2016年4月の創業以来、他に例を見ないスピードで成長を遂げてきたAnyMind Group(エニーマインドグループ)。創業したばかりの2016年に約14億円、2017年にその倍となる約28億円の売上げを記録。さらに、アジア11市場に13のオフィスを構えており、2017年4月時点で90名だった従業員数は、現在330名を超えるという。2018年10月末にはLINEや未来創生ファンドなどから約15億円の資金を調達した。累計の調達額は約31億円。
デジタルマーケティングのAdAsia Holdings(アドアジアホールディングス)、インフルエンサーマーケティングのCastingAsia(キャスティングアジア)、HRテック分野を切り開くTalentMind(タレントマインド)の3社を従える、AnyMind Group CEO 共同創業者 兼 CEOの十河宏輔氏に、急伸の理由や今後の展望を聞いた。
——デジタルマーケティング、インフルエンサーマーケティング、HRテックの3領域を柱としていますが、各事業の状況を教えてください。
AdAsia Holdingsでは、オンラインメディアと広告主に対するアドテク(ネット広告における配信技術や広告流通技術)を集約するワンストップソリューションを提供しています。具体的には、管理ダッシュボードの提供やデジタル戦略コンサルティング、クリエイティブ制作、各種SNSキャンペーンの提案や運用をしています。こちらの媒体数は約1200に達しました。
また、クラウドソーシングのようにインフルエンサーと広告主をマッチングするCastingAsiaでは、インフルエンサーの選定から施策の実行、終了後のレポーティングまでを1つのダッシュボード上で可能にするソリューションを提供しています。過去から現在までの予測データやキャンペーンの情報までを分析しており、ブランドに提供するインフルエンサーのマッチング精度が日々向上しています。実施しているキャンペーンの状況をトラッキングすることも可能です。現在、約3万人のインフルエンサーを集めています。
TalentMindでは、採用候補者の管理とスコアリングで面接官に提案するソフトウェアを提供しています。求職者がTalentMindに登録すると、採用担当者はSNSや履歴書などの求職者の情報を確認でき、カルチャーフィットを確かめることができます。また、採用担当者は自社の企業風土や、勤めている優秀な従業員のコアコンピテンシーなどをAIを活用して分析することで、雇用したい部門ごとの採用モデルを自由に組み立てることが可能です。こちらは約150社と契約しました。
AdAsia HoldingsとCastingAsiaの広告主は累計約1000社を超えました。売上比率を見るとAdAsia Holdings、CastingAsiaと続き、TalentMindはまだまだですが、先日タイ最大手のセメント製造企業であるThe Siam Cement Public Company(サイアム・セメント)で全社導入が決定しました。グローバルで半年前、日本では9月から本格展開を開始しています。
3領域に共通しているのはAI(人工知能)によるマッチングシステムです。弊社のデータサイエンティストチームがアルゴリズムの精度アップに取り組み、データ分析をしてきました。
——創業から2年半、それもアジアで急成長した一番の理由は何だったと考えますか。
急成長する東南アジアに対して、適切な製品と人材をそろえて創業したことでしょうか。市場成長期は参入した企業もともに成長します。興隆する東南アジア市場を選んだタイミングと、製品や人材のバランスも影響をおよぼしました。創業当初から「一気に成長したい」と思っていましたが、ここまで急成長できるとは正直想像しませんでした。数年間かけた成長の見通しはありましたが、当時は資金も潤沢ではないため、各国の市場1つ1つを確保しつつ、拡大に至っています。
僕が以前の会社に新卒で入社したのは2010年でした(マーケティングプラットフォームを提供するマイクロアドに入社後、東南アジア拠点CEOを務め、4カ国の現地法人設立)。しかし、東京で働いていたのは1年半だけで、それ以降はベトナム、インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポールと海外赴任をしていました。当時から東南アジアの"伸び"を肌で感じていたこともあり、起業するなら東南アジアと決めていました。
その一番の理由は東南アジアの市場成長率です。今でこそ注目を集める同地域は(AnyMind Group創業前から)人口も増加し、競合が少ない市場でした。当時、日本で起業するよりも「更地の状態」が多い東南アジアで勝負した方が一気に成長できると思ったんです。
——日本国内やグローバルでの競合はどこになると考えますか。
たとえば、インフルエンサーマーケティング分野ではタレントエージェンシー系企業でしょうか。彼らは技術を持っていませんが、地場のタレントを抱えているため競合となるケースもあります。メディア側では大手代理店、時にはGoogleやFacebookも競合になることもあります。
それでも弊社を選んでいただけるのはデータ活用技術だと思います。データを自分たちで保持し、企画立案を理論的に提案できる点を顧客からは評価していただきました。インフルエンサーマーケティングでは、インフルエンサーだけではなく彼ら彼女らにひも付くフォロワーもターゲットとし、フォロワーの属性や趣味嗜好などもデータに取り込んでいます。
メディア側も同様で、AdAsia Holdingsは多くのメディアと連携しているため、そのデータをリアルタイムで取得し、どこよりも正確なデータを提示してきました。こちらも広告企画立案から広告配信・運用・一元管理まで実現できることを強みとしています。技術を活用しないとデータ分析は簡単ではありません。過去の配信結果データだけではなく、リアルタイムに多様な方向から取得する必要があります。とある広告代理店も弊社経由で顧客提案するケースも増えてきました。
——御社が強みとする、AIのマッチングシステムの開発には優秀なエンジニアが必要になるのではないでしょうか。
弊社の技術チームの強みは「標準語は英語」「国籍を問わない」ということです。データサイエンティストやPythonのエンジニアがそろっていますが、国籍でいうとウクライナに代表される東欧の人材が増えてきました。他にも日本人やロシア、ベトナム、台湾のエンジニアがバンコクオフィスに集合しています。
世界各国でデータサイエンティストやPythonエンジニアは(AI系企業間で)取り合いになるため、日本国内に焦点を当てても獲得できません。「国籍は問いませんが英語のコミュニケーションが必要」という縛りを設けても、グローバルで見れば人材の獲得は可能です。このような人材獲得戦略を進めながら、技術チームの強化を図っていきます。
AIやデータサイエンティストのイベントに参加していると、1億円以上の資金を持つ欧米のメガスタートアップも開発拠点はウクライナです。シリコンバレーも人件費が高騰し、注目を集めているのでしょう。他方でウクライナの文化も大きく、かの国では「優秀な人材は医者ではなくエンジニアを目指す」そうです。
あとは「アジアに引っ越せますよ。バンコクで暮らせますよ」とユニークなセールスポイントを持っている点も強みです。若手の人材は海外で働きたいという方が多く、僕らの戦略と合致します。
——どのような採用基準を設けていますか。また、1年で3倍と人材獲得のペースも非常に早いですが、その理由は。
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