ロサンゼルス市は、利用者が市内のどこを移動しているか通知しない電動スクーター企業に足かせをはめようとしている。
ロサンゼルス市運輸局(LADOT)は2018年9月、都市計画に役立てるため、すべての電動スクーター企業に車両の位置情報データを提供するよう求める方針を明らかにしていた。こうしたデータはスクーターのGPSで収集されている。
「移動が完了すると、24時間以内に経路情報が市に提供される。利用者の氏名、年齢、性別、住所は、この情報に含まれない」とLADOTは声明で述べ、「LADOTは企業に対し、移動の開始時と終了時にすべての車両の移動開始地点と終了地点のデータを提供するよう求めることで、スクーターが合法的に許可条件の範囲内で駐車されていることを確認したい」とした。
この要請はプライバシー上の懸念を引き起こした。市が機密データを扱うことになるからだ。ロサンゼルス市はRemixなどのデータアグリゲーターと提携して、そうした情報を解析する。電子フロンティア財団(EFF)やCenter for Democracy & Technology(CDT)などのプライバシー保護団体は、これらのデータ要求について公然と声を上げた。
Remixの共同創設者であるTiffany Chu氏は、次のように述べている。「われわれRemixは、ロサンゼルスなど多くの都市がデータを使って意思決定の改善やマイクロモビリティプログラムの強化に取り組み、より大きな輸送エコシステムという文脈の中で成功を収めるよう支援できることを嬉しく思っている」
LADOTが位置情報データをどれほどの期間保持するかはまだ不明で、アグリゲーター各社がそうした情報をどう利用できるかについての詳細も公表されていない。データを提供しない企業は、路上に配備できるスクーターの数が提供する企業よりも少なくなる。
Motherboardの報道によると、データの提供を拒んだ企業には、ロサンゼルスでの営業を認める1カ月間の暫定許可が与えられたが、匿名化処理された位置情報データの提出に同意した企業は1年間の営業許可を得たという。
LADOTは、プライバシー問題を懸念している企業について、与える許可の有効期間だけでなく、車両数も制限しようとしている。ロサンゼルス市は、データの提供をためらうLyftやUberなどの企業には、3000台のスクーターしか運用を認めない。位置情報データを提供するLimeやSpinなどの企業は、今後1年間に1万500台まで車両を増やせる。
つまり、ロサンゼルス市の住民は、位置情報データを市に提供するスクーターに乗る可能性が増え、プライバシーに関する懸念が生じると批判の声が上がっている。
LADOTの広報担当者は、UberやLyftなどの企業も、競合するスクーター企業と同じ条件が適用される1年間の営業許可をまだ申請できると述べている。スクーターを提供する企業はすべて、米国時間4月15日までに1年間の営業許可を得るために必要な要件に従わなければならないという。
Uberの広報担当者は、そうしたデータの悪用を防ぐ方法について詳細な計画をLADOTが公表するなら、要件に従うと述べている。
位置情報収集に関するLADOTの計画は、スクーター以外にも拡大する可能性が高い。LADOTは、ライドシェアリングに関する位置情報データの収集も望んでいる。
カリフォルニア州には米国で最も厳しいデータプライバシー法があるが、LADOTのような地方行政機関には適用されない。また、LADOTは、分析のために、民間企業のRemixに位置情報データを提供することから、プライバシーに関する別の懸念も生じる。
Remixは「契約上、そうしたデータを共有しないよう義務づけられている」と述べたが、LADOTとの契約について詳細を明らかにしなかった。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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