「渋谷を再びビットバレーにする」——長年にわたり渋谷に拠点を構えるディー・エヌ・エー(DeNA)、サイバーエージェント、GMOインターネット、ミクシィの4社が、渋谷を“IT分野における世界的技術拠点“ にすべく、7月に立ち上げたプロジェクト「SHIBUYA BIT VALLEY(シブヤ・ビットバレー)」。同プロジェクト初の活動となるテックカンファレンス「BIT VALLEY 2018」が、渋谷区の後援のもと9月10日に開催された。
ビットバレーとは、1990年代後半にIT系ベンチャー企業が集中した渋谷を指す造語のことで、「渋い(bitter)」「谷(valley)」と、米国の大手IT企業が密集する地域であるシリコンバレーをかけて名付けられた。しかし、当時はビットバレーのIT企業への投資は過熱したものの、そこから世の中を変えるようなサービスは生まれず、ITバブルの崩壊とともにその名を聞くこともなくなっていった。
それから約20年が経ち渋谷も変わった。スマートフォンやIoTなどの技術進化やネットワークの高速化にともない、技術力のあるエンジニアが育ってきている。そのため新たに発足したSHIBUYA BIT VALLEYは、ビットバレーを再定義し、渋谷を高い技術力を持つエンジニアが集う街にするという、“地に足がついた”プロジェクトとして位置づけているという。
9月10日に開催されたテックカンファレンスBIT VALLEY 2018では、“渋谷でエンジニアとして働くことは楽しい” をテーマに、各社の最新技術やAI分野における取組みの紹介、各分野のトップエンジニアによるトークセッションなどが開かれた。同日には、エンジニアを目指す学生やIT業界に携わる若手エンジニアらが全国から多数来場した。
カンファレンスの目玉となるのが、DeNA代表取締役会長の南場智子氏、サイバーエージェント代表取締役社長の藤田晋氏、GMOインターネット代表取締役会長 兼 社長 グループ代表の熊谷正寿氏によるトークセッション。渋谷を拠点に、20年近くIT業界を第一線で引っ張ってきた3名が、渋谷という街に対する思いや、SHIBUYA BIT VALLEYへの期待を語った。なお、ミクシィ取締役会長である笠原健治氏は同日は都合がつかず欠席したが、ビデオメッセージでコメントを寄せた。
約23年前の1995年に青山でインターネット事業を開始したGMOの熊谷氏。従業員が100名を超えオフィスが手狭になってきたが、青山には条件に見合う物件がなかったことから、当初は“都落ち”と従業員に反対されながらも渋谷にオフィスを移転したのだという。しかし、結果的に渋谷という街が持つエネルギーや多様性に成長を後押しされ、いまでは5000名を超える大企業へと変貌を遂げた。
「(1990年代後半の)ビットバレーの第1回目の会合は当時の私たちの会議室で行われた。その後、私たちがJASDAQ市場に上場し時価総額1200億円をつけたことを、渋谷のクラブで開かれたビットバレーのパーティーでご報告し、その場が湧いたことを昨日のことのように覚えている。会社が潰れそうになった“谷”もあったが、いろいろな意味で渋谷の土地がグループの成長を支えてくれたと心から感謝している。ビットバレーがなくなったという認識はないが、再興というお話をいただき、ご恩返しをするためにもグループをあげて今回の運動に協賛したい」(熊谷氏)。
南場氏は、DeNAが2019年に20周年を迎えることに触れながら、「生まれも育ちも渋谷なので、DeNAにとって渋谷はホーム。(最初の事業の)ビッダーズを立ち上げるために20平米くらいのアパートを借りたが、渋谷東急本店通りから歩いて10秒くらいの場所だった。ほかにも、データベースのデータをパージしてしまう大事件が起き、朝の5時から3時間くらいうちのエンジニアのアパートの前で私が叫び続けた事件も起きた」と、渋谷におけるエピソードを披露。
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