国内外で勢いを伸ばすマッチングアプリだが、全世界で使われているアプリといえばTinderが有名だろう。同サービスを運営する米Tinderは1月24日、日本市場におけるブランド方針を発表した。
Tinderは、GPSをもとに近くにいる異性の顔写真を表示。好みに応じてスワイプ「Like」か「Nope」を選び、相手もLikeにした場合にマッチングが成立する。その後、プライベートのメッセンジャーが立ち上がり、コミュニケーションを取ることができる。左右のスワイプによる直観的なUIが特徴だが、これはTinderが元祖だという。
同社は、2012年に米国のロサンゼルスに設立され、まずは大学のキャンパスでローンチしたという。2015年にはグローバル展開を開始。口コミで広がり、今では190か国以上、46の言語で使われている。アプリのダウンロード数は3億、トータルマッチング数は300億以上で、18~25歳がユーザーの半数を占める。さらに、アプリストアのライフスタイルカテゴリでは、110か国以上でトップ10入りしている。
基本無料のTinderだが、マネタイズも好調のようだ。有料会員数は410万人を超えており、現在位置以外でのマッチングを可能にする「パスポート機能」がよく使われるという。目的地で事前にマッチングしておき、到着後にそのまま会うといった使い方や、海外旅行先で事前にマッチングしておき、地元の人とレストランやカフェ、イベントに行くなど、よりリアリティのある体験が可能になるという。こうした”リアル”さがミレニアル世代に刺さっているようだ。
今では群雄割拠のマッチングアプリだが、Tinder自体競合は意識しておらず、あくまでもユーザーのニーズに応えるのが一番だとする。Tinder CEOのエリー・セイドマン氏は、「競合だけをターゲットにすると小さくしか発展しない。Tinderのメンバーやユーザーを理解することで大きなヒントが得られる」という。
日本は、中国を除いたスマートフォン市場で米国に次ぐ規模を誇っており、ユーザー数自体は非開示なものの、伸び率では上位に入るという。日本でも、ライフスタイルカテゴリで1位を獲得しており、ミレニアル世代がユーザー全体の8割を占めている。ユーザーの多くが、SNSのように家でテレビなどを見ながらリラックスしているタイミングで使用しており、日曜の夜10時ごろがもっともアクティブだという。
日本でのマーケティングアンドビジネスデベロップメントマネージャーを務める久次米裕子氏は、「プロフィールが一番国民性が見える」と指摘する。米国では、Tinderが生活の一部となっており、プロフィールはフレンドリーかつフランクだという。一方、日本では社会人や学生といったソーシャルステータスに興味・関心事、食べ物、好きな動物などが書かれてあり、特に日本人らしいと語るのが、プロフィールに「シャイです」「オタクです」といった記述がとても多い点。「等身大の自分を見て欲しい」という想いが他国と比べて強いという。
この「等身大の自分」はTinderのコンセプトにも合致しているという。セイドマン氏は、「完璧な人生を描こうとするのはやめた方がいい。作り上げた人物を描く必要はなく、そのままの自分を打ち出すことをTinderでは推奨している。日本のユーザーは、これを言わなくとも等身大の自分を見せている」という。
Tinderと聞くと単なるマッチングアプリという印象になりがちだが、同社ではTinderが持つ価値をより広く捉えており、人種や言語、文化的なバックグラウンドなど、普段関わりのない人と会えることで、自身の視野を広げられるものだと語る。また、ジェンダーの多様性にも取り組んでおり、男性女性以外にも「More」という項目を選んで自由に書き込める。同氏は「ジェンダーを自由に表現できるプラットフォーム」と定義する。
2019年の国内展開は、女性が出会いを求める際により使いやすいプラットフォームづくりを目指すという。ミレニアル世代の女性が安心して楽しむためにも、セキュリティシステムの強化など、安全なコミュニティづくりに注力する。具体的には、コミュニティの監視、AIやマシンラーニングを使ったアクシデントの事前察知、レポーティング機能が利用でき、本人と写真の乖離がないよう写真の認証機能などもアップデートする。セイドマン氏は、「Tinderはパラレル世界ではなく現実世界のメンバーとつながる。カフェやバーなどで気を付けないといけないことはTinderでも同じ」とする。
さらに、日本独自の機能について聞かれたセイドマン氏は、アナウンスする予定はないとしつつ、「等身大の自分を打ち出したい、本当の自分をわかってほしいという想いをより伝えられるようにしたい」と述べた。
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