行動情報データ解析事業を展開するFRONTEOは11月5日、独自開発のAI(人工知能)エンジンの新版「KIBIT G2」の提供を始めた。従来同社が提供してきたAIエンジン「KIBIT」に次ぐ第2世代のAIエンジンとなる。クラウドのサービスと、オンプレミス用のソフトウェアの両方の形で提供する。
KIBIT G2では、自然言語(テキストデータ)の分析に特化し、少量の教師データとノートPC1台ほどの小さなコンピュータリソースでも実用的な速度で動作するという特徴はそのままに、APIを公開して業務システムとの連携を可能にし、複数サーバでの並列処理に対応し、処理速度の引き上げを実現した。
KIBITの源流は2012年までさかのぼる。この年に国際訴訟支援業務に向けた文書解析ソフトウェア「Predictive Coding」が登場し、2015年には名称を「KIBIT」に変更している。その間に用途を国際訴訟支援から、一般企業におけるデータ分析に広げて導入企業を増やしてきた。2018年6月には、導入企業が100社を超えたという。
FRONTEO代表取締役社長の守本正宏氏は、KIBIT導入企業が前年同期比で1.5倍となったことを明かし、「AIの実効性を試す段階は終わり、業務への本格導入が始まっている」とその実績をアピールした。
今回登場したKIBIT G2には、主に2つの機能が加わっている。1つ目は他システムとの連携を可能にするAPI「KIBIT-Connect」だ。企業の業務システムなどとの連携を目的にしたもので、有料で公開する。クラウド上のシステムとも容易に連携できるように、HTTPで呼び出せるREST APIとして開発した。
KIBIT-Connectを利用することで、企業内のリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)や、ERP、CRMなどのシステムからKIBIT G2が各種データを取得したり、解析結果を業務システムに戻したりできるようになり、より業務で利用しやすいものになった。
またFRONTEOは、KIBIT G2エンジンのOEM提供も始める。OEM提供を受けた企業は、独自開発のソフトウェアにKIBIT G2エンジンを組み込んで、AI機能を持たせたソフトウェアの作成が可能になる。
2つ目の新機能は複数サーバを利用した並列処理だ。従来のKIBITでは、単独のサーバやPCでの処理を前提としていたため、解析対象のデータ量や設定によっては解析に長い時間がかかることがあった。
新版のKIBIT G2では、解析処理を複数のサーバに分散させて並列で処理することで、解析時間を短縮できるようになった。並列処理で使用可能なサーバ数は原則として無制限。解析対象のデータは自動的にそれぞれのサーバに割り振るため、解析担当者やシステム管理者にかかる負担はわずかなものになるとしている。
さらにKIBIT G2では、顧客の用途によって解析アルゴリズムのカスタマイズも可能になった。FRONTEOが顧客から用途や規模を聞き取り、必要に応じてアルゴリズムをカスタマイズして提供する。
FRONTEO ビジネスソリューション本部 企画部の部長代理を務める正見卓司氏は、「従来は教師データの調整などで、顧客の用途に合わせることがあったが、アルゴリズムを調整した方が性能が上がるということも判明していた。新版でアルゴリズムのカスタマイズを可能にしたことで処理性能が向上するだけでなく、従来よりも幅広い用途に応用可能になった」と語った。
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