UPDATE AIチップの開発で注目を集める新興企業、Wave Computingが、プロセッサ事業の老舗MIPS Technologiesの買収を予定しているという。米CNETの情報筋が明らかにした。その後の米国時間6月15日、Waveはこの買収について正式に発表した。
2010年設立のWaveは、カスタムプロセッサの開発で人工知能(AI)技術の高速化を目指す企業だ。ただし、同社のチップは、AIを利用した社内業務の需要が大きい企業や、他社向けに高い計算能力を提供するマシンを大量に擁するデータセンターを対象としたものだ。MIPSを買収することで、Waveではこのような中核分野で培ってきた自社の技術を、日常生活で用いられるデバイスの世界へと拡大する機会を得ることになる。
Waveからのコメントは得られていない。
Strategy Analyticsによると、スマートフォンに関しては、AI機能を実装したプロセッサの出荷数が2017年時点で2億5000万個を超えている。つまり、AIチップはすでに大きな地位を占めていると言える。音声コマンドの理解やカメラによる画像認識など、AIが処理可能なタスクは多岐にわたり、重要度も高い。
Waveによると、同社のチップはAIのトレーニングと推論の両段階に対応するよう設計されているという。トレーニング分野では現在、NVIDIAがトップの座にあるが、「word2vec」というデータセットを使ったあるスピードテストでは、Waveのチップの方が速かったと同社は述べている。
一方、1984年創業のMIPSは、シリコンバレー企業の中でもひときわ長い歴史を誇る。同社の創業者の1人、John Hennessy氏は、チップ技術RISCの発明に関わった功績をたたえられ、権威あるチューリング賞を受賞したばかりだ。MIPSはSilicon Graphicsに買収された後、さらにImagination Technologiesに売却されたが、2017年後半に再び独立している。
MIPSは、自社デバイスにプロセッサが必要な、他のメーカーにチップ設計をライセンス提供している。とはいえ、買収後のWaveとMIPSがスマートフォン市場で大きなシェアを獲得する可能性は低い。多くのスマートフォン端末が、MIPSにとって最大のライバルであるArmのプロセッサ設計を採用しているからだ。
しかし、スマートフォンのほかにもコンピューティングデバイスは存在する。Creative Strategiesのアナリスト、Ben Bajarin氏によると、MIPSは現在、自動車や家電、ローエンドのコンピューティングデバイスなどの市場で事業を展開しているという。
更新(6月18日14時42分):Waveが買収を正式に発表したことを追記しました。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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