アドビは6月11日、バウハウス・デッサウ財団とのパートナーシップを通じ、未完成な形で残されたスケッチや文字の断片などから、バウハウスの巨匠による5つのフォントを再現。クリエイティブプラットフォーム「Creative Cloud」のフォントライブラリ「TypeKit」で2つを公開すると発表した。
バウハウスは、建築家のWalter Gropius氏によって1919年にドイツのヴァイマルで設立された、工芸や写真、デザイン、建築などを扱う総合的な芸術学校。「機能から形が導かれる」という理念のもと、建物、テーブル、椅子などの必要最小限のデザインに挑戦する試みから生まれたという。1925年にはデッサウに移転し、工芸、アート、テクノロジを融合した理想形を模索。1932年にナチスによって閉校となったが、現代美術に大きな影響を与えた。
閉校以降、ずっと書庫に眠り続けていた文字の断片やスケッチから、タイポグラフィデザイナーのErik Spiekermann氏が完全なフォントとしての復元を指導。タイポグラフィの専門家やデザイン専攻の学生からなる国際チームを監督し、バウハウス・デッサウ基金の専門家と共同で復元に取り組んだという。アドビでは、復元されたフォントのうち、2つのフォントを「Joschmi」と「Xants」と名付けて公開する。
Joschmiは、ドイツのヴァイマルで1923年に開催されたバウハウス展のポスターを制作したJoost Schmidt氏が由来。Schmidt氏は、バウハウス・デッサウでカリグラフィ講師を務め、広告制作、タイポグラフィ、印刷ワークショップを指導。現在バウハウスとして知られるグラフィックデザインスタイルを確立した第一人者という。
Xantsは、画家、写真家、建築家、グラフィックデザイナー、サクソフォン奏者、舞台デザイナーとして活躍したXanti Schawinsky氏がモチーフ。Schawinsky氏は舞台デザインを教えており、バウハウス・デッサウを離れた後、イタリアでグラフィックデザイナーとして活躍。Cinzano、Motta、Illy、Olivettiなど数々のブランドのアートワークを生み出したという。
さらに、Carl Marx氏由来のフォントを追加予定。Marx氏は、装飾画家として修行した後、バウハウス・デッサウに学生として入学。Schmidt氏やJosef Albers氏、Wassily Kandinsky氏、Ludwig Mies van der Rohe氏といった巨匠たちのコースを受講。バウハウスがベルリンに移転した後も引き続き同校で学び、第二次世界大戦後、デッサウでのバウハウス再興に尽力したグループのひとりだという。
アドビでは、残り2つのフォントも数カ月以内に順次公開するという。また、復刻されたタイポグラフィセットを使用したデザインコンテストを5回にわたって開催。応募作品の中から、優秀作品を集めた展示会をドイツのバウハウスで開催し、最優秀賞の受賞者にはバウハウス遺産群をめぐる旅や賞品を授与する予定としている。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス