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Facebook主導の仮想通貨「Libra」とは何か--“統一通貨”が実現する未来と課題 - (page 3)

田上智裕(techtec代表取締役)2019年06月24日 13時30分
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 グローバルに共通化された通貨が登場すると考えると、そのインパクトは計り知れないものになる。例えば外国に旅行する際に、Libraを使ってBooking.comで航空券やホテルの予約ができ、現地ではUberやLyftで移動。もちろんLibraで決済し、帰国後の両替で小銭が残るなんてことを気にする必要もなくなる。

 世界統一通貨のインパクトは、開発途上国でもその価値を大きく発揮することになるだろう。

 開発途上国で暮らす人々の多くは、金融機関へアクセスするための手段を持っていない。そのため、国外へ出稼ぎに出ても実家へ仕送りできなかったり、できたとしても国際送金の手数料により仕送り額の大半を失ったりしている。Libraを利用することで、国境を越えて非常に安価な手数料で国際送金が可能になる。

 Libraを送金するには、専用のデジタルウォレットである「Calibra」を使用する。このウォレットは、Libra協会のメンバーであるFacebookの子会社であるCalibraが提供するもので、スマートフォンさえあれば誰でもLibraの送金が可能になる。このCalibraウォレットがあれば、銀行口座や預金通帳、クレジットカードなどを代替することができ、将来的には全て不要になるだろう。

 また、ベネズエラやアルゼンチンなどのように、自国の通貨が高いインフレ率に悩まされている場合にも、グローバル通貨Libraは救いの手となるだろう。自国の通貨を信用できない人々にとって、より実需のあるLibraを受け取りたいと考えることは自然な流れであるといえるからだ。

Libraには課題が山積み

 一方で、Libraには課題も山積みだ。中でも最も大きな点は、やはり「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策」(AML/CFT)であろう。

 国境を越えて資金が移動することになるため、マネーロンダリングへの対策は必須であるといえる。Facebookは、先述したCalibraという子会社を設立することで、Facebookで収集したソーシャルデータとLibraで蓄積されるファイナンシャルデータを、適切に分離することを表明している。

 しかし、KYC(本人確認)の是非や顧客情報の保護などの対応方針は、現時点では明確化されていない。この問題に対しては、各国の政府より既に厳しい声明が出されているのが事実だ。

 ブリュノ・ル・メール仏財務相大臣は、Libraの全貌が明らかになった直後、Libraを通貨としてみなすべきではないと主張している。合わせて、7月17~18日にかけてフランスで開催されるG7財務大臣・中央銀行総裁会議において、各国におけるLibraの対応方針を報告するよう、G7各国の中央銀行総裁に対して要請した。

 さらに、米下院金融サービス委員会の委員長で民主党所属のマキシン・ウォーターズ氏は、Libraの開発計画を停止することを求める声明文を公表した。続けて、米連邦議会上院銀行住宅都市委員会が、Libraのプライバシーなどに関する説明について求める公聴会を、7月16日に開催することを発表している。

 その他にも、ブロックチェーンとしてのLibraにも課題は多々存在する。

 まずはEthereumなどと同様、スケーラビリティやインターオペラビリティの問題に対処していく必要が出てくるだろう。グローバル通貨としてのLibraの普及云々の前に、それを支えるためのブロックチェーン基盤が安定しないことには、実需を生み出すことはできない。

 現状のLibraは、秒間およそ1000件の取引を処理できる見込みが立てられているが、クレジットカード決済大手のVISAでは、秒間およそ6万5000件を処理可能だという。Libraは、安全面と使いやすさを重視したブロックチェーンを構築することを表明しているため、Libra協会の拡大と共に、システムの増強が期待される。

 これまで誰も実現してこなかったグローバルで使える統一通貨の可能性はまだ未知数であり、これからの進展に注目したいところだ。

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