楽天は7月17日、同社のカンファレンスイベント「楽天EXPO 2018」において、新たな物流構想「ワンデリバリー」を発表した。
これは、楽天市場の出店店舗を対象に、商品の保管から配送までを包括的に提供する物流サービス「楽天スーパーロジスティクス」を展開し、物流センターを全国に構築するというもの。センターは、自動化された倉庫機器を導入することで省人化しているほか、楽天の購買データやAI技術の活用による受注予測、在庫情報の連携を通じて最適な在庫配置を実現することで、配送スピードの向上と倉庫作業・配送業務のコストを削減できるとしている。
物流センターは、千葉県市川市、兵庫県川西市の拠点に加え、日本GLPの開発する大型物流施設「GLP流山II(千葉県流山市)」の全フロアを使った「Rakuten Fulfillment Center Nagareyama」を2018年内に、「GLP枚方III(大阪府枚方市)」の一部を使った「Rakuten Fulfillment Center Hirakata」を2019年内に稼働開始を目指す。
新施設では、楽天が培ってきた倉庫内オペレーションノウハウを活用するほか、最先端のマテリアルハンドリングシステムを導入。楽天市場の出店店舗の商品に加え、楽天の直販サービス「Rakuten BRAND AVENUE」「Rakuten Direct」「楽天ブックス」の商品在庫も管理する。2020年までには、すべての楽天市場の商品を預かる予定だという。
また、すでに東京23区で展開している楽天独自の配送サービス「Rakuten-EXPRESS」の対象エリアを全国に拡大。物流を一元管理することで、配送先や配送時間の指定を柔軟に設定できるほか、複数注文の一括配送、商品が受け取りできなくなった場合の日時指定などを設定可能。配送方法の指定については、ドライバーにリアルタイムで通知され、ユーザーはアプリから現在の配送状況を確認できるようになる。
さらに、物流センターを全国に配置することで、注文時の翌日に配送する「あす楽」の対応エリアを全国90%に拡大でき、土日祝日での出荷も可能になる。
楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は、配送費の高騰や再配達問題、配送作業の非効率性などを挙げ、「ネットショッピングの爆発的普及でさまざまな問題が起きている。今までのCtoCにある宅配便という仕組みにBtoCを載せることで無理が出てしまった。ワンデリバリーのチャレンジは、“やりたいこと”ではなく“やらなければいけないこと”」と述べた。
また、「500円の文房具も10万円の高級バッグも同じように配送していたが、500円なら置き配(不在時に住居敷地内の指定場所に商品を置くことで配達完了とする方法)でも良いという声もあるだろう。一気通貫にすることで柔軟な配送が可能になる」という。
カンファレンスでは、「ワンペイメント」構想として、クレジットカードやコンビニ・郵便局での前払い、楽天ポイントなどで支払える同社の決済サービス「楽天ペイ」を紹介。三木谷氏は、「各出店者のサイトデザインや商品・サービスは多種多様で良いが、決済や物流は一貫性を持った方が良い。楽天ペイに一元化し、入金サイクルを統一することで、よりサービスレベルを向上できる」と述べた。
楽天執行役員マーケットプレイス事業バイスプレジデントの矢澤俊介氏は、良い商品があっても、希望する決済手段がなかった場合にどうするかというユーザーへの調査を紹介し、「57%のユーザーが買い物をやめる、あるいは違う店舗で買うと回答している」と指摘。楽天ペイの後払いへの対応(11月予定)など、若年層やクレジットカードを持たないユーザーの取り込みも可能になり、購買機会の損失を削減できるとしている。
そのほか、レコメンドなどユーザーへのメールを自動化する「R-Messege」や、リアルタイムでのパーソナルな接客が可能になるチャットツール「R-Chat」を紹介。R-Chatは、9月での全店舗導入に先がけて100店舗で試験的導入を実施。ユーザーが店舗に対して気軽に質問できることで、転換率が14.8%アップ、平均注文額が135.5%になるなど、大きな成果を上げているという。R-ChatとR-messageの提供により、これまで提供している「R-Mail」は当面は継続するものの、徐々にシュリンクする予定だとしている。
AIへの取り組みも紹介。R-ChatでのAIチャットボットの順次導入や、楽天のAI推進部が開発した音声対話技術「ボイスサーチ」による宿泊予約、商品購入などを紹介した。ボイスサーチでは、楽天トラベルや楽天ゴルフ、楽天市場など各サービスを横断しており、例えば、ユーザーがゴルフ場を予約する場合、指定日が楽天トラベルで旅行中であれば、宿泊先でのゴルフ場を検索する。また、購買履歴から過去にゴルフボールを購入していれば、再度購入するかレコメンドしてくれる。
三木谷氏は、モバイル通信サービス「楽天モバイル」のMNOサービス提供についても触れ、会員数9500万人のネットワーク、楽天の各サービスとの連携などで差別化を図り、「日本人の半分が楽天モバイルを使う世界を作りたい。今はエコシステムが勝負。一番根っこのモバイルサービスを押さえることで、楽天市場を中心としてあらゆるサービスが付随してくる」と述べた。最後に同氏は、アマゾンなどに対抗し「日本発の世界的なマーケットプレイスとして皆さんと一緒に頑張っていきたい」と語った。
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