——その5Gの電波割り当てに関して、11月に公開された指針案を見ると、地方で早期にサービスを開始することを評価の条件にするなど、地方でのインフラ整備をかなり重視した内容となっていたことに驚きました。
ストレートに言いますと、それには地方で暮らす人こそ、どこでも仕事ができ、情報が得られることを享受できる環境が必要だという、現在の大臣(石田真敏総務大臣)の思いが反映されています。資本主義の理論で合理的にインフラ整備すると東名阪が優先されてしまいますが、国全体を考えた場合、誰も置いてけぼりにすることなく、アクセスしやすい環境を作ることが重要なのです。
5Gで期待されているのは従来のモバイルの延長線ではなく、B2B2Xの形で新しい事業者と組み、サービスを提供すること。それが提供される場所も社会課題があるローカルエリアが多く、そこにチャンスを見出して欲しいという期待も込めた内容だと思っています。キャリア目線で見れば大変だと思いますが、この国を今後どうしていきたいかという意味が込められているのです。
——行政として、5Gの利用を推し進めていく上でどのような取り組みに力を入れていますか。
国民にとって分かりやすい利便性として挙げられるのは、たとえば遠隔医療に向けた取り組みではないでしょうか。50万人規模の中核市くらいであれば高度医療も受けられますが、1万人以下の自治体だと厳しく、地方こそ医療に困っている。5Gであれば4K、8Kといった精細な映像でリアルタイムに診断ができることから、大きなソリューションになると考えています。すでに実証実験をしており、皮膚科や眼科などであれば十分に利用できることが見えてきています。
——遠隔医療や自動運転などもそうですが、5Gを活用した新たな取り組みを進める上では、さまざまな規制が壁になってくるように思います。
新しい技術が出てきて可能性が広がる一方で、既存のルールが壁になる時があるのは確かです。それを取り払っていくのが政治の大事な仕事ですし、テクノロジの進化によって現実社会が進展する中、合わなくなってきているルールを見直す規制改革に取り組むため、行政改革推進本部の事務局長にも就任しています。
——小林さんは現在は総務大臣政務官を離れた立場ですが、今後は携帯電話業界とどのような形で関わっていくのでしょうか。
モバイルはITで社会課題を解決するための入り口として、非常に重要な存在です。人々がモバイルでITの利活用を推し進め、社会課題を解決していくことが重要だと考えています。
社会課題をテクノロジで解決し、人々に豊かさを提供する上では、その入り口となるモバイル市場の分かりづらさをすっきりさせることが第一段階でした。ですので、次はそれを利活用して社会とITをつなげることに取り組みたい。すべての分野とインターネットがつながる社会の実現を邪魔するのが規制やルールの壁であるならば、それを守る人たちと話し合い、既成概念の壁を取り払っていくことで、豊かな社会の実現を進めていきたいと考えています。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)