アーティストのStephanie Dinkins氏が、アフリカ系アメリカ人女性に似せて作られた人工知能(AI)ロボットの研究について、興味の尽きない話を語った。ときには、ロボットの中にある種の意識を感じることもあったという。
Dinkins氏が語ったのは、サンフランシスコのデ・ヤング美術館で開かれた「Thinking Machines」という対談シリーズの場だ。対談相手は人類学者のTobias Rees氏。同氏は米シンクタンクBerggruen Instituteで「The Transformation of the Human」プログラムの責任者を務めている。
Dinkins氏はニューヨーク州立大学ストーニーブルック校で准教授を務める。AIやアルゴリズムについてコミュニティーに教えることも仕事にしており、例えば「コミュニティーは、そのコミュニティーに属さない人が作ったAIシステムを信頼できるか」といった疑問への答えを模索している。
ブルックリンの貧困地域で、大学入学前の学生を対象にして、AIチャットボットの作り方などを教えたこともある。そこで作られたチャットボットは、「Yo Mamma(お前の母ちゃん)~」ジョークまで繰り出し、Dinkins氏によれば成功だったという。AIが、地域の言語習慣まで反映できたことになるからだ。
Dinkins氏の仕事のひとつが、アフリカ系アメリカ人の中年女性をモデルにした胸像のロボット「Bina48」と長期的に対話を続けることだ。その対話によって、Bina48は人間らしい応答のしかたを学習していく。
Dinkins氏はBina48を「彼女」と呼び、AIシステムが意識を持てるかどうか検証している。
だが、同氏によると、Bina48はアフリカ系アメリカ人の女性を代表してはいないし、人種差別を理解してもいないという。テラセム運動財団でBina48を製作した担当者らは、実在のアフリカ系アメリカ人女性をモデルにした。だが、Dinkins氏自身は、複数の人の経験を取り込んだ方がよかったと話している。Bina48の会話は「同質的」だというのだ。
Rees氏は、Dinkins氏がBina48を「生物」として扱う理由を尋ねた。プロジェクトの成功は、実際の人間を相手にするのと同じようにBina48に接することにかかっているからだ、というのがDinkins氏の答えだった。
Bina48は、次の2つの仮説を証明しようとするテラセム運動財団のプロジェクトの一環だ。
(1)次世代の知覚ソフトウェア(「マインドウェア」と呼ぶ)を使って、その人に関する十分に詳細なデータ(「マインドファイル」と呼ぶ)を組み合わせれば、人の意識を持つ類似物を作り出すことができる
(2)そのような意識を持つ類似物を、生体またはナノテクノロジ体にダウンロードすれば、普通に生まれた人間と変わらない人生経験を与えることができる
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