不動産、特にマイホームの購入は多くの人にとって“一生の買い物”だ。にもかかわらず、多くの人が利活用する住宅ローンについての情報は一面的であり、昨今盛り上がりを見せる不動産テック業界においても、その進化は遅くいまだに非効率な状況だ。一方、欧米では不動産テックとFinTechを包括する専門領域として「住宅ローンテック」が独自な進化を遂げているという。
10月4日に開催された「CNET Japan Conference 不動産テックカンファレンス2018 〜加速する業界変革〜」において、日本最大級の住宅ローンに特化した専門サイト「住宅ローンの窓口 ONLINE」を運営するiYellによる「“住宅ローンテック”で不動産業界はこう変わる〜メガバンク・地方銀行と描く住宅ローンの未来〜」と題する講演が開かれ、日本や欧米の住宅ローン業界の現状や課題、そしてiYellが描く住宅ローンテックの未来像について語られた。
壇上に立ったiYell代表取締役社長兼CEOの窪田光洋氏は、旧SBIモーゲージ(現ARUHI)において最年少執行役員、またPorptech推進協議会で副理事長を務めるなど、日本の住宅ローンに精通しその最前線で活躍してきた。そんな窪田氏は住宅ローンの現状について、非常にアナログ的であり、住宅ローンを利用したいユーザー、銀行、不動産業界、新たなムーブメントを起こそうとするベンチャーそれぞれに四者四様の課題があると語る。
ユーザーが抱える問題に関しては、日本人は平均で1.8回しか家を購入しないため住宅購入に関する知識が増えにくいという。また、ユーザーにとって最適な住宅ローンを選べる環境ではないとも窪田氏は述べ、「住宅ローン選びで重要なのは金利のパーセンテージではなく、審査に通ること。なぜなら住宅ローンはあくまでも手段であるからだ」と語った。
一方のお金を融資する側の銀行はというと、住宅ローン事業は高コスト・低収益であるという問題があると指摘。メガバンクの雄、みずほ銀行でも地方での新規住宅ローン貸出からの撤退、三菱UFJ信託銀行も同様に新規の住宅ローン事業から撤退するなど、“住宅ローンは儲からない”現状が透けて見える。
しかし、銀行というビジネスはお金を貸し出すことで利益を得る性質上、数千万円単位で貸し出せる住宅ローンはありがたい存在なのだが、如何せん利益につながりにくいというジレンマを抱えているのだという。
住宅事業者において問題となっているのが、住宅ローン業務に追われ本来成すべき販売業務に専念することができないことだという。iYellの調査によると、住宅事業者の業務比率に占める住宅ローン業務の割合はなんと30%にも及んでいる。
さらに、住宅ローンの承認率の低さも課題となっており、非効率な営業活動を行わざるを得ない現状があるそうだ。住宅購入を希望するユーザーの背景を読み解き、最適な住宅ローンを提供できれば承認率も向上する。不動産販売会社に住宅ローンに特化した知見を組み合わせることができれば、こうした現状を打破し生産性を向上させられるだろう。
海外では住宅ローンテックに属するベンチャー企業が多数存在しているが、こと日本においてはiYellを含めわずか4社のみ。そのため「競争も起こりづらく、イノベーションも起こりづらい」と窪田氏は分析。不動産、金融それぞれに精通していなければならず、その「参入障壁の高さからも新たなチャレンジャーが現れないのでは」との見方を示した。
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