エイベックス「30周年を機にもう一度ゼロから始める」--松浦氏が語った新規事業への思い

 2018年で設立30周年を迎えたエイベックスが社長交代の人事を発表した。6月22日付けで、代表取締役社長CEOである松浦勝人氏が代表取締役会長CEOに就任し、新代表取締役社長COOには現グループ執行役員の黒岩克巳氏が就く。合わせて現在、取締役COOを務める林真司氏は代表取締役CFOになる。


左から、黒岩克巳氏、松浦勝人氏、林真司氏
代表取締役会長CEOに就任する松浦勝人氏
代表取締役会長CEOに就任する松浦勝人氏

 松浦氏は「既存事業を黒岩が担当し、新規事業を私が進める。その管理を林が務める」と説明し、役割分担は明快だ。巨大エンターテインメント企業として、音楽業界で多くのヒットを生み出してきたエイベックスが手掛ける新規事業とはどんなものなのか。また、2018年3月期の連結業績が増収増益となった既存事業で、今後どんな展開を考えているのかについて、5月11日に開催した決算会見で話した。

 「会社の寿命は30年と言われているが、エイベックスは10年だと思って始めた。あっという間に30年が経ち、30周年記念として何かやるよりは、30年で一度エイベックスは終わり、新たな形で始めるくらいの気構えでいくべきではないかと思った。エイベックスはゼロからやり直すフェーズにきている」――松浦氏は30周年を迎えたエイベックスをこう表現した。

 松浦氏はエイベックスの創業者。2004年からは代表取締役社長として、会社を率いてきた。「今度は会長という立場で会社全体を見て、黒岩と役割分担し、自分は新規事業に取り組んでいこうと思った。その中には新しいアーティストの発掘や育て方も含まれており、よりクリエイティブな方向にもどる。それが一番エイベックスのためだと考えた」と新たな方向性について話した。

 エイベックスでは、「エンターテインメント×テック」をキーワードに、未来型花火エンタテインメント「STAR ISLAND」や、国際最大級のeスポーツイベント「RAGE」、「株式会社イクストル」のM&Aなどを2017年に実施。2018年に入ってからは米国ラスベガスで開催した「CES 2018」や、スタートアップカンファレンス「Slush Tokyo 2018」などへも参加している。

 2017年に建てた新本社ビルには、コワーキングスペース「avex EYE」を設け、外部とのコラボレーションスペースとして活用。エイベックス・ベンチャーズでは2016年の発足以来、7社に出資した実績を持つ。

 こうした動きをさらに加速するため、4月11日付でCEO直轄本部を創設。新事業・イノベーションの創出と戦略的投資、M&Aを一層強化していく役割を果たし、こちらにエイベックス・ベンチャーズを吸収合併した。

 エイベックスが目指す新事業領域は、コンテンツを核に「VR/AR/MR」、「バーチャルYouTuber」「ゲーム」「フィンテック/ブロックチェーン」「インフルエンサーマッチング」「ライブ配信/ライヴコマース」など。自社だけでなく、ジョイントベンチャーやM&Aなど、形態は問わず、積極的に取り組む姿勢を見せる。

エイベックスが目指す新事業・イノベーション領域
エイベックスが目指す新事業・イノベーション領域

 1つの取り組みとして5月10日に、メタップスとの合弁会社「mee(ミー)」の設立を発表。エイベックスに所属するアーティストを時間取引所「Timebank」に登録するほか、SNSを活用したアーティストプロデュースなどを進めていく。

 このほか、バーチャルYouTuberが女優として出演する短編アニメ映画の製作や、IoTデバイスと定額制音楽ストリーミングサービスを組み合わせた音声AR体験事業「SARF」の開始なども予定する。

 また、業界トップクラスの売上を持つライブに関しては、キャッシュレス決済や顔認証、生体認証などによるセキュリティなど、テクノロジを活用した新たなライブソリューションとして提供を目指す。

 「既存事業は黒岩に任せて、私は新しいことをゼロからやる。新しいエイベックスを作っていこうと思っている」と、松浦氏は新たな取り組みに踏みだした。

新代表取締役社長COOになる黒岩克巳氏
新代表取締役社長COOになる黒岩克巳氏

 一方、既存事業の舵取りを担う黒岩氏は、好調に推移するライブ事業のさらなる拡大を狙う。「音楽市場は米国で回復期に入っており、成長を続けている。日本でも多少時期はずれてくるが、間違いなく同じ現象が起こってくるだろう。これを背景に、サブスクリプションを中心にしたデジタルの新しいエンターテインメントはどんどんあふれてくると思っている。そんな時代だからこそ、私たちが最も得意なリアルコンテンツの必要性を強く感じる。今回の新体制はエンタメ業界が新しい未来を迎えるための新しい体制だと考えている」とコメントした。

 同日発表した、2018年3月期通期の連結業績は売上高が前年同期比1.1%増の1633億円、営業利益が同21.1%増の69億円で増収増益を記録した。

 ライブの大規模公演の増加や安室奈美恵さんのアルバム「Finally」の売上増などにより、音楽事業が順調に推移したとのこと。アニメ事業はパッケージ商品の販売減により減収減益。映像配信サービスなどを持つデジタル事業は、映像配信サービス「UULA」のサービス終了により、売上が減少したものの利益は増加している。

 2019年3月期の連結業績予想は営業利益は70億円、当期純利益は26億円と横ばいと予想。売上高については、利益を追求し、筋肉質な体質を目指す方針から、売上高の予想は公表していない。

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