欧州人権裁判所は現地時間9月13日、英国の諜報機関である政府通信本部(GCHQ)が実施した大規模な監視活動は欧州人権条約に違反するとの判断を示した。
フランスのストラスブールに設置されている欧州人権裁判所の判事らは5対2で、英国による監視活動が一部の面で人々の私的生活に対する権利を侵害したとの裁定を下した。そうした侵害としては、「全国民レベル」での無差別なデータ収集、収集プロセスにおける監督の欠如、収集したデータの乱用を防ぐ予防措置の欠如などが挙げられた。
一方、同裁判所は1つの活動については違法ではないと判断した。それは、機密データを外国政府と共有するというGCHQのポリシーだ。
裁判所は判決文の中で、メッセージの送信者と受信者を特定できるデータを「見たところ無制限に」探して調査できる諜報機関の能力について特に懸念を示した。裁判所は、無制限の監視活動には、ソーシャルネットワークやコミュニケーションのパターンのマッピング、閲覧履歴や位置情報の追跡、監視対象者がやり取りしている相手の把握を通じて、「細部にまで及ぶ人物像を描き出せる」可能性があると述べている。
英国によるデータの大量傍受は、2013年、米国家安全保障局(NSA)を内部告発したEdward Snowden氏が米国と英国による諜報活動について暴露したことで明るみに出た。
この暴露を受けて、非営利団体のBig Brother Watchを中心とする14のプライバシー権利擁護団体や人権団体がGCHQを相手取って訴訟を起こした。この訴訟は、まず英国の調査権限審判所(IPT)で、次に欧州人権裁判所に場所を移して審理が行われた。なおIPTは、特に諜報機関の責任を問うために設置された特別法廷だ。
訴訟を起こした団体らは、今回の裁判所による判断を画期的な判決として歓迎している。Big Brother WatchのディレクターであるSilkie Carlo氏は声明で、この決定は「Snowden氏による勇気ある内部告発の正当性を証明する」ものと述べている。
「英国(政府)はテロ対策を口実に、どの欧米国家よりも権威主義的な監視体制を築いた」(Carlo氏)
裁判所の判断が示されたからといって、欧州諸国によるデータの大量傍受がすべて自動的に違法になるわけではない。国の安全保障のために正当化できるなら大量のデータを合法的に収集できるが、保護措置は講じておかなければならない。裁判所はまた、英国による現在の監視活動や、英国の調査権限法(IPA)の下で導入された変更については考慮していない。これについてCarlo氏は、「人権によりいっそうの脅威をもたらす」として、「われわれの取り組みは終結にはほど遠い」と述べている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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