建設業をITで変えるユニオンテックの挑戦--現場の根幹となるマッチングに注力 - (page 2)

1つの案件関わる会社数は30~50、マッチングこそ建設現場の根幹

 建設×テクノロジーでは、施工管理や資材調達といった分野に注目している会社も多い。しかし大川氏は「マッチング部分こそ根本」と言い切る。その理由は、マッチング部分がすべてのスケジュールの根幹を担っているからだ。

 「仕事が発生すると、最初に必要になるのが見積書の作成。この作成を請け負ってくれる会社を探し、さらに一つひとつの会社を選定し、依頼していく。大体一つの案件で必要になる会社数は30~50社。そのすべてに連絡を取り、仕事内容を説明し、スケジュールを押さえる。このコミュニケーションコストがものすごくかかる。断られれば次の依頼先を探さねばならず、探すのに時間がかかれば着工が遅れる。会社が変われば、金額が変わる可能性もある。見積もり、各社への依頼、さらに着工後の緊急対応の3つのタイミングをこなせれば、その後の施工管理に影響は出ない」と大川氏は自らの体験を元に現場の状況を説明する。

 ただし、オンライン上でサイトやアプリを使ってマッチングを図る解決策を用いたのは「たまたまITだった」と話す。大川氏自身、IT分野に明るくなく「エンジニアの人が話している言葉自体がわからない状況。わからない言葉はその場で検索しながら覚えて勉強していった」という。2018年2月には、リクルートホールディングスでエグゼクティブマネジャーを務めた韓英志氏を取締役副社長(現在は代表取締役社長)に迎え、IT分野を強化。自社で開発できる環境を築いた。

 こうしたITに親しみづらい状況は、仕事の発注に電話やファクスを使っている建設会社や工務店も同じ。電話やファクスで来る依頼をその場で「インターネットで見られます」「サイトに載っています」と導きながら、SUSTINAを使う環境を整えていったという。

 「最近ではカスタマーサポートチームを作り、使い方を説明している。確かに最初は大変だったが、繰り返すことで、サイトで仕事を探すという行動に結びついてきた」と話す。加えて、全国で建設業、職人、工事会社向けの「建設業界向上委員会」を実施し、草の根活動も続ける。「アナログからの転換はとにかく大変だが、やらないと変わらない。大変でもやる意味はすごくある」と業界の変革に期待を寄せる。

 一方、個人向けのCraftBankは、スマートフォンアプリが功を奏し、導入はスムーズに進んでいる。「職人の方は、スマートフォンの使用率がとにかく高い。休憩時間にゲームをしたり、LINEで連絡をとったりして、欠かせないツール」なのだという。

 より使ってもらいやすい環境を作り上げるため、今回の資金調達では、開発部隊に投資する。「建設業のITは、まだ聞き慣れない世界。当初は人材獲得もかなり大変だったが、現在はネット事業部全体で30数名が働いている。ユニオンテックは、店舗、オフィス、住宅の企画、設計、施工会社として、リアルの業務も持っている会社。エンジニアが作ったサイトやアプリは、その場で使って、改善案や使い勝手の感想がもらえる。そうしたスピード感のある開発環境に魅力を感じてくれるエンジニアは多い」と、独自の開発環境を説明する。

 今後目指すのは、「平常時でも使ってもらえるサービス」への改良だ。現状のSUSTINAとCraftBankは、「仕事がほしい」や「依頼先が見つからない」といったある意味、緊急事態に使うもの。「そうした緊急事態だけではなく、日々アクセスすると先々の仕事が決まったり、余裕のある依頼ができたりする環境を構築したい。緊急時でも平常時でも使えるサービスにしていきたい」と今後を見据える。

 当初の開発は外部のエンジニアに依頼していたが、現在はすべて内製に切り替えた。「建設業のリアルを持っている会社であると同時に、ユニオンテックはプロダクトドリブンの会社にしていきたい」と、新たな目標を定める。大川氏は「建設業の仕事のやり方は今変えなければいけない。一方で技術の伝承など今後に残すべきものも多い。以前はそれこそ先輩の背中を見て仕事を覚えろというのが当たり前の業界だったが、今どきそんなことは無理。これからの職人はどうあるべきか、ポスト職人の姿を考えていかなければいけない」と、今後の業界のあるべき姿を話した。

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