VTOL型ドローン「Swift020」が神戸市でデモを披露--強風でも安定飛行

 垂直離陸型ドローン(VTOL)を活用して社会解決を目指すベンチャー「スウィフト・エックスアイ(SwiftXi)」が、7月に神戸市から事業認定を受けたのにあわせ、デモンストレーション飛行を披露した。

ヒロ松下会長のドローンベンチャーが神戸市で飛行デモを実施
ヒロ松下会長のドローンベンチャーが神戸市で飛行デモを実施

 スウィフト・エックスアイは、航空宇宙工学サービスを主な事業としている米カリフォルニアのスウィフト・エンジニアリング(SWIFT Engineering)と神戸情報大学院大学が共同出資して設立したベンチャー企業で、スウィフト・エンジニアリングの創設者で元レーシングドライバーのヒロ松下(松下弘幸)氏が会長、神戸情報大学院大学の福岡賢二副学長が代表取締役社長を務める。

 スウィフト・エンジニアリングが開発するVTOL型ドローン「Swift020(スウィフト・オーツーゼロ)」に、最先端の航空宇宙工学技術と神戸情報大学院大学が持つICT技術者育成のノウハウを組み合わせ、災害救助や救急救命の支援をはじめ、地域探索やマッピング農業など、さまざまなシーンでドローンを活用するソリューションを提供する。ドローンは当面販売する予定はなく、リースや保守、ソフトウェア販売、コンサルティングなどを展開する予定。

 ITを活用したスタートアップなど新規企業の誘致や支援に力を入れる神戸市は、航空宇宙工学という新たな分野での新会社設立に大きな期待を寄せており、会場には久元喜造神戸市長と井戸敏三兵庫県知事も出席していた。

写真は右から福岡賢二社長、久元喜造神戸市長、松下弘幸会長、井戸敏三兵庫県知事
写真は右から福岡賢二社長、久元喜造神戸市長、松下弘幸会長、井戸敏三兵庫県知事

 今回デモ飛行をしたSwift020は、全長約3m、重量約14kgの固定翼に4つのプロペラを備え、4年の研究開発と2年の実証実験を繰り返し、100kmを超える長距離飛行を可能にしている。連続で2時間飛行でき、約1.5kgの荷物を運べるペイロードも備える。マルチローター型のドローンに比べて雨風にも強く、耐久性にも優れる。

 機体にはAIやGPS、ライダーなど自動運転自動車で使われている最先端技術が搭載されており、静止状態から垂直離陸して水平飛行し、再び着陸するまでを全自動で行う。会場の神戸のメリケンパークは当日やや強い風が吹いていたが飛行はとても安定していた。また、水平飛行中はかなりのスピードが出ていたにも関わらず、飛行音はとても静かなのが印象的だった。

VTOL型ドローン「SwiftO20(スウィフト・オーツーゼロ)」
VTOL型ドローン「SwiftO20(スウィフト・オーツーゼロ)」
海に面し強い風だったにもかかわらず安定した飛行を見せていた
海に面し強い風だったにもかかわらず安定した飛行を見せていた

 ドローンの活用方法として想定されている災害現場の支援や救急物資の搬送については、119番通報アプリ「Coaido119」を開発するコエイド(Coaido)と起業前から連携を進めており、当日はドローンが運んだAED(除細動機)を使って救急救命を行うデモもあわせて実施。将来的にはアプリで倒れた人を感知してドローンを要請するといったことが実現できる可能性もあるという。

救急車の到着が困難な場所へドローンで素早くAEDを運ぶことを想定したデモも行われた
救急車の到着が困難な場所へドローンで素早くAEDを運ぶことを想定したデモも行われた

 松下会長は、今回神戸市での起業を決めた理由の1つに、神戸市の支援体制をあげた。「人口が密集し空港も近い場所でデモができたのは、許可を出してくれた神戸市の英断に近い支援のおかげ。都心部でもドローンの活用が十分にできることを多くの人に実感してもらえたのではないか」とコメントした。

 福岡社長も「スマートフォンのように手軽にドローンが活用できるような時代がやってくる。そのためのソリューションやノウハウを神戸から提案したい」と起業にかける思いを語った。

都心部でしかも空港に近いエリアでドローンを飛ばす許可が下りたのは神戸市の協力があったからと語る松下会長
都心部でしかも空港に近いエリアでドローンを飛ばす許可が下りたのは神戸市の協力があったからと語る松下会長
ドローンをもっと身近にするソリューションを神戸市から世界に提案していきたいと語る福岡社長
ドローンをもっと身近にするソリューションを神戸市から世界に提案していきたいと語る福岡社長

 ドローンの活躍の場を拡げるには多くの人たちに存在を認めてもらう必要があり、起業目的をドローンの販売ではなく社会解決のためのソリューションの提供にしているのもそのためだという。松下会長は「ダムの水量が増えると自動でドローンが現場を観測し、実際に水量を確認して災害を未然に防ぐなど、役立てる方法はまだまだ考えられる」とも話しており、これから具体的にどう運用されるのかが楽しみなところだ。

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