VUILDは4月11日、DIYやCADなどのスキルなしに家具が作れるオンデマンド製作プラットフォーム「EMARF」を正式発表した。
EMARFは、これまで高価だったオーダーメード家具を、木材生産者と工房、ユーザーをむすび、デジタルファブリケーション(3DプリンタやCNCマシンなどデジタルを使ったものづくり)技術を使って発注できるオンラインプラットフォーム。オーダーは、机や椅子、棚といった各テンプレートをもとに家具の3Dモデルをマウスで直感的に操作することで、段数や仕切りなどユーザーが欲しい仕様にカスタマイズできる。
仕様が決定すると、米国製CNCマシン「ShopBot」を導入している全国の工房の中から製作する拠点を選択。データを送信し、組み立てるパーツを木材からカットする。その後、パーツを自宅に届けるか、ユーザーが工房に赴いて一緒に組み立てるかを選ぶことができる。木材は工房がある地元で生産されたものを使用するため、家具の“地産地消”を実現。中央集約型の大量生産から、地域分散型の個別生産へのシフトを実現するとしている。
また、建築家やデザイナーは自身が設計したデザインをテンプレートとして登録でき、EMARFで販売可能。テンプレートは、VUILDが強度や製造方法を監修し、サイズを変更した設計でも品質を担保する。もし、ユーザーが無理なカスタマイズをしようとすると、強度的に不十分といったアラートが出るようになっている。ShopBotを使わず、工房の職人と連携することもでき、曲線を多用したイスなど高度な加工技術をデザインに生かすこともできる。
家具の製作費は一定料金ではなく、各地の工房と仕入れる木材の費用の違いから差が出てしまうものの、想定制作費としてスツール(3本脚のイス)の標準サイズでは、国産木材を使っての制作費が9750円、工房オーナー利益、デザインロイヤリティ、システム利用料が加算され、販売価格として1万9584円となる。EMARF上でテンプレートを操作する分には費用はかからず、購入時にシステム利用料として加算される形だ。
設計できるのは家具だけではない。より大きなShopBotを使うことで、内装や公共空間の建造物、家まで建てられるとする。同社では、富山県南砺市と「現代の合掌造り民家」を、南砺市のナントライフラボ・上田組・長田組と共同で建設するプロジェクトが進行中という。4月22日にクラウドファンディングを実施する。
同社では、ユーザーと工房、生産者、デザイナーを直接むすび、デジタルファブリケーション技術を使うことで、これまでユーザー自身で設計できなかった家具から住宅にいたるまでのものづくりを実現する建築プラットフォームを提供することで、「建築の民主化」を掲げている。誰もが自分好みの家具や家を作ることができる世界観を目指す。
また、建築におけるデジタルファブリケーションで多くの企業から賛同を得ており、LIFULLやパナソニック、カインズ、リビタ、面白法人カヤックと連携。VUILDは、LIFULLと孫泰蔵氏がファウンダーを務めるMistletoeから出資を受けている。
今後は、APIの公開による他サービスとの連携や、ユーザーやデザイナーの手描きスケッチから3次元データを自動生成する等の次世代CAD開発を計画。さらに、AR技術を活用し、製作したオリジナルの家具を実際の部屋にARで投影し、サイズ感などを確認できる機能も実装するという。
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