体細胞クローンで生み出された初の哺乳類である羊のDollyをめぐり、激しい批判が飛び交ったのはそれほど遠い昔のことのようには感じられない。今回、中国のある研究者は、クローン動物のレベルをはるかに超えて、人間の受精卵の遺伝子を編集したと主張している。
深センの研究者であるHe Jiankui氏は、LuluとNanaという双子の女児が数週間前、「他の赤ちゃんと同等に健康な体でこの世に誕生」し、現在は両親の元で暮らしていると述べている。
Associated Press(AP)によると、He氏は中国のチームとともに、米国のある科学者の支援を借りて、遺伝子改変技術「CRISPR」によって双子のDNAを書き換え、改変することに成功したという。この米国の科学者は、このようなDNA改変が米国では現在禁止されているので国外に渡ったとされている。
その目的は、病気、具体的にはHIV/AIDSウイルスへの耐性を与えるための医学的改変だった。
7組の夫婦によって胎芽が提供され、これまでに1組が妊娠に成功した。He氏によると、双子の誕生につながったこの妊娠には、HIV感染者で「自分が子供を持てるとは思ってもみなかった」という男性(仮名:Mark)の精子が使われたという。
「母親(仮名:Grace)の妊娠には、1つ異なる点があった。夫の精子を卵子に注入した後、少量のタンパク質を注入し、遺伝子編集の施術も加えた」とHe氏は述べ、「LuluとNanaがまだ1つの細胞だったときに、これによってHIVが人間に感染する侵入経路を除去した」とした。
同氏によると、チームは数日後に、改変できていることを確認するために遺伝子シーケンシングを行ったという。「手術は予定通りに安全に行われた」とのことで、他の遺伝子は改変されていないという。
しかし、この実験は秘密裏に実施され、遺伝子シーケンシングや編集の専門家が精査できるような論文もまだ公開されていない。
この実験に参加した両親と赤ちゃんの身元は、明らかにされていない。無謀な人体実験で危険だとする激しい批判の声もある。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス