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集英社初のチャット小説アプリ「TanZak」誕生秘話--“1話目を読む”ハードルを下げる - (page 2)

藤井涼 (編集部) 阿久津良和2019年06月20日 11時00分
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 配信作品は「JUMP j BOOKS」「集英社コバルト文庫」「集英社オレンジ文庫」「スーパーダッシュ文庫」「ダッシュエックス文庫」のベストセラーを中心に、40作品・総話数1000話以上からスタートし、毎日1作品ずつ加わります。

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 もちろん過去にデジタル化した作品を、TanZakのUIで出したら面白いという作品もありますし、オリジナル小説も追加しますので、いつ利用しても楽しめるアプリになっていると思います。また、連載ではないため、追加されたその日にすべての話を読むことができます。

 「All You Need Is Kill」や「ONE PIECE novel A」「なんて素敵にジャパネスク」など、多数の作品を投入する予定です。社内でも多くの編集部が協力的で、当初は売れ筋作品はデジタル化したがらないのではと心配していましたが、どの編集部も積極的に「売れているものを配信しよう」と言ってくれました。

集英社のオフィスにあるノベライズ作品
集英社のオフィスにあるノベライズ作品

——1話ごとに話が進む漫画とは異なり、小説は1冊もしくは章などで起承転結が存在します。それを細分化してTanZakで読むことになりますが、文章はどのタイミングで区切っているのでしょう。

 各話の切れ目はすべて手動で編集しています。小説は数分で読めるように書かれていないため、ベストな切れ目を見つけることは簡単ではありません。その上で読者がストレスを感じないように作品を熟読し、次の話につながるように編集しています。

 今回は、JUMP j BOOKS、コバルト・オレンジ文庫、スーパーダッシュ・ダッシュエックス文庫の3編集部と共同で編集作業に取り組んでいますが、ライトノベル系文庫レーベルであるスーパーダッシュ・ダッシュエックス文庫は、ウェブプラットフォーム作品を書籍化しているものが少なくありません。ウェブ連載形式は常に"引き"を作る仕組みで最適化していますので、特に読みやすいと思います。

出版社ならではの戦略で差別化

——今後は、突然スマホの通知がきたり、電話がかかってきたりする演出など、デジタルノベルならではのリッチな表現も加えていくのでしょうか。

 あくまでもSNS風のUI/UXを想定しているため、場面に応じて背景画像を変更したり、絵文字や画像を表示するといった演出は用意していますが、動画は未実装ですね。音声も入れていないのですが、それは読者には“視覚”に集中してほしいと考えているからです。一番の狙いは読書習慣の獲得ですから、気軽に読んでもらうことが最優先です。

集英社 デジタル事業部 デジタル事業第1課 漆原正貴氏

——プロの作品のみがラインアップされていますが、将来的には漫画投稿サービス「ジャンプルーキー!」のように、読者投稿なども検討していくのでしょうか。

 投稿賞などは検討したいものの、集英社ならでの膨大なコンテンツとプロの編集者による技術を前面に押し出そうと考えています。先行してデジタル小説市場に参入している事業者も多いため、我々は編集部で厳選したプロの作品のみを掲載し、ブランドの差別化を図ります。

——収益化(マネタイズ)についても聞かせてください。

 漫画アプリ「少年ジャンプ+」などを踏襲し、アプリ内通貨の「コイン」を購入して1話ずつ読む形式を採用します。すべての作品の冒頭部分を無料配信しており、続きを読むには1話あたり10コインを消費するというものです。無料コインが30枚以下になると40分ごとに1枚回復する仕組みで、30コイン(3話分)は24時間で復活しますので、毎日無料で作品を読むことができます。また、一度読んだ話は72時間まで読み返せます。

 マネタイズという観点では多様なパターンもあるでしょう。我々は出版社ですから、アプリ単独でマネタイズを完結する必要はありません。アプリをきっかけに小説を購入していただくケースもありますし、人気の小説を漫画化するという展開も予想しています。多様な取り組みができるのは出版社の強みでしょう。

 繰り返しになりますが、小説をデジタル化することで期待しているのは“読書習慣の獲得”です。以前、小説を読まない理由を周りにヒアリングしたところ、「1冊を読み切れない」「(前の小説を)読了していないため本の購入をためらう」という方々がいました。他方で出版業界関係者に同じ質問をすると、「すべて読まない」「途中から読む」「並行して複数の本を読む」といった回答を得られました。

 また、弊社の各種漫画アプリの利用動向を調査したところ、ユーザーは複数の漫画を読みかじっていたんです。アプリによって漫画を読む習慣を作ることができたということです。TanZakによって小説でも同じことを起こせないかと期待しています。

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——動画やゲームなど、各社が様々なコンテンツでスマホユーザーの可処分時間を奪い合っている中で、小説は勝てるのでしょうか。

 きっとテレビやPCなどで動画サービスを見ながら(小説を)読むのではないでしょうか。私も動画を流しながらスマートフォンを見ますから。一般的に想定される読書家と異なり、のんびり読みたいという層は存在します。朝に目を覚ましてまどろみながら、スマートフォンでSNSやニュースを読む感覚でTanZakを楽しんでもらえたらと思います。

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