広島県は5月17日、AIやIoTなどを活用した実証実験の場「ひろしまサンドボックス」を構築することを発表した。オープンな実証実験環境を提供することにより、県内外から多彩な企業や人材を呼び込み、産業や課題の解決に結びつける狙い。また、東京都渋谷区と連携を図り、渋谷区の企業の参加を促進するなどの取り組みを進めていくとしている。
同日に連携先の渋谷区で実施された記者会見において、広島県の湯崎英彦氏は、ひろしまサンドボックスを構築する背景について説明した。広島県は、中国・四国・九州地方における製造品出荷額が12年連続で第1位、また1人あたりの県民所得も全国第1位であるなど、足元の経済は非常に好調だという。その一方で、少子高齢化やそれにともなう人口減少、そしてグローバル化など、日本全体が抱える課題と同様の課題を抱えているとのこと。
そこで広島県では「イノベーション立県」を目指し、これまで年間1万人が利用しているイノベーション創出拠点「イノベーション・ハブ・ひろしまCamps」や、広島大学と連携し、スーパーコンピューターを共同利用するなどして産業のデジタル化を推し進める「ひろしまデジタルイノベーションセンター」などを設立してきた。そうしたイノベーション立県に向けた第3弾の取り組みとなるのが、ひろしまサンドボックスだという。
湯崎氏はひろしまサンドボックスについて、さまざまな技術やノウハウを持つ県内外の企業を呼び込みコラボレーションすることで、AIやIoTなどのノウハウや知見を蓄積し、これまでにないソリューションを作り、試していける場にしたいと話す。そのために、今後3年間で10億円規模の投資をしていくことに加え、情報交換やマッチングを推し進める場として「ひろしまサンドボックス推進協議会」を設立し、県内外の企業や個人の参加を促進していくという。
また、ひろしまサンドボックスでは、パートナー企業の協力を得てIoTプラットフォームを用意したという。広島県とAI・IoTなどの利活用促進に向けた連携協定を締結したソフトバンクと西日本電信電話(NTT西日本)は、ともに自社のIoTプラットフォームをひろしまサンドボックスに向けて提供。将来的には、分野を超えてデータを相互連携できることを念頭に置いた、データ連携基盤の構築を目指したいと湯崎氏は話した。
そしてもう1つ、ひろしまサンドボックスは、広島県と東京都渋谷区が連携して事業を展開するという点も大きな特徴となっている。渋谷区は「ちがいを ちからに変える街。 渋谷区」という基本構想を実現するための産官学民によるプラットフォーム「渋谷未来デザイン」を通じて広島県と連携。渋谷区のスタートアップ企業などに対し、ひろしまサンドボックスへの参加を促進するなどの取り組みを推し進めていくという。
記者会見では、湯崎氏と渋谷区長である長谷部健氏とのトークセッションも実施された。湯崎氏は渋谷区と連携する狙いについて、1つはかつてのビットバレーに代表される、「何かしたい」という渋谷の熱量を広島に持ち込むことだと話す。そしてもう1つは、現状、広島など全国から渋谷などの都市部にIT分野の優秀な人材が流出していることから、広島と渋谷の間で人材の還流を図ることだという。
湯崎氏はさらに、広島には都市部である渋谷にない農業や漁業、そして「日本の課題といえるものがすべて揃っている」と続ける。広島というフィールドを渋谷の人たちに提供することで、ともに課題解決策を考えていけるのではないかと話した。これに対して長谷部氏は「ぜひ交じりあいたいと思う。ふるさと納税などでお金を払うよりも、リアルで事業を展開し、ともに成長できる方が真の地方創生という気がしている」とコメント。連携事業に意欲を示した。
なお、ひろしまサンドボックスは6月に第1次公募、9月に第2次公募を実施するという。湯崎氏は「世界見据えた新しいテクノロジで、外部を変えていくものを作りたい。誰も見たことがないソリューション、新しいサービスをやってみたいという人に集まって欲しい」と、今回の取り組みに対して強い期待を寄せた。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」