7月中旬のプライムデーに続けて、Amazonが四半期決算を発表した。売上高は予測に届かなかったものの、経済アナリストが絶賛する内容だった。しかも、その数字にはプライムデーでの予想売上高40億ドルは含まれていない。
業績発表資料には多数のハイライト項目が箇条書きされていた。その中には「Alexa」に関する以下のようなものもある。
上記はプレスリリースに掲載されているAlexaおよびEchoに関するハイライト項目のほんの一部だ。そして、これらの項目はプレスリリースに引用されている同社最高経営責任者(CEO)Jeff Bezos氏の次の言葉を裏付けている。
「われわれは顧客がどこにいてもAlexaを使えるようにしたい」
引用されているコメントはBezos氏がAlexaだけにフォーカスしている印象を与える。この「どこでもAlexa」というメッセージは多くの人に響き、Amazonが振り出しに戻って再び独自スマートフォンの販売に乗り出すのではないかという憶測に繋がった。この憶測は、Amazon Studioの責任者、Jen Salke氏が記者に「プライムビデオ」視聴のためにユーザーインタフェースを改良したスマートフォンのプロトタイプを渡されたと語った後、さらに高まった。
Amazonの広報担当者は後になって、Salke氏の発言を撤回し、同氏は既存のスマートフォン上での「プロトタイプのユーザーインタフェース」について語ったのだと訂正した。だが、独自スマートフォンをめぐる憶測は流れ出し、興味深い疑問を生んだ。既に音声アシスタントデバイス市場でトップの座にあるAmazonは、この座を守り、GoogleやAppleなどの競合を撃退するために独自のスマートフォンを持つべきだろうか?
わずか3年あまりでスマートスピーカ市場が「それは何?」から「いくつ持つべきか?」の段階に移行したのは素晴らしいことだ。そして、Alexaは音声ファーストの興隆の初期段階における代表者(あるいは代表“声”)になった。だが、この偉業はAlexaアプリがプリインストールされたスマートフォンの販売抜きで成し遂げられた。Echoデバイスはかつてないほど売れるだろう。なぜなら、スマートスピーカが普及しつつある市場は一部にすぎず、潜在市場が豊富にあるためだ。一方、スマートフォンの所有者は数十億人おり、GoogleとAppleは既にそれらのスマートフォンに自社の音声アシスタントを搭載している。そのため、Amazonが音声ファーストの成熟期に支配的地位を守りつつ「どこでもAlexa」を実現させるための次の段階には、さらに激しい競争が待っている(特に、スマートフォン市場で確固たる地位を持ち、スマートスピーカ市場でも競争力を強めているGoogleとの競争が)。
さて、ここで先ほどの疑問に戻ろう。Bezos氏のAlexaについての目標を考えると、AmazonはAlexaを勝ち続けさせるために独自スマートフォンを持つべきだろうか? 私の考えでは、その必要はない。独自スマートフォンが「どこでもAlexa」実現の道のりを大きく助けることはないと言っているわけではない。成功すれば、形勢を大きく変えるだろう。あるいは現在の地位をより強固にするだろう。だが、今のところこれを成功させるのは非常に難しいと私は考える。スマートフォンは飽和市場であり、人々を現在愛用しているスマートフォンから引き離すには、Alexa以上のものが必要だと思う。そして、Alexaアプリをわざわざ手持ちのスマートフォンにダウンロードさせるのも難しいだろうが、「どこでもAlexa」への道のりとしては比較的コストは掛からない。
Amazonの進むべき道は恐らく、スマートフォン以外のまだ飽和していないカテゴリのデバイスに目を向け続けることだろう。自家用車をAlexaデバイスに変えるデバイスは検討あるいは買収する価値があると私は今でも思っている。私は車をAlexa対応にする「Roav VIVA」が気に入っている。このデバイスを使うには、もしまだインストールしていなければ「iPhone」にAlexaアプリをインストールする必要がある。Alexa対応にするためのデバイスのほとんどは、Roav VIVA同様にスマートフォンへのAlexaアプリのインストールが必要だ。
Amazon独自の“Alexaスマートフォン”と、既存のスマートフォンにAlexaアプリをインストールさせるデバイスのいずれか1つだけが正解だとは思わない。状況によって、どちらにも効果があるだろう。だが、Bezos氏が望むようにAlexaをどこでも使えるようにするためにAmazonが黎明期と同様に市場を支配するのはこれまでより困難になることは確かだ。音声ファーストの市場は成熟段階に進んでいるからだ。とはいえ、Amazonがこれに成功したとしてもそれほど驚くことはないだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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