで、本当にそれ以上の大きな理由はないですね。
——今後はどのようにして中小企業をサポートしていくのでしょうか。
まず、我々のミッションである、お客様を一番大切にする企業であるというところには、中小企業のニーズも含まれています。これからも、中小企業にどのようなニーズがあるか、またどんな問題点があるのかということをどんどん理解していって、もっと改善できるところには継続的に投資していきたいと思っています。
特にECの出品などに対しては、さらなるテクノロジーへの投資をして、より低コストで利用できるようにしたり、(法人向けECの)「Amazonビジネス」によって、様々な複雑なプロセスをなくし、生産性を上げていただきたいですね。Amazonビジネスは、今後より品揃えを増やし、機能も改善していきたいと思います。
もう1つ大事なのは(クラウドサービスの)AWSですね。AIやロボティクス、マシンラーニングなどを、生産性に効果があるところに適用し、もっと中小企業のニーズに合うような提供の仕方で届けたいと思います。
また、中小企業の皆さんが、もっと大胆にテクノロジーを試していただけることが大事だと思います。(コワーキングスペースである)「AWS Loft Tokyo」では、アマゾンのエンジニアがすべてサポートしますので、ぜひ気軽にどうすればいいのかを聞きに来ていただければと思います。
——最後に、今回のテーマとは逸れますが、ジャスパーさんがよくアマゾンで買う商品や、プライムでよく使うサービスがあれば教えてください。
頻度でいうと消費財ですよね、サプリメントとか。あと、私には11歳の子どもがいるのですが、彼のシューズとか色々なものを買っていますね。最近だと運動器具を買いました。
プライム系サービスは、我が家では(スマートスピーカーの)「Amazon Echo」を使っているので、ミュージックは常にBGMのような感じで流れていますし、映画の「ミッション:インポッシブル」が好きなので、プライム・ビデオで全シーズンが揃っているのは凄く嬉しいですね(笑)。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果