キャンディーサムライの新メンバー・只石倖大君のお父さんである只石昌幸さんにも話を聞いた。
——ロボコンに参加することになったいきさつなどを教えてください。
息子を通わせていたロボット教室で、たまたま今チームを組んでいる、小助川君と片岡君がロボットコンテストにエントリーするメンバーを探していると聞きつけました。それならぜひと手を挙げたのがきっかけです。
大会に出させてあげたいな、行けるなら世界の表舞台で精一杯力を試してほしいなと思っていた反面、うちの子は初心者だしせっかくここまで培ってきた彼らの足手まといになるんじゃないかと逡巡していたところ、今のメンバーから「もう、只石さん家も出場希望って名簿に書いて出しちゃったから」と言われたんです(笑)。嬉しい悲鳴が半分で、正直本当にやっていけるのかなという気持ちもありました。
でも、子どもって信じてあげるものですね。うちの息子にとってはロボット作りのすべての工程において何でもできる先輩2人が眩しくて、本人もだいぶ背伸びをして接していた部分もあったんだと思うんです。日本で行われた全国大会に出場する前には、帰宅して今日は自分で何も作れなかったと悔し泣きする息子の涙をそっと拭いてなぐさめてあげたりと、そんな親子の時間を過ごした夜もありました。
——倖大君も新メンバーなりに苦労があったのですね。(大会参加を通じて)成長も感じられましたか。
はい。息子はこの数カ月で見違えるように頼もしく成長しました。世界大会という晴れの舞台で、堂々と英語を使って審査員の前で自分たちのロボットをプレゼンテーションしてましたよね。親の私も鳥肌が立ち、誇らしい気持ちになりました。もちろん、制作過程はつぶさに見守ってきたので、息子たちのロボットも、英語のプレゼンも練習の時から何テイクも何テイクも、飽き飽きするくらい繰り返し見てきたものです。でも、大変感動しました。
親も持てるかぎりの資源を子どもに託してここまで作り上げてきました。練習時間も土日、場所も非常に限られている中、私の仕事場の一室を提供して、みんなでロボット作りやプレゼンの練習に充てた日もありました。しかし、与えたつもりでいた彼らから、受け取ったものは想像以上に大きかったです。小さな背に日の丸を背負って、世界の舞台で堂々とふるまう子どもたち。自分は普段経営者という立場で会社をやっていますが、世界を相手にここまで攻めの姿勢で自ら取りに行っているのだろうかと。
日本に帰ったら、今まで以上に自分の仕事を世界規模で充実させていきたいですし、何よりその勇気をくれたメンバーの子たち、そして我が息子にお礼を言いたいです。本当にありがとう。
続いて、片岡嗣葉君のお父さんで、WRO世界大会のコーチも務めた片岡照博さんに話を聞いた。
——大会参加は4回目だったそうですが、今回を振り返っていかがですか。
もうそんなに何回も出ているかというのが率直な感想です。世界大会に向けては、市販のロボットキットを使用し、LITALICOワンダーの指導員さんに協力いただきながら、子どもたちの創作活動のまとめ役として関わってきました。本職のデザイナー業のスキルを活かして、子どもたちと「キャンディサムライ」のロゴマークやポスターを考えたりもしました。(注:日本大会まではLITALICOワンダー渋谷・教室長の田中聡大氏がコーチ役を務め、世界大会では片岡さんがコーチとして登録されている)。
創作の現場は、いくら小学生とはいえ真剣勝負そのものです。しょっちゅう子どもたち同士で喧嘩もするし、その仲裁に入ることもしばしば。自分の子が喧嘩の火種になっているときもよくあります(笑)。しかし、コーチですので、そこは我が子の習いごとに関わる父兄という立場を超えて、平等に子どもたちに接することにしています。今年から参加を決めてくれた倖大君とともに、良い雰囲気でここまで成長できているなという実感がありますね。
——世界大会に何度も足を運ばれ、日本チームとして参加されてどのようなことを感じましたか。
日本は2020年からプログラミング教育が義務教育の中に組み込まれることが決定しています。我々も先駆的な取り組みをしているなという実感はありますが、こうして海外に遠征して他国の子どもたちやコーチと接する機会を持つと、まだまだ日本は規模が小さいというか、お金の面でも、制度の面でも、もっともっと多くの子どもたちが気軽にロボットを作ることを楽しめる環境に変えていかなくちゃいけないだろうということを強く感じます。
私個人としても、本業の仕事以外の時間を、子どもと一緒になってロボット作りに没頭できたことは充実して楽しい時間でした。それは何物にも代えがたいです。しかし、実際私たちの活動も、活動時間と場所、人的リソースが限られ、手弁当的にこなしている部分も大きく、正直組織として脆弱な側面もあります。これだけ世界を相手に戦ってきた彼らの経験と実績が、後輩たちにしっかりと引き継がれる仕組みを確立できていないということには、個人的に少し焦りを覚えますね。
コーチ同士の繋がりやチーム運営のナレッジの蓄積は今後の大きな課題です。この大会で、一旦私のコーチ業は終了しますが、今後機会があればいろいろなところで、子どもたちと大人が一緒になってロボットを作ることの楽しさの種を撒いていきたい、発信していきたいと思っています。
世界の舞台に立ち、堂々とプレゼンテーションとデモンストレーションをした日本の小学生チーム「キャンディーサムライ」。クラウドファウンディングの協賛もあり、日本からたくさんの声援に応えながら、見事入賞を果たした。さらなる飛躍を目指して活躍は続くだろう。
ご存知の通り、子どもたちのIT教育、ロボット作り、プログラミング、コーディングなどの分野は、世界的な規模でみるとロシア、米国、中国などの活躍が目立つ。しかし、日本でもこうして民間の力を結集し、企業がそれに応える形でロボット作りのメンバーが少しずつ増えているのは、IT教育産業の分野において特筆すべき事柄の1つと言えるだろう。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
パナソニックのV2H蓄電システムで創る
エコなのに快適な未来の住宅環境
トラディショナルからモダンへ進化するBI
未来への挑戦の成功はデータとともにある
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス